魚神 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1197
感想 : 135
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087467864

作品紹介・あらすじ

かつて一大遊郭が栄えた、閉ざされた島。独自の文化が息づく島で、美貌の姉弟・白亜とスケキヨは互いのみを拠りどころに生きてきた。しかし年頃になったふたりは離れ離れに売られてしまう。月日が流れ、島随一の遊女となった白亜は、スケキヨの気配を感じながらも再会を果たせずにいた。強く惹きあうがゆえに拒絶を恐れて近づけない姉弟。互いを求めるふたりの運命が島の雷魚伝説と交錯し…。第21回小説すばる新人賞、第37回泉鏡花文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • こうゆうお話好きだ...となった作品です。
    蓮沼のキャラ良すぎるな
    スケキヨは欲を言うならもう少し掘り下げて欲しかったなという感じです。そしたらもっともっっと素晴らしい作品になったのに!と個人的に思いました。

  • 閉塞感と名付けるにはあまりにも残酷なのに、汚さを感じさせず世界が描かれていました。

    「時間や生活、悩み、葛藤、矛盾、一切のものからふっと一瞬離れていける。」
    「どうして私達は試されなければならないのかしらね。」

  • 遊郭の島、閉ざされた島で、生きる姉弟、白亜とスケキヨ。互いを存在意義として生きている二人のたどり着く先は?というお話。

    世界観、舞台設定、吉原的、時代設定とか、どこでもないけど、どっかにありそうな既視感、好き。
    表紙とタイトルに惹かれて、衝動買い。

    白亜目線からの語りなので、スケキヨの存在と正体がハッキリしていない。
    でもそれが不思議で謎めいていて、ついついページ捲ってしまう。面白い。
    結局、彼は雷魚の化身だったりするのか?
    タイトルの「魚神」が、効いてくる展開になっていてよき。
    二人の互いへの執着、特にスケキヨから白亜への想いが、読者み含めて周囲にはバレバレなのに、白亜にはさっぱり伝わってないのがもどかしいと感じつつ良い。
    蓮沼の「子どもなんだな」という表現がピッタリ。納得。
    だからこそ美しく映るし、残酷でもある。
    そういう関係性を描き出しているのがとても面白い。
    綺麗だった。耽美、っていうのかな?こういうの。

    ところで、蓮沼、好き。
    白亜が彼を選んだのは非常に好感がもてた。
    最後まで格好良かったし。
    二人の未来に光がないのは明白で、その闇に白亜を巻き込まないように自分だけで死を選ぶ姿に、男の美学を感じたわ。
    冷酷な面も含めて、一種カリスマ性がたまらないです。昔の任侠映画とかにいっぱいいたタイプの人。
    ホント、嫌いじゃない。

    蓼原、生きてて良かった。
    いっぱい死亡フラグたっていて、気が気じゃなかったわ。

    しかし、これはハッピーエンドじゃないんだろうね、、、スケキヨが白亜を取り戻すまでのお話なんだろうな。

  • ファンタジー遊郭&イケメン無罪で−5,000点のところを健気な船漕ぎと健気なキッズと緻密な描写、あと表紙で+になる感じの短編だったよ。
    何処にも行けなさというのはここ15年くらいずっとトレンドね

  • なんとも不思議な話。だいたいこういう話は苦手なんだけど、なんとまぁこの話は苦手じゃない。

    舞台は遊郭島。しかも吉原のようなきらびやかな世界ではなく、どちらかというと売春島みたいな後ろ暗い雰囲気。
    話も殺人があったり目潰してたり最後は気が触れたり、途中が全然ハッピーじゃなく割と暗いんですよ。
    なのにこの話、なんか清らかさみたいなものがあるんですよね。
    不思議〜!
    主人公・白亜が清廉潔白って訳ではないし、スケキヨも暴力性があってやっぱり違う。

    時代設定もなんとも不思議。
    現代のようでもあり、江戸時代とかでもおかしくなさそう。
    それが違和感なくこの話の中に存在しているんですよね〜。加減が絶妙なんだろうな。

    こんな形ではあるけど、きっとあの二人の間に存在するのは姉弟愛の以上でも以下でもない気がした。
    決して恋愛ではない。
    でも切っても切れない、とても強固な愛。(これもまた不思議ポイントでした。)


    @手持ち本

  • 読者に委ねる部分の多い本に感じました。今の私ではその期待に応えきれていないように思うので、いつか再読したい。

    白亜とスケキヨにかぎらず、相手に向ける感情が重たく特別であればあるほど、感情のままに行動できない。そこになんともいえないかなしさと、色気を感じました。その中で、ただひとり子どものハナが新笠のために蓮沼に立ち向かう姿が鮮烈でした。幼い白亜とスケキヨが互いのためなら何も恐れなかったように、がむしゃらに動けたハナを見て、白亜はどう思ったのでしょうか。

    後半の白亜と蓮沼のやりとりにはしびれました。白亜にとって、特別はスケキヨただひとりなのだろうけれど、蓮沼の存在も無視できないもので、そこにはたしかな情があったのだろうと思いました。

  • 千早さんは香りと不思議な少年を題材にするのが好きですね。らしさ全開の一冊。

  • 圧倒されるカバーが印象が強くて手に取りました。序盤はファンタジーを思わせるような展開でしたが…これはミステリーなのでは?容赦ない表現もありますが、読みやすくてどんどん引き込まれてしまいます。欲を言えば、主人公以外のエピソードが物足りなかったです。

  • 著者の文章表現が一定水準以上であることは分かるのだが、その技術を弄する感がして好意を持てなかった。描きすぎで行間が薄いのが残念だ。

  • 【2023年150冊目】
    鮮烈なデビュー作ですねぇ…。ありそうだけれど、実際にはない架空の世界。そこで紡ぎ出される白亜を中心とした物語。

    登場時から、おっ、て思ってましたが、やはり蓮沼、好きになるキャラクターでした。こういう役どころはずるい。かっこよすぎる。後半になるにつれ、一言一言がぐさぐさ刺さる。命の炎が激しい。

    スケキヨは、あの、とりあえず名前、なんでこれにしちゃったんだろうという思いが。完全にあの一家がチラつきました。ほとんど出てこないのに、印象の強い人物ですが、好きか嫌いかを聞かれるとよくわからない感じでしたね。

    しかし、本来であれば白亜の強い感情の向かう先がストレートにスケキヨに行きそうなものなのに、そうじゃなくて蓮沼という登場人物に向かったところが、刺さりました、深く、私に。

    首絞めはあれかな…そういう性癖が生まれちゃったのかな、ちょっとそこはよくわからなかったですが。

    鮮烈、でした。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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