中坊公平・私の事件簿 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087200638

作品紹介・あらすじ

闘う弁護士・中坊公平は、いかにして形成されたのか。彼は生涯、約400件にものぼる裁判や事件を担当してきた。庶民の苦しみの中から提起された小さな事件はもとより、日本社会を揺るがした「森永ヒ素ミルク事件」や「住専問題」などの大事件まで、それはあらゆる分野に及ぶ。本書では膨大な記録の中から今も著者の心に残る一四の事件をピックアップして、その内容と思い出を記述した。これは「事件が弁護士を育てる」と語る著者の成長の軌跡でもある。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、家業が傾き破産をしました。その時に、お世話になった弁護士さんの姿を見て、自分も弁護士を志し、大学に進みました。結局は夢は叶いませんでした。そんな私にとっては、中坊公平さんは理想的な弁護士さんでした。小柄で柔和な笑顔、いつも辛い方々に向ける笑顔。ただ、不合理については鬼となり徹底的に戦う。そんな中坊さんが、決して最初からそうではなかった事、人間的な部分が垣間見れて、安心をしました。そんな方に比べて、今の弁護士さんはワイドショーのコメンターやタレントまがいの行動。見るに耐えません。司法試験を通りやすくする事が正しい事なのかわからなくなります。でも、それが時代の流れでしょうね。

  • 中坊公平さんは、2013年に既に亡くなられているが、国民の耳目を集める大きな事件を扱われることが多かった高名な弁護士だった方。
    本書は、中坊さんが現役時代に手がけた事件のうち、ご本人にとって印象深いものを集めたもの。
    扱われているなかで、ある程度の年齢以上の方であれば、森永ヒ素ミルク事件、豊田商事事件、豊島事件、住専処理事件などは、内容は分からなくても、聞いたことはあるのではないかと思う。
    印象に残ったことは、下記のようなこと。
    ■事件を解決するために基礎となるのは、プロとしての腕前
    ■訴訟事件は、単純な法廷での争いではなく、関係者の巻き込み方や、解決の仕方の設定や、法廷外での活動などが重要
    ■そもそも、何が実現したら「問題は解決した」と言えるのかは、事件毎に設定しないといけない。上述したが、単に裁判に勝とうとすれば良いというものではない
    ■そう考えると、プロとしての腕前とは単純に法律家としての実力ではなく、もっと大きな「影響力」とでも言うべきもの

    プロフェッショナルとは何かについて考えることが出来た一冊。

  • 先輩弁護士からプレゼントされた本。弁護士として現場をとにかく大切にすること、を学んだ。

  • 中坊さんが扱った事件を、その当時の思いと共に振り返ったもの。簡易でしたが、時代の流れを感じます。
    法を扱うようでいて、不幸を扱うのだから人を見なければならない、と。真実は現場にあると語る彼の言葉は正しいと思うけれど、それを弁護士の彼が語るのが、新鮮に感じた。

    ・われわれ弁護士が扱う「商品」というのは、「人の不幸」というものから出発しているわけです。しかし、「人の不幸」というものをどう処理するかというのは限りなく難しい問題です。だから、傷ついている人には優しく、居丈高になっていたり、無責任な態度をとっている人にはきつく接するとか、要するに人を見て法を説かないといけないのであり、たえず万人に対して同じ答え、態度で接するという方がむしろ間違っていると考えるのです。

    ・二つ目に引っかかりました言葉は、私に隠れてといっては変だけれども、小さな声で数多くの人が言われました。このようにして権力をおもちの方と闘うということは、所詮は敗れることである、これだけお金を投じても、いらんことに終わるのではないか、ということが、ずっと継続をいたしておりました。
    私はその都度「いやそうじゃない、世の中には真実と道理というものがある。そしてそれはいかなる権力よりも強いものだ。それこそが、われわれを守る武器である」ということを言い続けて今日までまいりました。

  • 末節は、いろいろ語られておりましたが、熱血のある分かりやすい方でした。

  • 今年5月3日、「平成の鬼平」と呼ばれた弁護士・中坊公平氏が亡くなった。
    いつか読もうと思って積んでおいた本書を取り出して、遅ればせながら
    追悼読書である。

    中坊氏が手掛けた事件を辿りながら、弁護士としてどのように成長して
    来たかが綴られている。

    取り上げられている14の事件は新書という限られたページ数の為に
    ダイジェストになっている。氏の仕事については他の作品の方が
    参考になるかもしれない。

    しかし、本書に収録された森永ヒ素ミルク事件の冒頭陳述は必読。
    氏は終生忘れることの出来ない冒頭陳述とし、時が経っても暗記
    していると言う。

    後の公害訴訟でもそうだったが、国と企業が癒着して多くの犠牲者を
    出した事件だけに、被害者である弱者の目線にたった冒頭陳述は
    権力側への怒りを秘めながら、声を上げられなかった弱者の声を
    見事に代弁している。

    弁護士は依頼者に法律のことを教える存在ではない。依頼者の立場
    になり、依頼者の心の負担をいかに減らすかなのだと言う。

    司法の責任とは何か。弁護士とはどうあるべきか。中坊氏の人生観
    に触れられる書である。晩年、整理回収機構で汚点がついてしまった
    のが残念だった。

  • ざっくりとした語りなのにぐいぐいくる。

  • こういうタイプの人間じゃないと日弁連会長にはなれんよね、というほど義の人というか、まあそれがすべて好転するかというとそうではないのかもしれませんが、少なくとも組織に対し正義を貫こう、という姿勢は相当気概のある人間でないとできないことで、テレビ出てるような有名な弁護士なんて楽して勝つ方についてるしね。PL法といった法律、というか考え方といいますか、そういうのが整っていない時代に、責任の所在を理解させる、って相当大変なんでしょうね。もちろん今もそうした状況で苦労されてる人がいるってことです。

  • 個人史を辿りながら、社会的重要事件も垣間見えるような設定で、興味深く読みました。最初に事件のあらましで、それから裁判の顛末について書かれるという流れでしたが、読んでいるうちにちょっとした気付きがありました。事件の内容だけを見ていると、どちらが弁護されるべき対象なのか、よく分からないケースがしばしばあったのです。その後の流れを読むうちに、”なるほど、非があったのは相手側だったんだ”って気持ちになるんですけど、それ、結構危ないことですよね。弁護士の言い方一つで、良いものにも悪いものにもなり得る、という。依頼人の弁護に是力を尽くすのが仕事だけど、やり方によっては口八丁も成り立つ。それって、注意して見ないと怖いことですよね。これを読みながら思ったのは、ことの良し悪しは自分の頭でちゃんと判断しないといけないな、ってことでした。

  • P90〜92のメッセージを全ての弁護士、弁護士志望者に読んで欲しい。中坊さんのような弁護士になることは並大抵の努力では出来ないことは明らかだが、自分の実力を直視し、それと向き合って努力することは誰にでも出来ることであり、弁護士というプロである限りそれは必須のことである。

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