花は愛しき死者たちのために (集英社オレンジ文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086804585

作品紹介・あらすじ

硝子の棺に納められた、美しい少女の遺体。
彼女――エリスは決して腐敗せず、いつの頃から存在するのかもわからない。

棺は、黒装束の男に運ばれ、エリスは時代も国も超えてその姿を見せる。
あるときは孤独な墓守の青年の前に。
またあるときは友人の美貌に複雑な思いを抱く少女の前に。
ある成金貴族の息子は、エリスのための“秘密の集い"にのめり込んでしまう。

彼らはなぜ、エリスに惹かれてしまうのか。
その先に、自身の破滅が待ち受けているとも知らずに――。
「エリス、ほらご覧。また君のために人が死んだ」

2021年集英社ノベル大賞準大賞受賞作、文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 香油の女の子の話が一番好きでした

  • 決して腐敗しない死体の少女エリス。
    彼女は年齢も性別も関係なく相手を魅了していく。
    墓守の青年。
    成金貴族の息子。
    香油用の花を摘む少女。
    そして絵描きの男性。
    誰も彼もエリスの魅了からは逃れられない。
    その先に例え破滅が待っていたとしても。
    奇跡的にその魅了から逃れられたとしても、その先に待つのはまた別の呪いだ。
    飢えて飢えてたまらなくなり、そしてエリスを次の「語り手」へ委ねるようになるのだ。
    これもまた、人としては破滅なのかもしれない。

    そんなエリスに魅了され、そして破滅していく人々の物語。
    胸に重くのしかかるのは墓守のお話。
    美しいのは少女の話。
    そして狂気の話は貴族の彼、そして友情からの落差が哀しいのが絵描きの話。
    どれもこれも端的に言ってしまえば悲劇である。
    でも、どれもこれもこちらを魅了してならない。
    エリスのように、物語自体に魅力がある。

    エリスが何者なのかは、最早重要ではない。
    彼女に魅了された者たちが作り出す物語がどんな色をしているのか、どんな花を咲かせて散っていくのか、それこそが重要。
    きっとこれからも次々と生み出されていくのだろう。
    美しくも哀しい、そしてきっと常人には理解できない世界の物語が、死せる彼女を中心として。

  • 表紙やあらすじから期待したとおりの退廃的で好きな雰囲気、面白かった。

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