メイド イン 十四歳

著者 :
  • 講談社
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065214435

作品紹介・あらすじ

主な登場人物は、ナチュラルボーン優等生とステルスくんと、サニーとパンダ、それから兎屋に来るちょっと変わった大人たち。
性格も良くて、なんでもほどほどにできてしまう主人公。秘密だって、釣り堀「兎屋」に毎週来ていることと、『フーアーユー?』という小説が好きすぎることくらいなものだ。そんなある日、かなり変わった転校生のお世話係を頼まれてから、クラス内で微妙なバランスがくずれてしまい……!? 
ぐらつく日常を送るぼくらのための、ノンストップ・パラレルYAワールド!

・著者紹介
石川宏千花
『ユリエルとグレン』で、第48回講談社児童文学新人賞佳作、日本児童文学者協会新人賞受賞。著書に『お面屋たまよし1~5』『死神うどんカフェ1号店1~6』、『少年Nの長い長い旅』(以上、YA! ENTERTAINMENT)、『少年Nのいない世界』(講談社タイガ)、『墓守りのレオ』(小学館)などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 新年度中学生くらいの年齢にお勧めの本を探して。

    中学二年生の吉留藍堂(よしどめ らんどう…伽藍堂の「らんどう」だー)は、自他共に認めるナチュラルボーン優等生。スマホには興味ないし、ワイワイ騒ぐ女子は苦手、勉強漬けは全く苦ではないし、<おっとり屋>と言われるほど悪い感情は浮かばないし、誰とでも同じ距離をもって接することができる。
    唯一の秘密は毎週金曜日に「兎屋」という釣り堀にかっきり1時間通うこと。そこでの顔見知りのみなさんとちょっとした交流もある。最近の楽しみは、大好きな小説『ユーアーユー?』『サニーの黙示録』の個人的続編(二次創作?)を顔見知りさんから読ませてもらうこと。

    そんな藍堂くんだから、先生からアメリカから転入してくる帰国子女のお世話を頼まれることになった。転校生の名前は浅窪沙斗(あさくぼ さと)くん。なにやら厄介な病気を抱えているらしい。
    待ち合わせのバス停で浅窪くんをみた藍堂は驚いた。彼は顔も手も包帯で覆われていたのだ。「他の人には、ぼくの姿は見えないんだよ」そう言って浅窪くんは手首の包帯をちょっとずらして中身をみせた。…そこに見えたのは反対側の包帯の裏側、そう、手が見えない!
    でもナチュラルボーン優等生の藍堂は気にしない。だってどんな表情をしているかはわからないけれど、浅窪くんはとてもいいやつだって思えるんだ。

    しかし学校のみんなはそうはいかなかった。なにこいつ、透明人間?だったら俺の生活覗かれたり、物を盗まれたりするかもしれないじゃん!?
    その雰囲気は、いままで「中立国」としてみんなと仲良く接して、いじられることさえなかった藍堂にも飛び火する。そう、みんなは藍堂に対してもあからさまに態度を変えてきたのだ…。

    ==
    <おっり屋>であっても心のざわつきはある。そんな14歳の藍堂くんの日々に、彼の愛読書『サニーの黙示録』の物語が入ってくる。
    釣り堀「兎屋」の大人たちや、「ゴマフアザラシのゴマちゃん先生」と呼ばれる学校の先生との関わり方もとても良い。
    ということで前半大変面白くて!読んだことのない感じで!

