筑紫哲也『NEWS23』とその時代

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065260685

作品紹介・あらすじ

かつて、日本にはこんなに自由で、一本背骨の通ったニュース番組があったーー。

TBS『筑紫哲也 NEWS23』キャスターとして、日本の報道番組の新たな地平を切り開いた男が亡くなってから、今年で13年の時が過ぎた。「とかく一つの方向に流れやすいこの国で、少数派であることを恐れないこと」。最後の放送で噛みしめるように語った稀代のジャーナリストは、何を見て、何を考えていたのか。忌野清志郎、鴻上尚史、小澤征爾ら各界の文化人との交流、生涯の同志となった立花隆との共闘、そして「力の強いもの、大きな権力」を監視することへの強い意志。番組編集長として、在りし日の筑紫の姿を間近で見ていた著者が、関係者への膨大なインタビューをもとに振り返る。「頭をあげろ!」。世の中が混沌とする今だからこそ、筑紫の生き様はいっそう胸に響く。

筑紫さんといえば鋭い切り込みをしながら、顔は微笑んでいる、その表情が忘れがたい。
今こそ筑紫哲也の話を聞きたい、金平さんのそういう思いは僕もおおいに共鳴している――坂本龍一(音楽家)

●各章タイトル●
 第1章「二度目のプロポーズだから受けざるを得なかったんだよ」
 第2章 要は、何でもありということ
 第3章 君臨すれども統治せず(ただし例外あり)
 第4章 たたかう君の歌を たたかわない奴らが笑うだろう
 第5章 遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん
 第6章 筑紫さんがこぶしを振り上げて歌った
 第7章 沖縄を愛し、沖縄を最後の旅先に選んだ
 第8章 「旗を立てる意志」について僕が知っている二、三のことがら
 第9章 「政治部失格」だが「人間失格」では、断じてない
 第10章 「党派性で、人を区別して、つきあいたくないんだ」
 第11章 触媒としてのジャーナリスト
 第12章 タウンホールミーティングの時代
 第13章 「私の人生、百八十度、変わりましたよ」
 第14章 中国トップと市民の直接対話
 第15章 阪神淡路大震災報道、その失意と責務
 第16章 世界が変わった日
 第17章 番組内でのがん告知と、家族との残された時間
 第18章 『筑紫哲也 NEWS23』の最も長い日
 第19章 『筑紫23』に馳せ参じたJNNの「つわものども」
 第20章 『筑紫哲也NEWS23』で縦横に動き回った立花隆さんについて
 第21章 演劇空間としてニュース番組
 第22章 「『NEWS23』のDNA」〈伝承〉をめぐって
 第23章 「頭をあげろ!」

感想・レビュー・書評

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  • <書評>『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』 報道の「DNA」問う - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
    https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1473518.html

    『筑紫哲也『NEWS23』とその時代』(金平 茂紀,鈴木 成一)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000358296

  • TBSラジオ公式読本と異なり、筑紫哲也NEWS23 のクリントン大統領タウンホールミーティング、オウム事件、損失補填問題など泥臭い裏側の記録を知ることができる証言集だった。詳しい話は随所に紹介されている参考文献を読むことになるだろうがそのことがまずは広く知れる良い本だった。それにしてもTBSラジオ公式読本はつまらなかった。

  • CSとZSだけを時系列にして詳しく書いてもらえれば良かった

  • 「今という時代が実は筑紫哲也という人物の記憶を呼び込んでいるのではないか。」

     秋ごろ武田砂鉄著の『日本の気配』という本を読んだ時に、奇しくも著者と同じ思いを抱いた。武田氏の著作の訴えが中途半端であったこともあり、「今の時代に筑紫さんが生きていたら・・・」と。
     そう思っていた矢先に本屋で見かけた本書。思わず手に取った。

