生贄探し 暴走する脳 (講談社+α新書)

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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065218327

作品紹介・あらすじ

なぜ人は、他人の目が怖いのか?
なぜ、誰かが得すると自分は損した気になるのか?
なぜ、人と比べないと幸せを感じないのか?
GoToトラベルでは、本来それが経済をよくするためだとしても、「あの人だけ、いい思いをするなんて許せない!」とモヤっとした人は少なくありませんでした。
ヒトは放っておけば生贄を探してしまう生き物なのです。パンデミックが私たちにつきつけたのは、人間の心の闇でした。社会不安から噴出した正義中毒。脳は暴走し、ネットだけでなく、コロナ禍で奮闘する医療者までも生贄探しの対象になったのを目の当たりにした日本人。
脳科学者の中野信子さんと漫画家・随筆家で世界各国に暮らし異文化を経験したヤマザキマリさんが、そうした経験を無駄にせず、知恵に変えるために、ヒトの本質を鋭く分析。心豊かに生きる方法が得られます。

感想・レビュー・書評

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  • 私はこのお二方の愛読者で、ヤマザキマリさん29冊
    中野信子さん17冊すでに読みました。
    共著はこれが二冊目です。

    魔女狩り、ネロ、フェデリーコ二世、ハドリアヌスなどについても書かれていますが、結局彼女たちが言いたいのは
    誹謗中傷の分析と対策ではないでしょうか。

    こういう形で活躍している彼女たちにも、
    ネットの誹謗中傷は襲いかかります。
    繊細な人は自殺に追い込まれました。

    私だったら相当ダメージを受けると思うので、
    「自分はここまで」と線を引いています。
    しかしヤマザキさんと中野さんはタッグを組んで
    立ち上がった、そういう本だと思いました。

    中野さん「明日の見えない、不安な時代に、「空気」という群衆のあいまいな意見に振り回されず、自分自身の選んだ道を正解にできる力強さを、多くの人が持つことができるよう願っています」

    ヤマザキさん「正義というのは、他者の苦しみに対し、無意識に手を差し伸べてあげられてこそ、本当の意味を成すものなのではないかということを感じたのでした。
    自分が信じている信念に従わない他者を戒めることは、それがたとえ自分にとって、どんなに理想的な宗教的理念や政治思想が根拠になっていようと、所詮は同調への強引な圧力というものでしかなく、正義とは言えません」

  • 〝自らを「正義」と思い込んでしまうと、人間はどんなに残酷なことでも心の痛みをあまり感じることなくやれるようになってしまう〟〝誰かの不幸を願う...人間は「誰かと一緒になる」ということを、苦手とする不思議な脳を持っている〟2020年のパンデミック。社会が危機感に覆われ、人々が不安に晒された時期に、脳科学者vs漫画家が「あの人だけいい思いをするなんて許せない!」という〝暴走する脳〟を紐解いた知的対談集。〝自分と分かち合えない意見や思想とぶつかったら、まずはそれを興味深く、面白い現象として受け入れてみて〟

  • 自分の中に湧き上がる正義の“ような”物が正しい事と思わずにいられるだろうか。震える様な使命感に身を任せてしまった事もある。
    今、この本に出会えた事を大切にしたい。
    “他者が自分達を理解するべきではなく、自分達こそ他者を理解するべき”
    日本における“世間体”と言うある意味宗教以上に厳しい戒律。
    今生きている現実を真実で捉えて、『柔らかく』生きていきたい。

