危険なビーナス (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065165836

作品紹介・あらすじ

2019年8月9日文庫化!
惚れっぽい独身獣医・伯朗が、新たに好きになった相手は、失踪した弟の妻だった

恋も謎もスリリングな絶品ミステリー!

「最初にいったはずです。
彼女には気をつけたほうがいいですよ、と」

独身獣医の伯朗のもとに、かかってきた一本の電話--「初めまして、お義兄様っ」。弟の明人と、最近結婚したというその女性・楓は、明人が失踪したといい、伯朗に手助けを頼む。原因は明人が相続するはずの莫大な遺産なのか。調査を手伝う伯朗は、次第に楓に惹かれていくが。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    東野圭吾の作品は、どれも読者の予想を(いい意味で)大きく覆すモノが多い。
    本作品もご多分に漏れず、終盤あっと驚くようなドンデン返しはあった。
    が、箸にも棒にも掛からぬ作品だったという感じ。
    登場人物のキャラクター性に魅力がなさ過ぎたからかも・・・・
    特にメインキャラの伯朗・楓の双方に魅力なさすぎて、最後の最後までどうも好きになれなかった。

    言っちゃ悪いが、ベストセラーなんて全く狙っていない、東野圭吾自身の「箸休め作品」のような気がする。
    まぁ、最後までどう転ぶか予測できない作品だったので、娯楽としてはイイ暇つぶしにはなったかなぁ。


    【あらすじ】
    弟が失踪した。
    彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。
    楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である夫の家族に近づく。
    兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てばたつほど彼女に惹かれていく。


    【メモ】
    p55
    「ちょっとしたミッションがあるので出かけます。もしかするとしばらく戻らないかもしれない。でも心配しなくていいです。その場合、申し訳ないけど父の見舞いは君一人で行ってください」


    p76
    「医者になるのに、コンピュータは必要ないと思うけどな」
    すると明人は驚いたように目を何度か瞬かせた。「兄さん、マジでそう思ってる?」
    「逆だよ。コンピュータがあれば、大半の医者はいずれ必要なくなる。医者がやっている事は、問診票や色々な検査結果から病名を推測して薬を処方する、ただそれだけだ。経験というデータベースが武器だけど、全世界の全症例を記憶するなんて、一人の人間には無理だ。だが、コンピュータなら不可能じゃない。」

    明人は真顔になって続けた。
    「僕は医者にはならない」


    p262
    「忘れてはならないのは」ようやく楓がいった。
    「根拠のない憶測を口にしても何の意味もないってことです。それが悲観的なものである場合には、余計に。だって、誰も勇気づけられないじゃないですか」
    胸に突き刺さる言葉だった。楓にしても、明人の無事を心底信じているわけではかく、何らかの覚悟は抱えているのだと察せられた。


    p317
    「ご存知かもしれないけど、矢神家の先祖は代々医学界に大きな功績を残していて、それが豊かな富を生み出しました。
    康之介はそれを引き継いだわけですけれど、自分も何か足跡を残さねばと焦っていたんです。
    そんな彼が憧れたのは、画期的な発見とか発明でした。
    そうして脳の分野に目をつけました。未知の部分の多い、最も魅力的なフロンティアだと思ったからです。
    康治さんや牧雄さんが脳の研究をしているのは偶然ではありません。康之介の影響なんです」伯朗が初めて聞く話だった。思い返せば、これまで矢神家のことを何一つ知らないままだったのだ。

    「人体実験の対象となった男性の妻と康治氏は結婚したわけですね」


    p360
    「お義兄様、何事にも手順は必要です。
    どんな事が起きても、決して後悔しないための手順です。
    あたしは今、あたしにできることを精一杯やっています。もしかすると明人君の行方を掴む事には繋がっていないのかもしれない。
    でも、ただ待っているより、何かにぶつかっていくほうが、あたしには向いているんです」
    伯朗はぎくりとした。彼女は明人が帰ってこないことを覚悟しているのだ。
    そのための心の準備が、彼女のいう「手順」なのだ。


    p473
    だが口には出せなかった。いずれにせよ、彼女にとっては「任務」だったのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
    「よくわかった、お勤めご苦労様でした」皮肉でなく、そう言った。大変な仕事だと思った。

    • やまさん
      きのPさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      やま
      きのPさん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      やま
      2019/11/21
  • ドラマ化もされた東野圭吾の小説。
    今までの東野圭吾とは違い、義弟の失踪の真相を明らかにするために謎の美女と一緒に解き明かしていくという物語のため、印象的なイベントが起こりづらく読みにくい印象があるかもしれないが、文体のわかりやすさで苦痛にはならないような工夫がされている。
    遺産相続がテーマの作品だが、サヴァン症候群などの東野作品で特徴的な理系要素が入ってきていてとても面白かったです。まさか犯人の正体が矢神家の人間ではない所や、楓の正体が警察官で潜入捜査として伯郎のそばに近づいたというところがとても面白かったです。人間が手を出してはいけない分野に手を出そうとした結果起きる悲劇がとても切なかったなぁと、探究と制御がせめぎ合う中でそれをどのように選択するのかを誤った結果が非常に苦いものだと感じた。
    東野圭吾作品は、全作品制覇したいのでこれからも積極的に読んでいきたいです。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    手島伯郎:中村悠一
    矢神楓:早見沙織
    矢神明人:小野賢章
    矢神康治:古川登志夫
    矢神勇磨:杉田智和
    矢神波恵:勝生真沙子
    支倉隆司:速水奨
    支倉祥子:田中真弓
    支倉百合華:佐倉綾音
    矢神牧雄:津田健次郎
    矢神佐代:ゆきのさつき
    兼岩憲三:中田譲治
    兼岩順子:くじら
    矢神康之介:大塚芳忠
    手島禎子:小山茉美
    仁村香奈子:朴璐美
    池田幸義:緒方賢一
    蔭山元実:小清水亜美

