いねむり先生 (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450996

感想・レビュー・書評

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  • “サブローくん”の“先生”に対する愛情のフィルターが心地よくて、読んでいると暖かい春の日にそよ風が吹いているような感じを覚えます。
    阿佐田哲也氏の本をまた読み返したくもなりますが、心地よさが懐かしくなってまたこの本に帰ってきそうな気も。汐湯の後、ベンチで居眠りしている「あんな風な先生」の方が私も好きです。

  • 20140517 作家の再生の物語。感性が合うかどうかで肩透かしされた気になるかも知れない。静かだけど激動しているような感じ。

  • 著者の自伝的小説。
    最愛の人を亡くした「ボク」は、酒とギャンブルに溺れ、自暴自棄の日々を送っていた。
    そんな中で出会った「先生」は、ギャンブルの神様と呼ばれる作家。
    「先生」に誘われ一緒に「旅打ち」に出かけるようになる。そこで描かれる二人の友情が、とても切なくて優しくて、温かい。

    奇妙・チャーミング・子供みたいな不思議な「先生」は、全てを寛容に受入れて認める愛深い人。
    優しくて純粋な眼差しでそっと、絶望から抜け出せない「ボク」を包み込んでくれた。
    「先生」との出会いで「ボク」は生きる気力を取り戻しはじめる。

    言葉少なくとも存在する信頼関係と互いの想いやりが、行間からもにじみ出ている。
    痛みをわかってくれる懐の深い情愛。じんわりと癒されます。

    「先生」(色川武大/阿佐田哲也)の作品も読んでみたくなりました。

  • これほど人が人を敬愛することなんてあるんだろうか?というくらい深い絆を感じさせる作品だった。自分はなかなか年上の人を尊敬する気持ちになれない。素直に「ありがとう」と言えない。この作品を読んで、もっと人を好きならないと人生がつまらなくなる、と思えた。

  • 私小説を初めて面白く読んだ気がする。阿佐田哲也の魅力と、文章の魅力、両方いいなあ。他の方が書かれた阿佐田哲也も読んでみたい。

    (飛行機の中に置き忘れてきたが、読み終わったところで良かった)

  • 僕はギャンブルをやりません。すごく弱いんですよ。パチンコも麻雀も、少しやってみたのですがビギナーズラックすらなくて、まったく勝てる気がしないんで、ハマらずに済んでいます。

    で、博打打ちの話にはどこか憧れを抱いてしまうのです。自分にはないスケールの大きさとか大胆さとか。なんか自分がつまらない人間のような気持ちにもなるんですけどね。

    妻を亡くした「ボク」は精神を病み、アルコールとギャンブルに溺れ、小説を書くのも辞めてしまいます。そんな時に出会った「先生」〜あの阿佐田哲也その人なんですが〜の魅力に惹かれていき、やがて二人で「旅打ち」と呼ばれる博打旅に出かけるようになります。その中で次第に明かされる「先生」の心の傷。同じ傷を抱えた二人はギャンブルの旅の中で癒しあっているような、哀しさとあたたかさがじんわりと伝わってきます。

    久しぶりに、小説で心をぐっと掴まれた気がします。

    僕の故郷の街の競輪場が出てくる場面もあり、そこの食堂の女将の一言が懐かしい尾張弁で。こういうの、ちょっと嬉しいですね。

    読後感がとてもいい小説でした。

  • 色川作品読みたくなった

  • 妻に若く先立たれ、アル中になった主人公がギャンブルの神様(いねむり先生)に会い、心の交流を持つことで、立ち直っていく話。

    あまりこの著者の書は好きではないが、素晴らしいと思った一冊。

    死と再生の物語だと感じる。
    人生どんな所に落とし穴が待ち受けているが、分からないがまたひょんな事でも再生のきっかけになるし、助けてくれる人も表れるとも。

    先生の言葉、慰めにならないこともない。「人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。人は寿命で亡くなるそうです。」

  • こういう世界とはほぼ無縁。無頼というか・・・そういう感覚を持った人の独特の感性が、ギャンブルや芸能、音楽、小説、美食などに向いた才能であり、仲間をかぎ分ける能力のとても高い人たちなのだろう

    それにしても、いねむり先生の人を引き付ける魅力はどこから来るのだろう。心底からの優しさ、憎めない愛嬌・・・お世辞にも美しいルックスとは言えないいねむり先生の不思議な魅力に、狐につままれたような感覚の中で読了した

  • 打算的ではない男同士の友情物語っていいなぁと思いました。私には経験のない「賭けごと」を介して、気持ちが通じて悲しみがだんだんと癒されていくというところが新鮮でした。考えてみれば、お金の絡んだ勝ち負けの世界なのにそこで友情が成立するっていうのは不思議です。ただ私は、保守的なのでこの本を読みながら借金してまでそれをやる友達のことは止めなきゃ!と心の片隅で心配な気持ちになりながら読んでいました。自伝的小説で実在の人物たちがモデルのようですが、先生のモデル色川武大さんのことも著者のことも詳しくは知らないためかえって純粋に読めました。

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著者プロフィール

1950年山口県生まれ。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞、’14年『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』で司馬遼太郎賞をそれぞれ受賞する。’16年紫綬褒章を受章。著書に『三年坂』『白秋』『海峡』『春雷』『岬へ』『駅までの道をおしえて』『ぼくのボールが君に届けば』『いねむり先生』、『琥珀の夢 小説 鳥井信治郎』『いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯』、エッセイ集『大人のカタチを語ろう』「大人の流儀」シリーズなどがある。

「2023年 『ミチクサ先生(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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