天に堕ちる (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.23
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本棚登録 : 624
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451207

作品紹介・あらすじ

出張ホストを買う独身女、自殺願望を持つ風俗嬢、8人の女性と共同生活を送る中年男性に安らぎを覚える女ほか、平凡な幸せを求めるだけなのに、歯車がずれてしまう10人を描く短編集。(解説/山内マリコ)

感想・レビュー・書評

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  • ときどき読みたくなる唯川恵さん。
    どろどろした感情を書かせたら一番だと思う。

    誰かを不幸にしている(意識無意識関係なく)人間の
    救いのない話ばかり。
    特にカウンセリングの話がおもしろかった。
    その他も最後のページで「!?!?」となるどんでん返しばかり。

    もやはこれミステリーにカウントしてもいいのかも。

    ミステリー好きにもおすすめ。

    でもこういうどんでん返しもの、オチが読めていても再読したいものと、オチ知ってるからもう一回よめばいいやってなるものがあって、これは残念ながら後者なんだよなぁ。だから星2つ。
    なぜかしら…。

  • 10人の様々な恋愛を描く短編集。
    ホストに嵌まったり、男への依存、遠慮、欲情…誰もがふと考えたり経験したりしたことがあるような場面。
    だから、余計に面白いのかもしれない。

    2015.8.16

  • 自分から逸脱の道を選ぶ女性が主人公の10の短編集。幸福のあり方も様々で、その選択の経過が上手く描かれている。

  • 5 和美 ・・・白いシーツの上で がオチが非現実的だけど、強烈。
    中学・高校時代の保健室の情景を思い出しました。

  • 誰もが持つブラックな内面に焦点を当てた短編集。『病む月』辺りを思わせる怖さもあり、それでいて読みながら主人公たちにどこか共感してしまう。
    『天に堕ちる』というタイトルが秀逸だと感じる。正江や光、黎子は例外だが、他の皆は良からぬ場所に落ちているようでいて、その実幸福を手にしているからだ。

    ■りつ子……高級住宅街にあるクリーニング店で働きながら、客からの預かり物を勝手に身につけ虚飾の自分を作って出張ホストに会う。平坦な毎日に刺激を求めた結果に待ち受ける、甘いささやきと罠。りつ子は、破滅を覚悟でわざとそこにハマる。
    ■正江……娘夫婦から、いいように家政婦扱いされる日々。娘の夫の優しさに触れ、自分の老いに改めて気づき、一人涙を流す。本書には少ないハッピーエンドで良かった。
    ■茉莉……「セックスでもない、きれいでもない、お金でもない、こころ」という言葉が残酷に響く。
    ■可世子……2006年に発覚した「東大和市一夫多妻男事件」を思わせる共同生活の話。可世子の視点で読んでいると、「あれ?これはこれで、幸せなんじゃないのかな」と思えてきてしまう。危ない。
    ■和美……34歳養護教諭の和美と、保健室の常連である中学2年生の雅也の、秘められた恋。和美の最後の勤務日に雅也が保健室にやってくる場面には、最高に切なくなった。ここで終わる物語だったら、ごく普通の綺麗な青春ストーリーなのだが、ラストのオチがいい。ここで突然、野島伸司原作のTBS夜10時のドラマから、ドロッドロの昼ドラに変わってしまったかのような、ある意味どんでん返し。
    ■汐里……売れっ子イラストレーターの主人公と、絵のことなどまったくわからない技術者の夫。解説で山内マリコ氏が「いちばんのめり込めた」と評する作品だが、私は汐里の夫への不快感しか持てなかった(という意味で、のめり込んでいるのかもしれないが)。身勝手さにも腹が立ったし、一番酷いと思ったのが、プロである汐里に「上司から頼まれたから」と平気でただ働きさせたこと。しかし実際、クリエイターの生み出すものの価値をわかっていない人は多い。ありがちな普通の人なのだろう。最後は胸がスカッとした。
    ■奈々美……アイドルのマキトの追っかけをする日々。追っかけはしたことがないけれど、あるバンドのライヴに通っていたことがあるからわかってしまうこの感覚。自分の人生においておそらく何の意味もないだろうに、そのときはそれが一番大事になってしまうものなんですよね。それくらい夢中になれるのは幸せなことでもある。中毒みたいなものかと。
    ■光……子供の頃は優秀だったのに、高校で落ちこぼれて、職を点々としながら、ネカマとして男を釣ってはストレス解消する日々。序盤からオチが見えてしまった作品。かわいそうだが、自業自得か。
    ■黎子……その美貌と演技力でのし上がってきた大女優の黎子。仕事と保身のために身体を売るのも演技のうち、自分の人生すらも仕事のために利用する、その女優魂は天晴れ。バカ息子だけは演技力でどうにもならなかった。
    ■妙子……勤務先の美容院の閉店が決まり、転職先が見つからない妙子に、店主は職の代わりに結婚相手を紹介。順調な交際を経て、結婚に向けて準備を進めるが、問題は妙子が自宅に住まわせている倫太郎の存在だった……。これも、オチが見えていたものの、面白かった。「妙子が夫ではなく倫太郎としか本気で性欲をみなぎらせられない」というのはいかにも。

