汚名(下) (講談社文庫)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065206294

作品紹介・あらすじ

当代最高のハードボイルド作品と言われる、ハリー・ボッシュ・シリーズの邦訳最新刊! ボッシュ刑事物の最新作は、前作『訣別』同様、ボッシュに関わるふたつの事件を平行して描く。ボッシュが陥る二種類の危機(潜入捜査における現実的な死の危険と、捜査官としての名誉が汚される危機)を迫力たっぷりに描きだし、またしても抜群のページターナーに仕上がっている。特に前者の潜入捜査では、何度も死の危険に襲われ、シリーズ中”ボッシュ最大の危機”を描いたと言っても過言ではない。
 原著題名のTwo Kinds of Truth(二種類の真実)とは、かつての同僚たちからも証拠捏造を疑われた際のボッシュの心情に関するくだり(「ボッシュは、この世には二種類の真実があると知っていた。ひとつは、ひとりの人間の人生と使命に関して、けっして変わらぬ原則である真実。もうひとつは、政治家やペテン師や、悪徳弁護士とその顧客たちの、目的に適うように折り曲げ、加工できる柔軟な真実」)に出てくるもの。
【上下・全二巻】

感想・レビュー・書評

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  • マイクル・コナリー『汚名(下)』講談社文庫。

    現代最高峰のハードボイルド警察小説、ハリー・ボッシュ・シリーズの第20作。

    65歳を超えてもなお、根っからの警察官であり続けるハリー・ボッシュ。騙す者と騙される者、金に支配される者と支配する者。悪と善の構図は大昔から変わらない。

    ボッシュの警察人生の最大の危険を救うのはリンカーン弁護士ことミッキー・ハラー。終盤の緊迫した法廷劇だけでも読み応えがある。

    そして、ラストには次作へのプロローグが。

    ボッシュが担当した30年前のロス市警での殺人事件捜査の証拠が捏造され、ボッシュの捜査に嫌疑が掛かり、警察人生に最大の危機が訪れる。また、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、ボッシュは命の危険を省みずに不正薬物売買組織に潜入捜査を試みる。

    本体価格880円
    ★★★★★

  • ハリー・ボッシュ・シリーズ20作目後半。

    ロス市警を退職後、サンフェルナンドで予備刑事となり、次々に未解決事件を解決していたボッシュ。
    30年前にボッシュが逮捕した死刑囚が、冤罪であったという証拠が新たに現れる。
    当時、ボッシュが捏造したと疑われ‥?
    (ありえない、って!)

    一方、サンフェルナンド市警の管轄内でも事件が。
    ボッシュは、潜入捜査に赴くことになります。

    制約がありつつも腕を活かしていたボッシュ。
    ロスでは犯罪者には有名だから潜入捜査などできなかったが、痩せた風貌でやや老いてきた今は、適役らしい?
    捜査途中で出会った中毒患者に対しても、これまでとはやや違った対応を見せる。
    といった変化を含みつつ、最後はカッコいい。
    さすが!
    ミッキー・ハラーも彼らしい活躍を見せますが、ボッシュにはかなわない。
    危機を思いっきり跳ね返す、熱くなる結末でした。

  • 感想は下巻でと書いたのにすっかり忘れていた。
    そうかボッシュは65歳になったのか。
    アマプラで観るようになって読み始めたシリーズだけど、いつか終わる時がくるのだろうか?
    まだまだ読んでみたいシリーズ。

