安全と安心の科学 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202786

感想・レビュー・書評

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  • 製造業という仕事柄、安全という概念は非常に身近なものであるし、本書で取り上げられている「フール・プルーフ」「フェイル・セーフ」等も、考え方としては特に目新しいものではなかった。
    ただ製造業界では安全が常日頃声高に叫ばれている一方で、医療業界ではそうでもない現状があるというのは知らなかった。業種が異なると、なぜここまで風潮が異なってくるのだろうか。その背景に目を向けて見ると面白い。
    本書は、書名の通り、「安全」と「安心」、その関連性について言及されているはずなのだが、どうもその印象が薄い。読後一週間近く経っているというのもあるが、どのような文脈で語られていたのか、よく思い出せない(原子力との関連においてだったと思うが・・・)。
    この分野に興味があるなら、著者の他の本も読むべきだと感じた。

  • [ 内容 ]
    交通事故や医療事故、あるいは自然災害が頻発しているが、元凶は車や劇薬なのか、人なのか、あるいはシステムなのだろうか。
    われわれの安全を脅かすものは、「安全」の名のもとに人間が作り上げた科学的人工物、社会的構築物である場合が多くなっている。
    また現代のような文明の高度に発達した社会では、心の病気、自分が生きている社会との不適合に悩む人の割合も増えてきている。
    これまで定量的に扱えないということで無視されることの多かった「不安」や「安心」といった問題に目を向けなければいけない時代になってきたのだ。

    [ 目次 ]
    序論 「安全学」の試み
    第1章 交通と安全―事故の「責任追及」と「原因究明」
    第2章 医療と安全―インシデント情報の開示と事故情報
    第3章 原子力と安全―過ちに学ぶ「安全文化」の確立
    第4章 安全の設計―リスクの認知とリスク・マネジメント
    第5章 安全の戦略―ヒューマン・エラーに対する安全戦略

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  現代の高度な科学技術や医療が、私たちに大きな恩恵をもたらしていることは明らかです。しかしその一方で、その科学技術や医療が私たちを新たな「危険」にさらし、「不安」に陥れていることもまた、明らかと言えます。

     このような時代において、科学は、どのようにして「安全」さらには「安心」を目指したらよいのでしょうか。この点について、科学史・科学哲学の第一人者であり、近年は「安全学」の構築を提唱している著者が、一般読者に向けてわかりやすく語ったのものが本書です。

     本書では、「安全」と「安心」との違いが解説されるとともに、「安全が達成された瞬間から、安全の崩壊は始まる」(170)とも指摘されています。「フール・プルーフ」や「フェイル・セーフ」などの安全学における重要概念や、安全学に関する我が国や世界の動向についても、広範囲に解説されています。

     本書を読むと、この分野の現状について、よくわかります。ただ、読者にとって当然気になるのは、その次の段階として何を目指すかという点でしょう。しかし本書では、入門書という性格や、この種の議論がまだ我が国では端緒についたばかりであることからと思われますが、具体的にどのようなシステムを構築すべきかという点にまでは、あまり踏み込んではいません。

     しかしこの点は、むしろ読者に対する「宿題」なのかもしれません。私たちは、本書にあるような問題群の存在をまずは認識して、本書に掲げられた提言をどのように実現すべきかについて、具体的に議論していかなければならないのです。

     たとえば、ふるくて新しい問題であり、しかも私たちの誰もがいつ命を奪われるかもしれない「自動車による交通事故」についてはどうでしょうか。今後、どのような技術的・社会的対策をとることが必要なのでしょうか。毎日誰かが事故に遭っています。このままでよい、とは誰も思わないはずでしょう。それでは、いったいどうするのでしょうか。たとえばこのような、これまで目を背けてきた問題に、私たちが本当に向き合う覚悟を決めたとき、著者の論点がその最初の手掛かりとなるのだと思います。

     本書は、新しい科学技術の成果や、科学技術が関わる事件・事故が紙面を賑わす時代に、「安全」や「安心」について改めて考えてみたい方には、お薦めの一冊と言えます。

  • (2007.03.27読了)(2007.02.24購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    交通事故や医療事故、あるいは自然災害が頻発しているが、元凶は車や劇薬なのか、人なのか、あるいはシステムなのだろうか。われわれの安全を脅かすものは、「安全」の名のもとに人間が作り上げた科学的人工物、社会的構築物である場合が多くなっている。また現代のような文明の高度に発達した社会では、心の病気、自分が生きている社会との不適合に悩む人の割合も増えてきている。これまで定量的に扱えないということで無視されることの多かった「不安」や「安心」といった問題に目を向けなければいけない時代になってきたのだ。

    ☆関連図書(既読)
    「技術と文明の歴史」星野芳郎著、岩波ジュニア新書、2000.05.19
    「原子力神話からの解放」高木仁三郎著、光文社、2000.08.30
    「禁断の科学 軍事・遺伝子・コンピューター」池内了著、NHK知るを楽しむ、2005.12.01
    「だから失敗は起こる」畑村洋太郎著、NHK知るを楽しむ、2006.08.01
    「日本近代技術の形成」中岡哲郎著、朝日選書、2006.11.25

  • 学際的内容

    現代社会の批判書。

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。科学史家、科学哲学者。東京大学教養学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学教養学部教授、同先端科学技術研究センター長、国際基督教大学教養学部教授、東洋英和女学院大学学長などを歴任。東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授。『ペスト大流行』『コロナ後の世界を生きる』(ともに岩波新書)、『科学の現代を問う』(講談社現代新書)、『あらためて教養とは』(新潮文庫)、『人間にとって科学とは何か』(新潮選書)、『死ねない時代の哲学』(文春新書)など著書多数。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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