ナポレオン 3 転落篇 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087444247

作品紹介・あらすじ

【祝!第24回司馬遼太郎賞(2020年度)受賞】

またたく間にヨーロッパの頂点へ上り詰めた男の栄光と凋落。
稀代の英雄の一代記、ここに完結!

諸国との戦争に破竹の勢いで勝利し続け、ヨーロッパをほぼ手中に収めたナポレオン。オーストリア皇女と再婚して跡継ぎにも恵まれ、絶頂期を迎えるが、酷寒の地・ロシアへの遠征に失敗し、対フランス同盟軍に追い詰められてゆく。
1814年、ついに退位を余儀なくされ、地中海に浮かぶエルバ島への追放が決まるが――。
「まだ私は終わりではない」。再起を懸け、男は最後の戦いに挑む!


【著者略歴】
佐藤賢一(さとう・けんいち)
1968年山形県鶴岡市生まれ。山形大学教育学部卒業後、東北大学大学院文学研究科で西洋史学を専攻。93年『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞を受賞。99年『王妃の離婚』で第121回直木賞を受賞。2014年『小説フランス革命』で第68回毎日出版文化賞特別賞を受賞。『ハンニバル戦争』『遺訓』『テンプル騎士団』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • フランス在任中はフォンテーヌブローに住んでいた。世界遺産の宮殿があり、ブルジョワの街。もともとはフランソワ1世の居城であるが、歴史的にはナポレオンの居城として、数多くのエピソードを持っている。有名なのは、ジョゼフィーヌと隣り合わせの部屋の間のドアを塗りこめて通れなくして離婚の布石を打ったり、ローマ教皇を幽閉的に住まわせたり。一番有名なのは、皇帝を退位してエルバ島に流されるときに、この宮殿から階段を下りて去っていったというエピソードが有名。訪問者を連れて何度も訪問した思い出があり、展示物も含め、ナポレオンはとても親近感のある人物。なので、個人的な関係もあるが、この大河小説、期待通りの素晴らしい出来栄えだと感じた。
    この長大な小説は、これらのナポレオンの生涯に渡るあらゆるエピソードを詳細に取り上げながら、佐藤さん特有のキャラ立ちと巧みなストーリー展開で、極めて魅力的なナポレオン像を打ち立てたことに特色がある。
    ナポレオンというと独裁者とか冷酷とかのイメージがあるが、佐藤さんにかかると、ナポレオンは天才肌ではあるが憎めない奴に大きく変わる。それは他の登場人物も同じで、サトケンワールドと呼ばれる面白さがある。
    多くの語るべきエピソードから1つだけ挙げるならば、エルバ島から脱出し、復位して決戦に臨んだワーテルローの闘いを挙げよう。この敗戦でナポレオンは歴史の舞台から姿を消すが、この最後の山場、なぜ負けたのかについて、佐藤さんの重要な考察にはとても驚いた。具体的には言えないが、人間ナポレオンの弱さを心痛く感じてしまった一瞬だった。
    年末年始、他の本も読みながら、約1ヶ月に及んでしまったが、貴重な読書体験ができ幸せだった。

  • 読んだ本 ナポレオン3転落篇 佐藤賢一 20240204
     約1か月かけて、全三巻読了。充実した時間になりました。
     これまでの感想と同様、ナポレオンという人物の矮小さを描くことで、ナポレオンという人が歩んだ軌跡を身近に感じさせて、単に歴史を追うだけの歴史小説ではなくなってます。
     しかし、離婚しないのも離婚するのも自己中心的だし、周辺地域を併合するのもただの傲慢だし、ナポレオンの人生がこのような英雄譚になった幸運が重なった偶然のようにも思えてくる。
     でも、皇帝の位を剝奪されてエルベ島に流されるシーン。絶頂からどん底に落とされた残酷なシーンも、ナポレオンの恥を顧みないなりふり構わなさが滑稽で、救われた感じでした。
     これが、フランス革命から続く歴史だとしたら、外国に捌かれたためか、ギロチンではなく流罪で済んだのもよかったな。
     しかし、また王政に戻り、それが覆され、この後のフランスもどう決着したのか気になります。
     ちなみに、今朝、映画のナポレオンをもう一度観に行ってきました。行きの電車で読み終えて映画に臨む。前回全然理解してなかったことが判明しました。そりゃ1か月かけて読む本と3時間弱の映画では情報量違いますよね。解釈なのかもしれませんが、大分エピソードも簡略化されてたし。

  • ナポレオンに寄り添う視点が時に響いてくるし、時に臨場感が伝わってくる。phenomenon。フランスでは差し詰め、坂本龍馬のような存在か。
    帝王でありながら、前線で指揮をとる。こんな英雄、もう居ない。
    フランス革命と、レ・ミゼラブルなどと比較しながら読むと、フランスの激動期が多角的に理解出来そう。

  • ナポレオンの生涯の最終盤。
    前巻までの飛躍が一転、政治生命に転落が訪れる。
    ナポレオンが皇帝の地位を確かなものにするためにジョゼフィーヌと離婚、オーストリアから皇妃を迎え、子にも恵まれる。
    しかし、ロシア遠征でモスクワまで攻め登るも、モスクワの大火のため、退却することに。退却途中にロシア軍から攻め立てられ、敗北を喫する。
    それを機に皇帝位を奪われるも、その後の王政復古の政権も長く持たず、ナポレオンは再度皇帝位につくことに。
    近隣諸国との戦争を戦うが、ワーテルローの戦いで負け、フランス皇帝の地位を退位させられる。その後はイギリス亡命を試みるも、イギリス領セント・ヘレナ島に送られその生涯を終える。

    波瀾万丈で、浮き沈みの激しい人生である。偉人の中でもさらに異色の経歴、業績を残した人物なのだと知った。

  • 戦争ばっかりやってればいつかは負けるしな。それにしてもソーゼツな人生だったんだな。何を目指していたのかはわからないけれども。

  • 素晴らしい物語
    凄い人物がいた

  • 百日天下で復権したナポレオンはフーシェに「息災でしたか」と尋ねる。これに対してフーシェは「息災でしたとお答えしたいのは山々ながら」と答えた。
    世の中には「息災でしたか」と質問されると現実はどうであれ、「息災でした」と答えることが無難であり、社交辞令というような「常識」がある。それを無視するフーシェは、それなりの人物である。この点ではフーシェという人物に対して好感を持つことができる。
    この前にフーシェはナポレオンによって辞職させられている。ナポレオンが「息災でしたか」と尋ねること自体が馬鹿にした話である。「息災でしたか」と尋ねることは「私はあなたを侮辱していますよ」というサインと変わらない。このようなことをするからこそ、フーシェもナポレオンを嫌いになったのだろう。フーシェは百日天下の後にナポレオンを退位させて臨時政府首班となり、ナポレオンをフランスから追い出した。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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