  • 再読。
    どの話も面白い。
    やはりアイドルの追っかけ「奈々美」の話が一番面白かった。

    2013.11.5
    再読。
    唯川さんの短編集最高傑作。
    どの話も面白い。
    一番好きなのはアイドルの追っかけ「奈々美」、たった数秒アイドルを見るために普通の高校生生活を捨ててしまう心情。よく調べていると思う。
    出張ホストにはまる「りつ子」、男に尽くしては振られる「茉莉」、中年男性と八人の女と同居生活・ハーレムに安らぎを見いだす「加世子」など、皆、地獄ではなく「天」に堕ちる幸せな女達の物語。

    2012.4.25
    面白かった。面白かった。
    様々な女性を描いた短編集。
    よくあるストーリーで、結末も予想どおりなんだが、それでも面白い。
    お気に入りは、出張ホストにはまる「りつ子」、男に尽くしては振られる「茉莉」、アイドルの追っかけ高校生「奈々美」、息子を溺愛する有名女優「黎子」。

  • なんともバカな人たちのバカなお話

    でも、どんな人の中にもあるんだよね
    ただ、みんな表に出さずにいるだけって感じにさせる
    最後のおちが笑える

  • 祝文庫化

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    「出張ホストを買う独身女、自殺願望を持つ風俗嬢、8人の女性と共同生活を送る中年男性に安らぎを覚える女ほか、平凡な幸せを求めるだけなのに、歯車がずれてしまう10人を描く短編集。(解説/山内マリコ) 」

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    出張ホストを買う孤独な女・りつ子。自殺願望のある風俗嬢・茉莉。八人の女と同居する中年男に安らぎを求める可世子。アイドルのおっかけに夢中の高校生・奈々美。女になりすましてメールを書く淋しい青年・光。息子を溺愛する有名女優・黎子――。
    人間の心の明と暗、優しさと毒、安らぎと恐怖、それらはどれも隣り合わせにある。だから人は、ほんのささいなきっかけで足を滑らせる。
    10人の人間たちの人生がゆがむ一瞬を見事に切り取った連作短編集。直木賞・柴田錬三郎賞を受賞した恋愛小説の名手による、新しい傑作です!

    編集者からのおすすめ情報
    「この中の誰かに、自分も似ている」、あるいは「この中の誰もが、自分に似ている」、ゲラを読み返し読み返ししながら、そんな錯覚にとらわれました。
    人生の成功と失敗、幸福と不幸は、ほんの紙一重なのだということを、「年齢」でなく「経験」を重ねた大人ほど、実感するものだ。そう感じました。
    唯川恵という一人の作家の凄みが実感できる一冊です!」

  • 保健室の先生の話が1番ドキッとしたなあ。こんな短い話で色々な女性が描けるのがすごい。最初から最後まで面白かった。

  • 10人の様々な事情を抱えた女たちの話。
    ゾッとする話、考えさせられる話、スッキリする話、いろんなタイプの話がまとまっていて次はどんな結末なのかと考えるのが楽しかった。
    比較的、ゾッとする話が多かった。茉莉、可世子、和美が好きな話だった。
    茉莉のカウンセラーは、本当にカウンセラーとして成り立っているのだろうか。行ったことがないため、あのカウンセリングが正解かどうかはをわからないが、次の依存先を見つけた茉莉の狂気さにゾッとした。
    可世子の話は、ふーさんはほぼ教祖だと思った。そんなふうには書かれていないし、本人たちもそう思っていないけど冷静に見ると一種の宗教団体に見えた。
    和美の話は続きがすごく気になった。

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