闘う区長 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206678

作品紹介・あらすじ

二〇一一年東日本大震災と福島第一原発事故を受け、同年、脱原発を訴えて、人口八八万人をかかえる世田谷区長に当選した著者。就任後は区役所から始める節電、不透明な値上げをめぐり東京電力へデータ開示要求、電力の自由化とエネルギーの地産地消をめざす「世田谷電力」の計画など、自治体の長だからこそ提案できる施策を次々に実行に移してきた。外からは見えづらい地方自治の現場における首長の具体的な仕事内容とはどんなものなのか?本書は、国政が混迷を極める今こそ、自治体が発信力を高め、地域が連携することで日本を変えようという提言である。

感想・レビュー・書評

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  • 東電がいかにクズか、よくわかった。

  • [ 内容 ]
    二〇一一年東日本大震災と福島第一原発事故を受け、同年、脱原発を訴えて、人口八八万人をかかえる世田谷区長に当選した著者。
    就任後は区役所から始める節電、不透明な値上げをめぐり東京電力へデータ開示要求、電力の自由化とエネルギーの地産地消をめざす「世田谷電力」の計画など、自治体の長だからこそ提案できる施策を次々に実行に移してきた。
    外からは見えづらい地方自治の現場における首長の具体的な仕事内容とはどんなものなのか?
    本書は、国政が混迷を極める今こそ、自治体が発信力を高め、地域が連携することで日本を変えようという提言である。

    [ 目次 ]
    第1章 すべては「3.11」から始まった
    第2章 全国初の「脱原発首長」誕生
    第3章 区長のお仕事
    第4章 東京電力とのバトル
    第5章 電気料金値上げのトリックを見破る
    第6章 「世田谷電力」とエネルギーの地産地消
    第7章 夢の続きを…

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 保坂さんが世田谷区長として当選した後、「震災後にあるべき自治体の姿」を模索して奮闘する姿を記した自叙伝的作品。

    自叙伝である以上、自身の政策を正当化し評価するのは仕方があるまい。電力問題については、やや疑問に思う点(周波数を安定化させる、高品質な電気をどう自然エネルギーで提供するか)といった点については触れられていない。しかし、市民との協同を率先するという点では成功例だと思う。

  • 保坂さんは社会党だったから区長になっても多数派の自民党や民主党の相手で大変だったろうな。

  •  闘わない首長の多さ。
     

  • 興味深く読んだところは、東京電力とのバトルとPPSに関する内容だ。
    例によって、「東電はダメだな。」と思った。著者が区長を務める世田谷区の電力利用量を開示しない東電、一方的に値上げをする東電、大口利用者には安値で売る東電、独占企業体としてなりふり構わぬ経営ぶりだ。
    またPPSという新しい売電企業にコストの面で変えたり、世田谷の屋根に太陽光パネルを取り付け電気の地産地消を目指すなどの取り組みも行なっている。

    彼は「新しい公共」をどんどん進めようとしている。彼のtwitterやfacebookを通じて、見守って行きたいと思う。

  • 区長選への出馬のきっかけは、3.11だった。世田谷区長になってからの奮闘ぶりを、主にエネルギー関連を中心に記す。

  • 保坂展人というと、いじめとか不登校とか学校へ行くばかりが能じゃないというような本を書いてる人、という印象がずっとあった。衆院選で比例復活で当選したときには、選挙区での得票率が低くて供託金を没収されたという話も記憶にある。

    2年前の春に、保坂は世田谷区長になった。この本にもあるように、区長選に出るに至ったその始まりは「3・11」だったという。

    世田谷区の人口は88万人、非常勤や周辺で働いている人を含めれば1万人近い人たちの仕事で区政は運営されている。
    ▼首長の判断によっては、多くの市民、住民たちの命や安全に大きな影響が出る。平常時には、たんたんと仕事は流れて行くかもしれない。日常のひと時は、住民は首長に命を預けているつもりなどないだろう。けれど、あの3・11の状況を考えればよく分かる。いざなにかが起きた場合、首長の判断が、人々の命や安全に大きな影響を及ぼすことになる。それをまざまざと見せつけたのが「原発事故」でもあったのだ。(pp.45-46)

    就任して最初の方針説明で、保坂はこういうことを語った。

    ▼「行政の仕事とは継続です.日常業務は、だれが首長になろうと、同じようにこなしていかなければなりません。その意味で、これまでの区政の95パーセントは継続します。だから、どうか95パーセントは安心して従来どおりの仕事を続けていってください」「けれど、100パーセントがこれまでと同じということではありません。5パーセント分は、常に新しいことに取り組む領域を切りひらいていかなければなりません。その5パーセント分は、大胆に私の感覚で取り組ませていただきたい」(pp.48-49)