    その分後半に浅窪くんとのことがまあありがちな展開になってしまってちょいと残念だったなあ。あくまでも個人的にあまり…、ってことですが。
    大人たちとの関わり、<おっとり屋>の藍堂くんが更に精神的に一歩進むことはとても良かったです。

  • インパクトのある表紙が気になって読んでみたけど、中身もよかった。
    ナチュラルボーン優等生の藍堂くん、すごく好感のもてる性格だな。周りを俯瞰的に見てて大人びてる。兎屋で相談したときは、あぁやっぱり中学生なんだなあと思ったりもしたけれど。
    彼にとっての浅窪くんは、透明人間でもステルスくんでもなくて、ただの浅窪くん。そう心から思うのも意外と難しいと思う。人は無意識に比べて区別してしまうものだから。
    友達になりたいと伝えたい浅窪くん、アメリカまで会いに行った藍堂くん。二人とも素敵だった。

  • パンダ出てくる時点で思わず呪術回戦想像してしまいました。裏表紙の二人は重要な複線になる小説の登場人物。主人公のまっすぐな性格が好感持てて、感情移入しながらどうなるんだろう?とワクワクしながら楽しく読めました。
    本当は浅窪君にも物語があるはずなんだけど、今回その話はなし。
    長さも装丁も小学校高学年以上にとても良いです。

  •  いじめ、仲間外れを生む集団心理とそれにどう立ち向かうか。子供だけでなく大人にも当てはまる深い内容。
     主役の男子中学生が「ナチュラルボーン優等生」と宣言してるだけあって、品行方正すぎるが、彼のやさしさ、考え方は今の分断と相互不信の日本いや世界において必要だと思う。
     あと、いじめをなくすには、大人が子供目線でしっかり向き合うことも大切だと改めて感じた。

  •  自他共に認めるナチュラルボーン優等生の藍堂は、担任から帰国子女の転入生のお世話係を頼まれた。ちょっと特徴のある生徒らしい。
    その転入生とは、包帯をぐるぐる巻きにした出で立ちで、漫画に出てくる透明人間のようだった。実際病気らしく、藍堂には、翌日のクラスの反応がありありと思い浮かべられた。
    初日の反応はそれほどでもなかったが、病名を調べた生徒達から徐々にウワサが立ち始め、一緒にいる藍堂まで巻き込まれる事態になってしまった。

    藍堂は、頭の中では大丈夫だと思っていたが、毎週末通う釣り堀の常連客に、どうかしたのかと問われ、初めて自分がどうかしていることに気がついた。

  • 進学高校の附属中学に通う藍堂は、自他共に認める秀才。生活面でも一目おかれていて、本人もそういうスタンスが良いと思っている。そんな藍堂のクラスに帰国子女の転校生がやって来る。先生からお世話係を頼まれた藍堂は、その転校生・浅窪が難病であることを教えられる。先天性可視化不全症候群という病気で、いわゆる透明人間なのだという。そのため、全身を包帯で巻いている。
    あまりにインパクトのある転校生の登場で、藍堂の周囲に変化が起きる。

    イジメをあつかった小説は多いけれど透明人間という設定はどうなんだ、と思いながら読み始めたが、なかなか良かった。藍堂の周辺の中学生たちもよく描き分けられているし、関わる大人たちも色々もがいている事がさらりと書かれている。透明人間という難病についても難はなくもないが、それなりに説明がありSFではない。
    他にも、突っ込みどころは無くはないが、前向きなラストもいいなと感じた。

  • 私立の難関男子中学に通う“ナチュラルボーン優等生”のぼく吉留藍堂(よしとめらんどう)
    6月に季節はずれの転校生を迎えることになり、担任からお世話係を頼まれる

    登校の待ち合わせ場所にあらわれたのは、透明人間!?
    全身が包帯でぐるぐる巻きになっているその転校生 浅窪沙斗(あさくぼさと)くんは「先天性可視化不全症候群」だという