    「時代の大きな転換点の渦中に僕らはいたのだ。天安門事件。リクルート事件。冷戦の終焉。そして昭和の終わり。」

     確かに、あの頃は、仕事で遅く帰宅しても、『NEWS23』を見てから、あるいは見ながら寝るなんて夜が何回もあった気がする。
     今もまた、ある意味、”時代の大きな転換点の渦中“と言えるのかもしれない。そんな時代が故に、”筑紫哲也という人物の記憶を呼び込“んでいるという思いはスッと理解できた。

     あの頃を懐かしく振り返えれると共に、またあの頃の活力よ再びと思わないでもなかった。体力では及ぶべきものではないが、そこは知力と、ささやかな経験でカバーか。

    『NEWS23』のDNAは、3つ。最終回の多事争論で筑紫さんが語った、『力の強いものを監視し』『少数派であることを恐れず』『多様な意見で社会に自由の気風を保つ』ことだそうだ。ふたつめの意気込みは、知らずに実践できている気がするが、どうだろう。
     少数派であることを恐れずにというより、多数派の裏を行ったほうが間違いがない。長いものに巻かれてしくじった時の後悔ってのは救いようがないからね。
     
    「文化の動きの方が省庁発表の官製ニュースなんかより、よっぽど価値があると思っていた。」

     『NEWS23』の二部の構成がまさにそうだった。芸能、演劇、映画などなど、実に文化的であり好きだった。今も、書籍や映画のラインナップで、大きな世の流れ、世界の動静はざっくり把握できると思っている。知らずと筑紫さんから教えられていたことなのかもしれないなあ。

     とはいえ、まえがきに著者が記した
    「テレビ報道はまだ生き残る価値がある」
     は、どうかと思うけど。
     テレビは家に置かずに10年以上になる。

  • 後半に書き足された章は蛇足というか、後味があまり良くないのだが、マスメディアが成立していないとジャーナリズムが成り立たない理由は、大変よく伝わる。ターゲットメディアに報道はたいへん食い合わせが悪い。そのことを日々考える。

  • 2023年12月13日読了

  • 699.64||Ka

  • 一つだけでなく二つも見るのが楽しみだったニュース番組があった時代を懐かしく思った。
     
     現在の満ち足りない空気の原因は、当事者以外は誰もが分かっている。
     少数派でも輝く。多様性を大切にする。
     それは大事。ただ、メジャーでも迎合的ではない快さが足りないのではないか。

  • メディアは権力の監視を矜持として、弱者を慮る姿勢を優先する。この当たり前のようだが、いつしか強者に忖度や世論という印象操作に手を染めてしまう陥落が、報道の不自由という意識の剥離へと常態化する。嘆くべき現状はどれだけの人々が共有されているのか、気骨あるジャーナリズムは故筑紫哲也のメッセージを受け継いで果敢に報道して欲しい。でなければ、この国はますます衰退する。そして滅ぶ。

  • 今となっては筑紫哲也という人物に強い興味と関心を持ち続けている人間は少ないだろう。
    しかしその少ない方々は興味を持った章だけで良いので一読してみると良いと思う。
    少なくとも私は筑紫哲也氏から、テレビを通して、著作を通して、多大な影響を受けたので、非常に興味深く拝読しました。

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著者プロフィール

金平茂紀
ジャーナリスト。1953年、北海道旭川生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。1977年、TBS入社。以降、同局でモスクワ支局長、ワシントン支局長、『筑紫哲也NEW23』編集長、報道局長などを歴任。2010年より2022年9月まで『報道特集』キャスター。以降、同番組、特任キャスター。2004年度、ボーン上田記念国際記者賞受賞。2022年度、外国特派員協会「報道の自由」賞受賞。著者に『テレビニュースは終わらない』(集英社刊)、『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館刊)、『抗うニュースキャスター』(かもがわ出版刊)、『筑紫哲也 NEW23 とその時代』(講談社刊)など多数。

「2022年 『じじつは じじつ、ほんとうの ことだよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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