雷神の筒 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087464214

感想・レビュー・書評

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  • 織田信長のもとで鉄砲隊をつくり、天下統一をたすけた橋本一巴の生涯が書かれた作品。
    鉄砲に魅せられ、鉄砲を極め、鉄砲に人生を捧げた男の話だが、鉄砲の話だけではなく、夫婦間の絆の深さがつたわる部分がすばらしいと思った。

  • 「火天の城」に続いての一冊。信長に仕える主人公が瀕死の重傷をおい、息子から最終的には尊敬される。
    周りの人間があっさりと死んでしまう。
    この辺が共通点か?
    物語そのものはリアリティがあり、いい意味で愚直な男の生き様が心地良い。

  • 鉄砲に興味がなくても戦国時代が好きなら楽しく読めます。
    有名じゃない人にスポットをあててるので新鮮味があります。
    悪い信長がでてくる。

  • 語り口は読み易い。鉄砲が主力となっていく戦国の世の趨勢を、経済や資源などを絡めて描写していく様子に、なるほどと思わされた。
    けれど、作者の高みからの視点が主人公に反映されすぎている。その時代の人物としてのリアリティがなく、感情移入出来なかった。

  • 鉄砲に魅せられ、その魔力に取りつかれた男「橋本一巴」
    まだその頃、山のものとも、海のものとも知れなかった
    織田信長にその威力を教え、かの有名な信長の鉄砲隊を作り上げる

    「鉄砲は民の平和のために使うべきだ」とする一巴と、
    覇王への道を進む信長の間はだんだんと離れてゆく

    うとまれながらも、信長から離れることのできない主人公の苦悩を描いた戦国もの。

    苦手なジャンルなのに、すんなり入り込め
    一気に読めました。
    いやみのない文章で平易ながら迫力あります

  •  なんかやっぱり似ているよな。「火天の城」であり、「いっしん虎徹」であり。築城、刀剣、鉄砲と対象は違え、それぞれの男の生きざまは驚くほどよく似ている。同じ景色を連続して見せられれば、どんな絶景だとて飽きてしまう。なんだかなあという読後感もそこから来るのだろう。
     本書が悪いというのではもちろんない。ここから山本兼一を読み始めた人は瞠目してとりこになるだろう。それくらいストーリーはおもしろく、史料に乏しい伝説の人物をここまで生き生きと躍動させる手腕の見事さにはうなるしかない。雑賀孫市との交流はまったくのフィクションだろうけど、物語に欠くべからざるエピソードとしてうまく効いているし、織田信長のかくもあらんという描写などもうますぎる。
     だから続けざまに作品を読みあさる読み方のほうが問題なのかもしれない。だけど、気に入った著者の別の作品があったら普通はもう一つ読んでみるかと思うものだろう。そう考えたら、このマンネリ感は厳しいことをいえば著者の間口の狭さ以外の何物でもない。佐藤雅美についても同じようなことを書いたけれど、多作家にしてそれぞれ目先を変えておもしろく読ませるテクニックというのは、並大抵のものではないのだということがよくわかる。

  • 全1巻。
    信長の鉄砲隊を作り上げた
    マイナーな人の話。

    火天の城の著者。
    あいかわらずあらすじだけだと読む気がしない
    どマイナーな人物が主人公。
    信長に仕える職人的人物ってとこは
    火天の城と似てる。

    ただ、信長像が逆。
    火天の信長は恐ろしいけど颯爽とした、
    どっちかっていうと気持ちいい信長。
    こっちの信長は冷酷で非常。
    読んでてそこまでせんでもってくらい
    主人公にキツい。
    理不尽に。
    対職人か、対武将って差があるのかもしれんけど。

    だから、物語がだんだんと切なくなってくる。
    冒頭数ページの主人公のエネルギッシュな人物像とか、
    信長との関係性とか、
    凄く気持ちよくてぐいぐい引き込んで来るんだけど、
    だんだん主人公が理不尽な感じで嫌われてきて
    冒頭からは予想外な達観した人物像に変わってく。

    あんまり気持ちの良い切なさではないけれど、
    それでもぐいぐい最後まで読ませる腕はさすが。
    結局おもしろかった。
    読み終わり感はむくわれないけど。

    織田配下の名だたる武将達と同等
    もしくは先輩な主人公視点だったり、
    鉄砲そのものはもちろん、
    鉄砲打つための火薬の調達の難しさって視点は
    は新鮮だった。

  •  橋本一巴。信長の鉄砲の師匠にして鉄砲隊の頭を務めた男。著者の信長三部作の完結編になる。

     これだけ織田信長は有名にも関わらず橋本一巴は全然知らなかった。そもそも初期信長を鉄砲で支え、鉄砲を利用した兵法を工夫していったのに全く論功行賞から洩れてしまうという気骨(多分気骨でいいと思うが)にあふれた人物像になっている。

     この小説は信長の天下取りに必要になったもの「鉄砲」が主人公だ。そして鉄砲をあらゆる意味で兵器に育て兵器としての鉄砲の使い方(戦略)を気づいて行った橋本一巴の物語だ。

     火天の城は安土築城を通して信長の天下取りの政治的視点を鮮やかに描いている。この作品は鉄砲戦術を通して天下取りの武略的視点を克明にしようとしている。摂津会戦での大筒の存在、長篠の戦いでの三段打ちと実行方法などだ。そして鉄砲が従来の戦よりも明確な意思の元、信長の元では使われたことを意識させてくれる。

     新しい(平和な)世を作るための道具だ。

     さらに一巴は信長に嫌われつつも自分の鉄砲放ちとしての信念を曲げなかった。「私のために撃たない」だ。単なる殺戮の道具ではないという自負からでた信念だ。

     前作より信長と鉄砲の関係が薄い分、橋本一巴が目立つがやはり主役になるだけの人物描写かというと今一つだった。安土築城と炎上は信長という天下布武の過程だったから迫力があった。天下取りの過程で戦から遠ざかっていくのでどうしても鉄砲という現場の産物は意味が薄くなってしまう。

  •  この小説は織田信長の鉄砲の師であり、織田家の鉄砲衆の頭であった橋本一巴の物語だ。信長の戦術として鉄砲は欠かせない。種子島に鉄砲が伝来して以降、鉄砲が実践で使われることになる経緯などは史実に基づいている。

     橋本一巴に関する詳細は作者の創作とのこと、人情に厚く義理堅い一巴と冷血漢で現実主義を貫く信長の対比は、明暗がはっきりしていて面白い。あまり歴史の上ではスポットが当たらない人が主役だが、鉄砲衆の頭という当時の最先端を担った武将を取り上げ、興味深くまた面白く読ませる。

  • 実在した信長の鉄砲師匠、橋本一巴を主人公にした歴史小説です。
    実在の人物とはいえ、ほとんど足跡の判らない人なので、相当脚色してあります。例えば楽市楽座の献策とか、武田信玄の突然死は一巴の狙撃によるものだったとか、村上水軍による石山本願寺の補給路を断った鉄甲張り大船の献策とか。
    しかし、この作品の一巴は信長の寵臣などではなく、その独自の世界観から、むしろ信長に憎まれ疎まれながらも仕え続ける侍です。
    「女たちが安んじて恋をし、安んじて子を産める世界」を作るために鉄砲を使う。その一巴の考えは、やがて信長と言う大きな渦に巻き込まれ、単に戦いの相手を効率良く殺戮するための武器に変質して行きます。
    このあたりの苦悩やそこでの決断が上手く描けたら、もう一つ大きな作品になったはずと考えると少し残念です。
    とはいえ、本格的で読み応えのある歴史小説でした。

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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