    そして、区長としての仕事のなかで、区長の最終了承を得るために上がってきた案件についても、必要と思えば、保坂は自分の意見をつけて現場に差し戻した。決裁ルートの逆流はこれまでほとんどなかったが、こうして保坂は、自分の方針を伝え、理解を求めていこうとした。

    ▼「一度決めたことは変えられない」という発想に対して、私は「そのままでいいのかな?」と緩やかな疑問を差し挟む。…状況の変化には柔軟に対応するべき。私はそのあたりの意識改革を職員の方々に求めていった。(p.54)

    世田谷での「超高線量放射線騒動(民家の床下にあったラジウム瓶から高線量が出ていた))」を経て、保坂は情報発信の大切さについて教訓を得る。

    ▼今回の原発事故対応で、電力会社や政府が誤ったのは、「情報の真偽を確かめる」「国民のパニックを防止する」などという理由で情報を抑え、結果として隠蔽し、或いは事態を楽観的に見る情報を流したりしたことだ。国民は正しい情報を得られればそれをもとに判断し、行動を取る。私が、今回の騒動で得た教訓である。
     そこで得た教訓はもう一つ。緊急時には、区長と職員との関係が問われる。火事を消すにはチームプレーが不可欠で一人だけ突出して走るわけにはいかない。行政組織を緊急事態に対応させていくには、分担と責任者を明確にして、正確な情報を共有して動くことが大切だ。職員一人ひとりの当事者意識を最大限発揮してもらうためには、指示もあいまいな点はただしてシンプルなものにするということだ。(p.63)

    「東京電力とのバトル」(4章)、「電気料金値上げのトリックを見破る」(5章)、「「世田谷電力」とエネルギーの地産地消」(6章)の話も、各自治体で何ができるのか、大きな電力会社はどんだけ横柄で恫喝的なのかがよくわかって、自分の住む自治体と関西電力のことなんかを考えながら読んだ。

    さいごの章の、無作為抽出した区民1200人に「ワールドカフェ」への案内状を送って、約1割の人が「参加してもいい」と返事、最終的には18歳から70歳までの90人が参加し、若手職員とともに「ワールドカフェ」で議論を深めた、というのがおもしろかった。

    ▼非常時に、結局、カギになるのはコミュニティーの力。しかし、この催しに参加している人たちの多くは、あまり町会や自治会との関わりを持っていなかった。地域の自治会などの大切さは分かるけれど、特定の人たちが親しくやっているようで、新たにはどうも入りづらい。どうすれば親しみやすいコミュニティーをつくることができるかが話題となる。(p.165)

    広報紙やチラシを見て申し込んでくるような人ではなく、無作為抽出した区民に呼びかけた中での1割の参加。おそらくこの人たちは、どこの自治体でもマジョリティであろう住人だと思う。そんな人たちとの区政やコミュニティについての話し合いが盛り上がったという話に、まだいくらでも人の力を掘りおこす可能性はあるんじゃないかと思えた。

    (2/11了)

  • 僕は東京都世田谷区在住ですが、
    2011年4月に世田谷区長に就任された
    保坂展人さんの著書です。

    僕は原則、政治家を褒めないことにしているのですが、保坂さんは例外。
    国会議員のころから注目していました。
    それはきっと、政治家として云々という前に、
    高校生(か、浪人生)のとき読んだ、
    『先生、涙をください!―学校からの緊急報告』
    に感動したから。

    http://ameblo.jp/nakahisashi/entry-11470122937.html

  • 保坂展人という人は教育問題をテーマにずっと闘ってきたジャーナリストで、ただ社民党から国会議員になったこともあって左寄りのイデオロギーの持ち主だと思っていた。自分が世田谷に住み、3.11とその後の原発事故を経験して、保守やや右寄りだと思っていた自分自身にも変化があった。脱原発をいち早く掲げ、区長になった後も東電の不誠実な対応と戦い続けている。世田谷電力を立ち上げ、住民との対話を積極的に行う区長の姿は新しい地方自治のあり方を示していると思う。支持していきたい。

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著者プロフィール

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり16年間の内申書裁判をたたかう。新宿高校定時制中退後、数十種類の仕事を経て教育問題を中心に追うジャーナリストに。子どもたちの間で広がった「元気印」は流行語に。1980〜90年代、世田谷区を拠点に教育問題に取り組むプロジェクトを展開。1996年衆議院初当選。衆議院議員を3期11年務め、総務省顧問を経て、2011年、世田谷区長となる。著書多数。

「2018年 『親子が幸せになる 子どもの学び大革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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