    ヤマザキマリさんの選書 エリアス・カネッティ「群衆と権力」

  • 博学のお二人が現在の日本、日本人の状況について縦横無尽に語り合われた内容。

    対談の部分については正義、生贄、世間体、個性を失う教育といったことに対して容赦ない分析が会話の中で行われていく。その知識のバックグラウンドは半端ではない。

    対談の章では「なるほど」と思わされるところが多々あった。ただ、「で、どうしたら良い?」という問いに対する答えのようなものが見えてこなかった。

    「自分は自分が大事、相手も自分が大事、それを尊重し認め合うこと」という言葉が最後の方で出てきた。まさしくその通りだと思う。

    最後の章のヤマザキマリさんのお考えは、とても納得のいく内容だったと思う。

  • 本書で書き留めておきたい言葉

    「危機的な状況がおこれば、はみ出し者は生贄に捧げられてしまう、ヒトはそういうことをしてしまう生き物だから、知性でそれを押しとどめる必要がある」

    「人間にはさまざまな解釈やものごとのとらえ方があるのだということを認めさえすれば、今後生きていくうえで全てを受け入れ、毅然と前に進んでいくことができるはず」

    「地球という惑星の、大気圏の中で生きているという意味では、どんな動物たちもみな同じ仲間。群れとして生きるうえでの安心の基準はそれだけで十分」

  • ヤマザキマリさんも中野信子さんも、好きです。
    本当にそう。

    魔女裁判、皇帝ネロ…
    その時代から、人間の嫉妬による残虐性、間違った正義、毒親などなど…
    とても興味深かったです。

  • #生贄探し #中野信子 #ヤマザキマリ #講談社α文庫

    こわ〜いタイトルですが日本社会を客観的に見るのに良い本でした。正義と名の下に攻撃的になるのは心理学的にも歴史的にも事実なのですね。こわいこわい。自分もそうならないようにしないと!!と蛍光ペンでいっぱい線を引きたくなる一冊でした。

  • 話題作だったので読んでみました。
    著者ひとりひとりの章である1章と5章は面白く読みましたが、間の2.3.4章の対談部分は、知っている、分かっている、を前提とした読者を意識しない二人だけの会話が続くので分かりづらかったです。話もあちこち飛ぶしね。
    古代ローマ史についてある程度の知識がないと楽しさ半減かも。今の世の中にはプチネロがあふれかえっている、と言われてもネロがどんな人か知らなければ前後の文脈で想像しながら理解するしかないし、フェデリーコ2世も頻繁に登場するけど、私には元々のイメージがないから二人が盛り上がっていても置いて行かれてしまったよ・・・

    ただ、中世ヨーロッパの魔女狩りを例に、「正義」の名のもとに他者にどこまでも残酷に制裁を下す現代のSNS上の攻撃(→人類進歩ナシ)や、日本特有の「出る杭は打たれる文化」、ある意味宗教よりも厳しく縛られている日本の「世間体感」の話などは面白かったです。
    また、努力を誉めるのではなく、頭がいい、といった能力について褒められると自信はかえって失われてしまったり、噓をつくことがわかっているというのも印象的。

    最後にヤマザキさんが言っていた、想像力の欠如がいつでも人々を野蛮化させ、人間としての全体的な社会組織そのものの崩壊も招き入れかねない、地球という惑星とうまく折り合いをつけて生きていきたいのなら、そういった危機感をもっと日頃から感じるべき、という言葉はしっかり胸に刻みました。
    多様性を認める世の中、ぜんぜんできてないねーと暗い気持ちになってしまいました。

  • 「異質者を排除する集団バイアス」に自覚的であることの大切さが、ずしりと胸に響きました。

    そして「正義」の制裁を加えることに喜びを感じる、人の心のあり方について、魔女狩りを例にとりあげられていましたが、それは今でも当てはまることにはっとしました。

    自分が排除する側にもされる側にもならないように、どのように振る舞っていくのがよいのかを考える、よい機会になりました。

  • 正義を正義と思い込んでいる人ほど厄介である。
    というのを他の本でも読んだが、
    この本でも同じような事が書いてあって
    やはりそうなのか、と思った。

    人の不幸を嬉しいと思うのは自分が損したと
    感じるから。というのは初めて知った。

    日本のや村八分の文化が
    他の国がそうではないと知り
    日本はすごく生きづらい国なんだなと思う。

    嫌われないように、ひとりぼっちにならないように。
    自分の学生生活を振り返ると
    本当にしんどくて、苦しかったなと思った。



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著者プロフィール

脳科学者、医学博士、認知科学者。1975年、東京都に生まれる。東京大学工学部卒業後、同大学院医学系研究科修了、脳神経医学博士号取得。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。現在は、東日本国際大学教授として教鞭を執るほか、脳科学や心理学の知見を活かし、マスメディアにおいても社会現象や事件に対する解説やコメント活動を行っている。著書に『サイコパス』『不倫』(ともに文藝春秋)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『脳の闇』(新潮社)などがある。

「2023年 『賢くしなやかに生きる脳の使い方100』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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