    作品紹介・あらすじ
    当代最高のハードボイルド作品と言われる、ハリー・ボッシュ・シリーズの邦訳最新刊! ボッシュ刑事物の最新作は、前作『訣別』同様、ボッシュに関わるふたつの事件を平行して描く。ボッシュが陥る二種類の危機(潜入捜査における現実的な死の危険と、捜査官としての名誉が汚される危機)を迫力たっぷりに描きだし、またしても抜群のページターナーに仕上がっている。特に前者の潜入捜査では、何度も死の危険に襲われ、シリーズ中”ボッシュ最大の危機”を描いたと言っても過言ではない。
     原著題名のTwo Kinds of Truth(二種類の真実)とは、かつての同僚たちからも証拠捏造を疑われた際のボッシュの心情に関するくだり(「ボッシュは、この世には二種類の真実があると知っていた。ひとつは、ひとりの人間の人生と使命に関して、けっして変わらぬ原則である真実。もうひとつは、政治家やペテン師や、悪徳弁護士とその顧客たちの、目的に適うように折り曲げ、加工できる柔軟な真実」)に出てくるもの。
    【上下・全二巻】

  • ページターナーぶりは相変わらず。盛り上がる反面カタルシスが足りない感じだけど、著者らしい苦いラスト。

  • 出れば必ず読むボッシュシリーズ。ボッシュは60歳をこえ、ロス市警を離れてほとんどボランティアみたいな形で小さな市の警察業務に関わっている。思えばずいぶん長いことボッシュを見てきたんだなあと、ちょっと感慨深い。いつ頃からか作品の雰囲気が初期とは違ってきたけれど、それもまた良し、と思う。

    ロスのような大きな舞台ではなくても、事件はやっぱり結構派手だ。ボッシュが直面する難題は二つあり、一つは薬物絡みの犯罪への潜入捜査、もう一つは思いがけず自身にかけられた汚名をそそぐこと。この二件が同時進行していくが、ややこしく錯綜したりはせず、とても読みやすい。長篇をだれることなく読ませるところが、さすがコナリー。

    このシリーズでは、犯人が捕まり(あるいは死に)正義が行われて万々歳!という終わり方にはほぼならない。犯罪を追う過程で、真相をつかみ犯人と対峙する場で、またその後の法廷で、ボッシュは常に「正義」というものについて考え、苦悩する。力をふりしぼり犯罪を追う努力をいくら重ねても、闇から湧き出てくるように非道な犯罪は絶えることがない。その多くは社会の構造に深く根ざしていて、読んでいる側もボッシュと共に徒労感にとらえられてしまう。それでも、時に深く傷つきながら、目の前の名もない被害者に正義をもたらしたいと奮闘する姿が、好きだ。

    ボッシュの異母兄弟ハラーが本作でも登場して、重要な役割を果たす。駆け引きに長けた辣腕弁護士であるハラーと対比することで、ボッシュの不器用とも言える生き方がよりくっきりと浮かび上がってくる。今回は、ボッシュを理解し信頼を寄せる脇役陣がちょっぴり多めで、結構嬉しかったです。

  •  この一作でボッシュは、三つ、いや四つの事件に絡む。そうボッシュ大多忙の巻である。邦題の『汚名』は、ボッシュが巻き込まれる過去の事件での捜査ミス及びこれに関するマスコミ・スキャンダルから取られたものと思われるが、作中では次のように語られている。

     <この世には、二種類の真実がある、とボッシュは知っていた(上巻 P202)>絶対の真実と、ペテン師たちによって創作される偽の真実が。

     一方で、薬局の父と子が無慈悲に殺害された事件を機に、薬物密売組織に囮として潜入するボッシュの活劇ぶりが描かれる。この部分はAMAZON PRIMEで既にドラマ化されたため、ぼくは視聴しており、設定その他に異なる部分はあるものの、主筋はドラマと原作は同じ展開を見せるので、実のところ小説を後にすることで興が削がれた。原作を映像化したものなら抵抗はあまりないが、映像→原作は、さすがに残念な順番だった。

     しかし、本書には、ボッシュへの思い入れをこの一冊で総括してやるんだ、くらいの原作者の熱気が感じられる。それが、定年を過ぎゆくボッシュに対しての、入魂のペン捌きとなって結実しているので、シリーズ屈指の熱い作品となっていることが素晴らしい。

     ボッシュは昔牢屋として使われていた黴臭い資料庫から古い事件の調書を引っ張り出しては、自分の天性の仕事勘を働かせ、潜入捜査中に気にかけた薬中の女性を徹底して再生させようと主筋とは別のところでも力を尽くす。