  • 人気の東野圭吾さん。
    なんかドラマにしたらいいように思いながら読んでたら、やっぱりドラマ化されてたのですね。
    楽しくサラッと読めました。
    楓さんは誰が演じたのかな。調べたら吉高由里子さんでした。なるほど。

  • タイトルから悪女に振り回される物語かなと思ったけど。
    家族関係、家系、そして事件と。
    様々な要素が絡みつつもライトに読めた作品でした。
    振り回されるというのは違ってはいなかったけど。
    事件の真相というよりは複雑に絡んだ名門の家庭事情。
    それがこの物語の全体だったかな。
    ラストは落ち着くところで落ち着いたのかなとも。

  • 久しぶりに著者のシリーズ物以外を
    読みました。

    内容は安定の面白さでさすが!って感じ。

    強いて言うならタイトルをバシっと
    決めて欲しかったですかね。

    どちらかというと安全なビーナスでしたね。

  • ドラマを先に見ました。
    まさにドラマの原作のような物語
    ライトな物語で、昔のようなヒューマンドラマや考えさせられるような重いテーマでもなく、サクッと展開していきます。

    ストーリとしては、
    弟の明人と結婚したという楓が、独身獣医の伯朗を訪ねてきます。
    その相談内容は明人の失踪。
    明人は矢神家の莫大な遺産を相続することになっているが..
    失踪の原因は矢神家なのか?
    犯人は矢神家の誰かなのか?
    楓は本当に明人の妻なのか?
    重要なものとは?
    さらに、伯朗と明人の母親の死の真相は?
    といった展開です。

    しかし主人公の伯朗の描き方がいまいち。
    女性に対する考え方どうなの?
    下心見え見え!軽薄な印象
    さらに楓
    こんな人いる?
    ドラマはすごく頑張ってた(笑)

    というところで、全くリアリティのない物語でしたが、楽しめました。

    ウラムの螺旋については、Wikiで調べました。
    こうしたネタは好き(笑)

  • 未だ独身の獣医、伯朗は、肉感的な女性に目がなく、とにかく惚れっぽい。

    そんな伯朗の元に、異父弟(明人)の妻と称する女性(楓)から突然電話が。明人が行方不明になったので、一緒に探してほしいという。明人は資産家一族の跡取りで、事件に巻き込まれたのではないか、というのだが…。美人の楓に翻弄される日々が始まる。

    キーワードは「後天性サヴァン症候群」、「フラクタル図形」、「ウラムの螺旋」。

    本作、冒頭から胡散臭い展開の連続。そもそも楓が明人の妻なのかどうかが怪しい。実は伯朗が明人殺し(あるいは母親殺し)の犯人で、明人らが真相を究明するために伯朗を嵌めようとしている、というパターンもあり得るし…。読みながらあれこれ考えてしまった。結局、伯朗はピエロ役ということだったのだが。

    という訳で、リアリティーはナッシングな作品だったが、筋書きがなかなか見えないので、それなりに楽しめた。どぎつくないのも良かった!

  • 独身獣医伯朗が主人公の視点で物語が進行していくが、主役となり注目を集めるのはやはり、彼の弟の妻と名乗る謎深き女楓。
    彼女は本当に弟の妻なのか、妻の名を騙り遺産を狙う悪女なのか、彼女の本当の姿は…と、伯朗とともに読者もまた疑心暗鬼に苛まれつつ頁を捲らざるを得ない。
    思わせぶりやミスリード、そしてちょっぴりのヒントと、著者の手玉に取られながらの大団円。
    この作品に関しては、女性にだらしない主人公の性格に感情移入できないとか、これまでの東野作品にあるような重いテーマがないとか、いろいろ感想もあるようだ。
    しかし、理系出身の著者らしく、「サヴァン症候群」や、「フラクタル図形」など、小道具を提供して、読者の知的好奇心を刺激してくれる。
    読者を煙に捲いた楓の正体とともに、心地よい読後感が味わえる著者の小説は、ベストセラー作品になるべくしてなるのだろう。

  • 詠んでないとおもったら実は読んでたという本、このレビューの前にも同じような経験をした人がいたので電車の中でも笑ったw
    数学のキーワードにウキウキしたのと、楓がどんな女だ!蔭山がどんな女だ!と軟派な気持ちもありつつ、楽しく読みました。個性的過ぎるキャラクター、設定などエンターテイメント感満載だなと思いました。故に、現実離れ感も否めない、ミステリーだけど、ファタジーも感じた作品でした。

  • ドラマの予告編見て面白そうだったので読んでみた。東野圭吾らしい安定感のあるミステリーだと思う。めちゃくちゃな面白さはないけど、さくっと面白い本を読みたいときにおすすめ

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

東野圭吾の作品

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