人間の居場所 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
3.81
  • (3)
  • (7)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 85
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208917

作品紹介・あらすじ

シリア難民、AKB、三里塚闘争、LGBT、暴力団、新宿ゴールデン街、子ども食堂、刑務所、イスラム国、磯釣り……。現代人の“生存"のヒントは、この小さな一冊の「アウトローの記録」にこそある!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アイドルの応援現場、ゴールデン街のバー、こども食堂、ヤクザ等々の居場所について、著者が自身の関わりを交えつつ書いたルポのようなエッセイのような一冊。現代アジール考といった趣。

    居場所について書いた本は「今は多くの人が居場所を失っている!なんとかしないと!」というスタンスのことが多い。この本にもそういう視点はあるが、単に肯定的には描かない。著者は個人主義的な考えが大きいようで、そういう居場所を冷めた、引いた視線でも見ている。そこがこの本の読みどころだと感じた。こども食堂について他の人が描いたら、肯定一辺倒だろう。

    中田考界隈について書いた話は、中東関係の記述が不勉強故によくわからないものの、えらてん、リサイクルショップとの関わりなど興味深く読んだ。

  • シリア難民、AKB、三里塚闘争、LGBT、暴力団、新宿ゴールデン街、子ども食堂、刑務所、イスラム国、釣り場。弱者や少数者や社会から外れた人々がそこに居る。その様子を描き出す。
    著者がその場の内にいるか外にいるかで論調が変わるのも居場所ゆえか。
    読み応えあり面白かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685656

  • いろいろな人間、価値観、コミュニティー、知らないことは沢山ある。
    作者は世間的にマイノリティーで、時によっては向き合うのを躊躇したくなるかもしれないところを含めた色々な人間とコミュニティーの存在と現状を本書で紹介してくれている。
    無理にそれらに真面目に向き合う必要は無い。ただそういった”多様性”の存在を知って、それに対しまず自分自身で考えていくことがすごく大事だと思った。浅はかな生理的な拒絶は稚拙以外何物でもない。

  •  新左翼活動家歴があり、現在は東京新聞のデスクをしている田原牧の著作。社会がおかしな方向に傾いて行く中で、少しでも「正気に戻れる」場所や、人とのつながりがテーマ。そうした場所は、社会のメジャーな価値観からすれば、正面から肯定されるようなものではないのかもしれないが、そのような胡乱な空間や人間関係があってこそ、人は世間の目や常識(あるいは権力)から、一歩引いて物事を考えることができる。特にそうした場所が衰退している現在でこそ、(具体的な)場所について、記述し、記録することの価値が出てくる。
     取り上げられている「場所」およびテーマは、アラブの春・秋葉原(AKB)、三里塚、「LGBT」、暴力団、新宿ゴールデン街、刑務所、シェアスペース、そして、釣り。

     こうした時に「居場所」というと、どこかフワフワした、良いもののような印象を受けるが、この本で意味しているものは、そうしたものではなく、いわば、病原菌の集まる巣のようなものである。得体の知れない雑菌や、あるいは虫が群れることで、日陰者の生活と文化を作り出すような様である。
     どの章も決して長くはない文章で構成されているのだが、しかし内容は非常に濃い。いわば贅肉のない、引き締まった文章なのだが、読んでいると思考がピリッとして、整理されるような感覚がある。
     
     この本は非常に興味深く読めたのだが、それは僕自身がこういう胡乱なる(うさんくさい)場所で価値観を涵養されたという意識があるからだ。社会が清潔な暴力を次々と展開していく中で、灰色の中間地帯から社会を睨めてきたのだ。
     僕自身の出自は単なるうんこミドルクラス家庭ではあるのだが、より価値観に強い影響を与えたのは、中途半端なエリート大学の日陰に巣食う肥沃な雑草地帯であり、必ずしも陽の当たらない胡乱なる仲間や大人たちである。そこを思い出せたような気がする。
     平板化する社会のあり方に、どこか息苦しさを覚えている人にとって、本書で描かれている「風景」は、刺激的なものとなるだろう。

  • 借りたもの。
    社会に翻弄され、つまはじきにされた人間たちの慟哭を集めたもの。
    「自己責任」という言葉でひとくくりにされ、偏見から社会の居場所を失った人々の集合体……それが社会の底辺(貧困、社会問題、社会の基盤、その全て)を作っている。

    グローバリズムは本来、「多様性を認める」という意味だったが、細分化されあまりに漠然とした世界は尺度を求め、結局そこから外れた者は抹殺される。
    それ故に、漠然と何かが「違う尺度」をあてがわれても、その毒まんじゅうを喰わざるを得ない。

    それは単発でふっと沸いたものではなく、連綿と続いてきたものであった。
    現代の社会問題が、そうしたものでできていることを――シリア人の祖国、AKB劇場、三里塚闘争、LGBTブーム、アジールとしての暴力団、新宿ゴールデン街のバー、子ども食堂、刑務所、イスラム法学者とその周辺、磯釣りなど――著者の視点から垣間見る。

  • 割と面白かったですが、少しアンダーすぎる感じが。
    東京新聞の記者でトランスジェンダーの著者が
    書いたいろいろな社会とその居場所について。
    もっと軽く生きている私ですが、心底では共感することも
    多々ありました。

  • AKB48の秋葉原の劇場、新宿ゴールデン街、三里塚闘争の小屋、磯釣りの浜辺、LGBTの運動、カリフ制再興を唱える日本人ムスリムとその周囲の人々、子供食堂、長期囚のいる刑務所、ヤクザ、シリア難民の避難先。誰かにとっての居場所が描かれる。「理解するのではなく、分からないことを大切にする。性は闇。それでいい。そのうえで違いを対等に認め合う。それが共生の前提である。」「銀河系という店には、暴力の匂いがあった(略)たとえ相手が何者だろうと馬鹿なこと言いやがったら殴るぞ、という姿勢があった。」

全8件中 1 - 8件を表示

田原牧の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×