    浅窪くんの転入でクラスの空気が変わり始め、お世話係になったぼくの立場も微妙なものに

    そして、あの日……

    《ぐらつく日常を送るぼくらのための、あざやかな十四歳の黙示録!》──帯のコピー

    現実をすこしずらした設定にぐいぐい引き込まれていくうちに、たいせつなものが見えてくる

    《お客さまの中に、到着先のご変更をお望みの方はいらっしゃいませんでしょうか》

    作中に登場する主人公お気に入りの物語も重要なモチーフとなっている

    《いま目の前にある眺めだけが、きみの見るべきもののすべてではないのだから》

    ことしすでに『青春ノ帝国』『拝啓パンクスノットデッドさま』の2冊が刊行
    揺れる中学生に寄り添うYAで定評のある石川宏千花の新刊、2020年11月刊
    読売中高生新聞連載『見た目レンタルショップ 化けの皮』とほぼ同時発売

  • 宝物のような物語。

    美談でも、教育的な逃げもない。架空の物語だけど、ここまでリアルな心情にに寄り添ったヤング・アダルト小説があるだろうか。

    クラスの中立国でナチュラル・ボーン優等生の吉留藍堂は、自然体で誰ともそれなりにうまくやれていた。可視化不全症候群の“見えない”転入生がやってきた時、クラスの調和が乱れ始める。

    自分は変わっていないのに、周りが変わってしまう恐さ。いや、変わっていないのかもしれないけれど、様々な要因が作用し合ってあの恐ろしい事態を引き起こしてしまった。

    自分は後悔ばかりしている、とクラスで話した藍堂。クラスの一員として発言した彼の一言は多くのクラスメイトに届いたはず。

    「おっとり屋」の彼は人からの悪意にも好意にも鈍感で、きっと昔仲の良かった優等生の子は逆に人の機微に敏感な子だったんだろうな。

    果たして沙斗は本当に可視化不全症候群だったのかは分からない。自分さえやるべきことをやっていればいい、というのは通用しなくなってきた非常事態の時、自分ならどう行動するだろうか。

    他の登場人物たちもそれぞれスピンオフが作れるんじゃないかというくらい深掘り出来そうなキャラクターばかりだった。
    担任の先生も、気持ち分かるんだよなぁ…。

    偏見がなく、一貫した態度を取り続けた藍堂は、ヒーローのようだった。

  • 蘭堂は、ナチュラルボーン優等生。ある日、体が透明な病気だという転校生のお世話係をすることになる。蘭堂の、きちんと真っ直ぐな生き方や、異質なものを排除しようとする、それも1人ではやらない弱い者達、「先生」と呼ばれる生き方をできる者。蘭堂と、包帯の外れた浅窪君との笑顔の姿を目に浮かべてしまった。面白かった。

  • 個人的にナンセンスな設定が大好きなので期待して読んだ。
    実際にはあり得ないこと(病気、機械、生き物など)が出てきても、物語の中でリアリティがあったり、確かな役割をしたりするなら、ホントに好きだ。ソーンダースが好きなんだから。安部公房も、藤枝静男も。(ハードル高すぎたか…)
    でも、これは、その必要あったのかな、と思ったし、設定が生きてないし、薄っぺらい印象。
    まあ、自己をさらしたくないという気持ちと、目立ちたいという思春期らしい特徴があの姿と病気になったのではあろう。
    しかし、もう少し掘り下げるなり広げるなりしても良かったのでは。大人たちもステレオタイプだし。
    一番よくないのは、これだけの設定をしておきながら大して面白くないこと。ソーンダースくらいこころをゆさぶって欲しかったよ。

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著者プロフィール

『ユリエルとグレン』で第48回講談社児童文学新人賞佳作、日本児童文学者協会新人賞受賞。おもな作品に「お面屋たまよし」シリーズ、「死神うどんカフェ1号店」シリーズ、『メイド イン 十四歳』(以上、講談社)『墓守りのレオ』(小学館)など。「少年Nの長い長い旅」(YA! ENTERTAINMENT)と「少年Nのいない世界」(講談社タイガ)両シリーズを同時刊行して話題となった。『拝啓 パンクスノットデッドさま』(くもん出版)で日本児童文学者協会賞を受賞。

「2023年 『化け之島初恋さがし三つ巴 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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