贖罪の街(下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065123096

作品紹介・あらすじ

二〇一五年二月に自宅で強姦の上、撲殺された市政担当官補レキシー・パークス(三十八歳)。被害者の体に残された精液(膣内と体表から回収)のDNAが合致したため、事件翌月、容疑者として逮捕されたのは、ハラーの古くからの顧客であり、元はギャングの一員だったが、更生して画家として生計を立てているダカン・フォスター(四十一歳)。  ハラーは、フォスターの無実を確信しており、ボッシュに事件調査の協力を求める。

感想・レビュー・書評

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  • ボッシュ・シリーズ18作目、後半。
    2015年、ロス市警を退職し、訴訟中のボッシュ。
    異母弟の弁護士ミッキー・ハラーに頼まれ、調査員の仕事を引き受けます。

    逮捕された画家の無実を信じるハラー。
    依頼人が無実というのはじつは珍しいことで、普段は常習犯罪者の量刑をどうするか、という仕事が多いから。
    裁判に勝つことが第一のハラーは、法廷でその腕の冴えを見せます。
    一方、ボッシュは何よりも真実を求め、真犯人を捕らえたい。
    バッジがない立場での調査には、これまでと異なる苦労がありますが、検察側ではなく弁護側の調査員であっても、その本質にブレはない。
    悪徳警官が絡んでくるため、ますます警官仲間から白い目で見られそうな苦境に陥るボッシュだが。
    晴れ晴れとした結末で、嬉しくなりました☆

  • 前巻のラストでバッジを取り上げられることになりそうだったボッシュ、今回はそれについて係争中で、警官としての捜査ができない。それどころか、不倶戴天の敵、刑事弁護士の調査員として活動することになる。まあその弁護士っていうのは、異母兄弟のハラーなんだけど。

    「裁判に勝つ」ことが至上命題であるハラー。悪を摘発し正義をなすことが何よりも大事なボッシュ。二人の対比が印象的だった。どちらもその道ではきわめて有能であり、今回は無実の男を罠から救うという共通の目的に向かって協力するのだが、根本の所で二人は違っているのだとボッシュは悟る。本作は「ボッシュシリーズ」なので、読む側も彼の考え方に共感するよう描かれているとは思うが、やはりこの姿勢がボッシュだなあと思う。誰にもばれるはずのない嘘を少しつけば、事態をうまく運べると重々わかっていながら、それができないボッシュが好きだ。

    よく思うのだが、エンタメで描かれる(現実も?)アメリカの裁判って、駆け引きや取引がややこしく錯綜して、なんだかうんざりしてくる。ハラーものに今ひとつのれないのはそのせいかも。

  •  ハリー・ボッシュという史上稀に見る魅力的な刑事と出逢ってもう22年になる。
     インターネットすら未だ普及していなかったその頃パソコン通信仲間であった翻訳者の古澤さんが本シリーズのヒットで一躍活躍したことから大阪で仲間たちと彼を囲んで酒を酌み交わし、本シリーズの凄さを熱く語り合った記憶ももう霧の向こうの遠い時代の一幕のようだ。
     ベトナム帰還兵であるハリーも今やロス市警の退職を余儀なくされ、別シリーズ『リンカーン弁護士』の主人公でハリーの異母兄弟でもあるミッキー・ハラーと共に本書では困難な事件に立ち向かうことになる。
     ショッキングなイントロに始まり、法廷劇、ハリーの単独捜査、そして対決、法廷と、手に汗握る展開は止むことを知らず、相も変わらずのコナリーワールド健在なり!
     実はぼくは、年末にAmazonPrimeのオリジナルドラマ"Bosch"全4シリーズを続けざまに観た。何作かを同時に展開させるシナリオをよく組み立てたものだと感心しつつ、作者コナリーがエグゼクティブプロデューサーに名を連ねていることでなるほどと合点した。
     そのドラマで貫かれているのが、ハリー・ボッシュという主人公の一途さなのである。警察組織の中で上手く立ち泳ぐことよりも、個としてのプロ意識を憎むべく犯罪者と被害者の無念に向けて、揺らぎなき行動を選んで行く姿こそが、読者を惹きつけているのだ。
     このロングシリーズで確実に信頼し続けることのできたハリーという一刑事の生き様と彼への共感を、ドラマは再検証させてくれるものだったのだ。
     そうした興奮醒めやらぬうちに、本書の登場である。
     実は前作『燃える部屋』に、個人的にはどこか燃えきらない感じを感じ、ドラマチックなラストシーンであれ楽観は許されなかった展開であったので、二転三転して予測を許さぬ本書の物語構成には、実に溜飲が下がった。文句無しのお薦め極上作品!

