- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065140949
作品紹介・あらすじ
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン(1889-1951年)が生前に公刊した著書は、たった2冊である。1冊は『論理哲学論考』(1922年)、残る1冊はその4年後に刊行されている。それが『小学生のための正書法辞典』(1926年)であり、本書はその本邦初訳となる記念碑的訳業である。
よく知られているように、ヴィトゲンシュタインは『論理哲学論考』を完成させたことで、哲学の問題はすべて解決されたと確信した。それゆえ、哲学から卒業して転身しようと思いつく。第一次世界大戦に従軍したあとに彼が選んだ道は、小学校の教師だった。
養成学校に通って教員資格を得たヴィトゲンシュタインは、1920年9月にトラッテンバッハの小学校の臨時教員になった。その後、1922年にはプフベルクに、2年後にはオッタータールに移って教員生活を続ける中で、正書法辞典の必要を痛感するようになる。1924年10月の書簡には、こう書かれている。「辞書がこんなに高いとは考えもしなかった。長生きするなら、小学生のために小さな正書法辞典を編もうと思う」。
ヴィトゲンシュタインは、わずか3ヵ月弱で辞典の原稿を作成し、1926年に出版された。残念ながら、同年4月28日には依願退職していたため、彼が実際に教室でこの辞書を使うことはなかった。そして、そのまま誰にも顧みられることなく、本書は「幻の書物」となる。
本書を執筆するにあたってのヴィトゲンシュタインの方針は、アルファベット順を基準としつつも、「心理的な原則」(生徒がどこでこの単語を探すか、生徒が混同しないようにするにはどうするのがよいか)や「文法的な原則」(幹語や派生語)と折り合いをつけるために適宜妥協を重ねながら、使い勝手のよいものを実現する、というものだった。
日本語を母語とする私たちにとって、本書はそのまま実用に役立つわけではない。だからこそ、今に至るまで邦訳が実現しなかったのだろう。しかし、ここには『論理哲学論考』から『哲学探究』への転身が確かに予告されている。言語について考えるすべての人にとって、本書はヴィトゲンシュタイン自身がみずからの意思で出版した、たった2冊のうちの1冊であるという事実は、きわめて重いはずである。図版を多数掲載した「解説」とともに、ヴィトゲンシュタインを愛するすべての人に本書を送る。
感想・レビュー・書評
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『小学生のための正書法辞典』
原題:Wörterbuch für Volksschulen
著者:Ludwig Wittgenstein
訳者:丘沢静也
訳者:荻原耕平
【メモ】
本書は二部構成。「解説」は縦書き。「辞典」は横書き。
目次の表記には悩みました。下記目次のページ数は、そこんところ(逆方向の二系統あること)を念頭に置いて読んでくだされば、誤解は起きにくいと思います。
下に転載した版元の長いPR文は「解説」の摘要。また、「解説」の末尾には互盛央さんの名前が挙がっている
【版元】
発売日 2018年12月12日
価格 本体1,110円(税別)
ISBN 978-4-06-514094-9
通巻番号 2504
判型 A6
ページ数 280ページ
シリーズ 講談社学術文庫
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン(1889-1951年)が生前に公刊した著書は、たった2冊である。1冊は『論理哲学論考』(1922年)、残る1冊はその4年後に刊行されている。それが『小学生のための正書法辞典』(1926年)であり、本書はその本邦初訳となる記念碑的訳業である。
よく知られているように、ヴィトゲンシュタインは『論理哲学論考』を完成させたことで、哲学の問題はすべて解決されたと確信した。それゆえ、哲学から卒業して転身しようと思いつく。第一次世界大戦に従軍したあとに彼が選んだ道は、小学校の教師だった。
養成学校に通って教員資格を得たヴィトゲンシュタインは、1920年9月にトラッテンバッハの小学校の臨時教員になった。その後、1922年にはプフベルクに、2年後にはオッタータールに移って教員生活を続ける中で、正書法辞典の必要を痛感するようになる。1924年10月の書簡には、こう書かれている。「辞書がこんなに高いとは考えもしなかった。長生きするなら、小学生のために小さな正書法辞典を編もうと思う」。
ヴィトゲンシュタインは、わずか3ヵ月弱で辞典の原稿を作成し、1926年に出版された。残念ながら、同年4月28日には依願退職していたため、彼が実際に教室でこの辞書を使うことはなかった。そして、そのまま誰にも顧みられることなく、本書は「幻の書物」となる。
本書を執筆するにあたってのヴィトゲンシュタインの方針は、アルファベット順を基準としつつも、「心理的な原則」(生徒がどこでこの単語を探すか、生徒が混同しないようにするにはどうするのがよいか)や「文法的な原則」(幹語や派生語)と折り合いをつけるために適宜妥協を重ねながら、使い勝手のよいものを実現する、というものだった。
日本語を母語とする私たちにとって、本書はそのまま実用に役立つわけではない。だからこそ、今に至るまで邦訳が実現しなかったのだろう。しかし、ここには『論理哲学論考』から『哲学探究』への転身が確かに予告されている。言語について考えるすべての人にとって、本書はヴィトゲンシュタイン自身がみずからの意思で出版した、たった2冊のうちの1冊であるという事実は、きわめて重いはずである。図版を多数掲載した「解説」とともに、ヴィトゲンシュタインを愛するすべての人に本書を送る。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000310668
【目次】
目次 [03-04]
○解説(丘沢静也) 05-50
一 小学校の先生になる 05
二 年表風に 07
三 『小学生のための正書法辞典』出版の経緯 08
四 『小学生のための正書法辞典』の特徴 20
五 小学校の先生としての姿勢 24
六 小学校の先生としての実態 27
七 居場所がない 32
八 「論理的」というよりは、アスペルガー者 35
九 偉い人は転んでも、ただでは起きない 39
参考文献 48
○小学生のための正書法辞典 001-223
序文(1925年4月22日 オッターヒル 著者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン) [002-010]
本文 [011-223]
A 011
B 022
C 033
D 034
E 042
F 051
G 061
H 073
I 083
J 087
K 089
L 104
M 113
N 124
O 129
P 132
Q 143
R 144
S 156
T 188
U 195
V 199
W 206
X 216
Y 217
Z 217