     腹違いの従弟ミッキー・ハラーは、今回の大団円を取り持つ法廷シーンで期待に違わぬ活躍ぶりを見せ、その調査員であるシスコはボッシュとの臨時協力体制を請け合う本書のサービスぶりである。

     もう一つ、サービス・シーンをご紹介。
     <「あんたはカウンターにいるタイプだ。ホッパーのあの絵でひとりですわっているやつみたいに」>とハラーがボッシュに言うシーン。<ボッシュは自分をホッパーの『夜更かしする人々(ナイトホークス)』のなかに描かれたカウンターにいる男のようだといつも思っていた(上巻 P297)>
     
     無論、ボッシュ・シリーズの一作目『ナイトホークス』を想起させるシーンである。作者はボッシュというキャラクターを創り出した当時と、ボッシュともども実績と経験を重ねてきた今とを重ね合わせて、充実した二人のそれぞれの人生を重たく振り返ってみせたのではないだろうか。

  • シリーズ20作品目は二本仕立てのストーリー。65歳になったハリー・ボッシュは、予備刑事としてサンフェルナンド市警に勤務している。

    第一の事件はタイトル通り、ボッシュが汚名を着せられそうになる過去の事件。事件の解決人として真相を探り出そうとするボッシュと、やくざな弁護士丸出しのミッキー・ハラーの絶妙なコンビネーションが見どころ。物語の中盤を占める第二の事件は、現在進行形の二重殺人。ここでは高齢のボッシュだからこその重要な役割が事件の鍵を握る。老いを感じて困惑するハリーにとってはなんとも皮肉な展開だが、人との出会いに使命感を再認識し、次のステージに繋がっていく人間ドラマが秀逸。

    謎解き目線で見ると、二本仕立ての事件はどちらも小粒でやや肩透かし。ひとつの大きな事件を掘り下げるのとは違って、別々の事件が並走する展開はある意味面白いが、個々の事件の厚みがイマイチなので物足りなさは残る。今作品は事件よりも、ハリー・ボッシュを巡る人間関係だったり、人との繋がりがメインなのかなーと思う。孤独さからますます事件を欲するハリーの姿がポジティブに描かれてるのが嬉しい。やはりこうでなくっちゃね。

    余談だが、作中でハラーがホッパーの『夜更かしする人々(ナイトホークス)』がハリーを連想させると言うシーンがあるが、個人的に好きな絵で、私も絵の中の男性にハリー・ボッシュを重ねて見ていたので、妙に嬉しくなってしまった。

  • 未解決事件の捜査をしているボッシュ。三十年前に逮捕し服役している死刑囚に新たな証拠が出た。ボッシュが証拠を捏造したと疑われる。元同僚からの疑いの目、完全と思われるビデオ。それと同時に起こる別の事件。そこにある正義と欲、欺瞞。ボッシュの過去と現在を結ぶ事件。潜入捜査の緊張感と過去の事件の裁判の展開の面白さ。ボッシュの心の内とこれからのこと。今回も読み応えのある内容でまだまだ楽しめそうなシリーズで次作も待ち遠しい。

  • マイケル・コナーズの本は当たり外れがない。今度の本も、特に後半(下)は手に汗にぎる活劇と、息詰まる法廷でのやり取りが圧巻だ。前半(上)はそれに至る過程で、徐々に読み手の期待を盛り上げて行く。ハリーとハラーの異母兄弟の連携も見事だ。前作まで親娘の関係がギクシャクしていたが、本作でそのしこりも解消した様で、めでたい。

  • 2本立てと思いきや、最後にオマケまであり。

    ボッシュのエネルギッシュな行動力が好き❣️

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著者プロフィール

Michael Connelly:1956年生まれ。LAタイムズ元記者。代表作としてはボッシュ・シリーズ、リンカーン弁護士シリーズがあり、当代随一のストーリーテラー。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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