  • ハリー・ボッシュシリーズ18作。元警官となってしまったボッシュがミッキー・ハラーから依頼を受ける。でもそれは警察を裏切る行為。それでもそれ以上に大切なこと、守らなくてはいけないもの。そこにボッシュの信念が感じられる。バッジを使えない窮屈さと一人で自由に動き回れるというふたつを感じられる。一度きりとはいえ線を超えたボッシュの今後が楽しみ。

  • シリーズ18作目。題名は“The Crossing“。

    ボッシュは前作でロス市警退職を余儀なくされ、異母弟のミッキー・ハラーを代理人に立て、異議申立てをおこなっている。そんなボッシュに事件調査の協力を求めるハラー。弁護側の捜査員となることはダークサイドへ渡る(Crossing)ことを意味するため逡巡するボッシュだが、事件に興味を抱きハラー陣営に加わる。やがて見えてくる被害者と犯人の遭遇(Crossing)と、交差(Crossing)する複数の事件。「元刑事」となったボッシュが新鮮なせいもあるだろうが、ここ最近のシリーズの中では抜きん出た面白さ。

    ダークサイドへ渡ったという葛藤に苦悩していたボッシュだが、事件が大きく転調したときにハラーとのスタンスに根本的な違いがあることを実感する。弁護士の観点から事件に取り組むことはできない。だからこそ自分はダークサイドへは渡れないのだ──ボッシュの信念を再認識するシーンからストーリーはギアチェンジして展開していく。この辺りの読み応えはさすがコナリーと言った感じ。

    終盤のピンチ、それを乗り越えてのハラーの独壇場の法廷劇はエンタメ色全開でやや興覚め。でもって、これだけ拡がった事件の始まりとしては肩透かし感がハンパないというアンバランスさ。そんなこんなで五つ星とはいかなかったが、これまでのお約束だった上層部からの圧力から解放され、マイペースに捜査するボッシュはイキイキして見えたし、「元刑事」としての捜査スタンスに芯が通ったボッシュの今後が楽しみに思える読後は実に心地よかった。

    次回作のあらすじから想像するに、刑事時代とは違ったエリアで活動の場が拡がりそう。「私立探偵ボッシュ」に期待大だわ。

  • ボッシュの新しいステージがスタートしたって感じ。

    マディは着々と大人への時間を重ね、ボッシュはその変化に戸惑いながらも寄り添うステキなパパであり、自身の新しい時間の過ごし方を模索しながら生きるミドルであり。

    だけどボッシュの価値観や正義感はブレずにある。

    これから、どんな時間を重ねていくのか、楽しみ。

  • ボッシュ・ハラーの両主人公が活躍するコナリーの新作で、世の中基準で言えば十分にクオリティは高いと言えるが、コナリー作品の中では解決する事件の内容はやや薄味か。一方、シリーズ中の作品としては、ボッシュの立ち位置が微妙に変わったことによって、各キャラクターのパーソナルなストーリーに進展があり、その点は今後のシリーズへの影響も含め、興味深いものがある。

  • やっぱりボッシュはええなー。
    題名はCrossingの方が内容と合うような気が・・

  • 刑事でなくなったボッシュがどこへ向かうのか。
    コナリーが用意した舞台はハラーの調査員。
    弁護士の調査員として追い詰める相手は悪徳警官。
    真実を追い求める過程は警察への裏切りそのもの。現実と真実の間で苦悩するボッシュだが、やはり真実を追い求めることに快楽を感じていることは禁じ得ない。
    そこにボッシュの悲しみがあり、娘マディとの埋められない溝がある。

    ボッシュの悲しい性が切なくなる。

  • 悪徳警官コンビは1人は銃撃に倒れ、もう片方は国外に流れる前にボッシュに復讐しようと家に行く。
    もちろん危機を逃れるわけだけど、ホント馬鹿だよなあ。
    そして弁護士ハラーの活躍で無実のクライアントは放免へ。
    ボッシュ&ハラーの完全勝利。
    前作では未解決事件を同時に2つ解決したのに停職の憂き目に遭って苦い結末だったが、今回は晴れ晴れした結末。
    いずれの結末でも読了の満足に浸れるシリーズ。

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著者プロフィール

Michael Connelly:1956年生まれ。LAタイムズ元記者。代表作としてはボッシュ・シリーズ、リンカーン弁護士シリーズがあり、当代随一のストーリーテラー。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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