娼年 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087476941

感想・レビュー・書評

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  • 男性が女性に身体を売り、女性の様々な欲望から見えてくる人間像や価値観が新鮮だった。それはアダルトビデオに見られるような男性優位の世界ではなく、女性の欲望を満たす世界を石田衣良のキレイな言葉遣いで描かれている。
    こういう仕事は汚れているという常識がどこかにあり、少し嫌悪感あるシーンもあったが、そもそもこの感情の出処は何か。
    愛すべき男性と女性がセックスをするのが普通と思い込んでいたが、そもそもこの「普通」の価値観は何だろう。性に対して閉鎖的な日本でこの普通からはみ出したものは異常と見なされるのか。それは言い換えると性という根本的な欲求を見ずに人間を語ろうとしているようにしか思えない。
    主人公が不特定多数の人とセックスをすることで見える人間の欲望に呆れつつも、それは人の生き方の表現にも見えた。
    性から見える生き方を考えてしまう一冊だった。

  • 再読本。
    人それぞれの欲望の形。
    表面上は抑えている内側の欲望を露に描き、それに寄り添う主人公の優しさ。
    性的描写が多いながらも、登場人物達の心の動きを捉えた描写。そして、どこか美しさを感じさせる文体は見事と思う。

  • 映画版上映キャンペーンで漫画版の第一巻が期間限定無料になっていた。それを読んで、原作を購入した(電子版)。石田衣良さんは私にとって未知の作家さんだ。

    男娼、現実には非合法な商売だ。大学にロクに行かず、バーでバイトしているリョウのところに、知り合いのホストが女性客を連れてくる。女性客を分析するリョウに、随分冷めた目をしているなと思った。私がリョウくらいの年に行ったバーのバーテンダーさんは、もっとにこやかだった。一緒に行った友だちが明るくてにこやかだったからだろうか。

    女性客は、デート相手のホストより、リョウに興味を持ち、男娼としてスカウトする。そこからリョウの男娼生活が始まる。バーテンダーよりそちらの仕事に熱心になったのは、リョウの性格に合っていたからだろうか。

    癖は人ぞれぞれだ。特に、性癖となると公にされないから、知りようがない。それでも男性の性癖は女性のそれよりも表に出ることが多いかもしれない。それにこの小説で語られるのは、性癖と括るにはちょっと語弊がありそうな事例もある。長い時間我慢した後、人目にさらしながらの排せつで、(セックスよりも)エクスタシーを感じたり、男娼に抱いてもらうことで亡くなった夫の魂とデートするとか、セックスの上手い下手よりも、リョウの性格とか雰囲気とかが、女性たちの心を安心させて得られる結果のような気もする。

    他の人たちも書いているように、性描写が生生しいので、最初はどきどきしたが、読み進むうちに、人の心の動きの方が気になるようになった。快楽を得るには、どれだけ心を解放できるかにもかかっているとも思うし、いろんな悩みを抱えている女性もいるのだと、ちょっぴりココロ安まる気もした。

    実際には非合法な仕事だし、本当にこんな仕事をしている人がいたにしても、一般人に払える料金ではないのだろうなぁ。そういえば、カナダにはここ数年、Sexologueという職業が出現したが、たぶん医学の知識がいるとともに、心理学も大きく関わっているのだろうと、この小説を読みながら想像していた。

  • 見ず知らずの年上の女性と短いデートをする、その短い時間でどのくらい相手の女性を喜ばせることができるか。
    彼は娼夫になり自由になったという。外見、年齢、性別、仕事で判断せず、その人の話をきちんと聞くまで判断は保留する。
    耳を澄ますと、その人の秘密の欲望は、その人の傷ついてるところや弱いとこかにある。
    そう考えると、彼の娼夫という仕事は、すごく優しいのかもしれない。

  • 最高。
    綺麗な18禁って感じで、憧れさえ抱く世界観。
    早く逝年読みたいし、爽年も読みたい。
    1行ずつ丁寧に読み進めたくなるし、
    世界に引き込まれていってしまう。

  • 人間の欲望の真理が見えた気がした。

    欲はすてきなもので、それはどんな形でもよい。セックスはその人を理解する手っ取り早い手段なのかもしれない。
    誰にも内向きに隠している姿はあって、どこかでそれを見せたくてたまらない。自分の隠している部分を決して全員に知らせる必要はないし、知ってもらう相手が親しい仲である必要もない。それを開放する手段の一つとしてセックスはある。

    歳をとるってすてきなことだ。私も色んな欲を持った人間でありたい

  • 先に映画を見てしまいました。あまりの衝撃に、原作はどうなってるのか、あのシーンはどのような表現をされているのかなど、気になって読まずにはいられませんでした。

    実際、本の方がマイルドに感じましたが。

    リョウくんがしている仕事の内容は問題あるかもしれないけれど、対人関係の仕事をしている人はとても参考になるのではと思いました。相手が何を望んでいるのか、本人にも気づけていない欲求を探り出し、それを満たしてあげることこそ究極の接客。
    リョウくんから学ぶことはたくさんあると思いました。

  • 人から借りた本。 はじめ、異性になんて破廉恥なものを貸してくれたんだ!と思ったが、文章は簡潔で読みやすく、(やってることは一部汚いともいえるが)心が篭っていて、不思議と汚いと思わない。 読む前は村上龍『オーディション』みたいなドロドロの汚ったない話かと思ったが、普通にほっこりしてしまった。咲良が可愛い。松坂桃李が主演してる映画の方も見て見たいかもしれない。

  • 人間の欲望の多様性を感じた。
    リョウによって、欲望を満たしていく女性たち。
    女なんて…セックスなんて…といっていたリョウが
    彼女たちと出会い、思いを変えていく物語。

    石田衣良さんの言葉のチョイスがすきでした。

    ほとんどが性描写で、
    とてもエロいのだけれど、
    その中でも人間の欲望の深さや
    見た目だけでは判断できない心のうちっていうのがみえて
    ただエロいだけではなかった。

    わたしとしては、アズマとのシーンは
    うーってなってしまって、痛みを伴うのは
    苦手だなぁと。

    本を読んだ後に松坂桃李くん主演の映画も見ました。
    小説を読んでいたら、映画って
    どことなく退屈な感じになったりするんですが、
    全くそんなこともなく、
    もうエロいエロい。
    ずっとエロい。
    腰が砕けるかと思いました(笑)

    続きもまた読みます。

  • 女性やセックスを退屈だと決めつけていた少年が、ぬるりと娼婦ならぬ娼年の仕事を始めるお話。

    娼年の出会う客は変わった嗜好を持つ女性ばかりなんだけど、決してゲテモノのようには描かれない。主人公は、彼女達とあくまでフラットに向き合い、心の内を覗いていく。そうして仕事を通じて、人の心や美しさに気づいていく主人公がとても真っ直ぐで愛おしくなった。
    普通ではないような人々の中から、普遍的な人間愛を学んでいくような、そんなお話だった。終盤での事件を経ても、リョウも咲良もアズマは動じることなく次の未来へと駒を進めて行く様が、まさにそれを表しているように感じた。

    小説としての描写も良かった。街や人間、セックスの描写はボヤかされることなくしっかり描かれていて色や匂いが感じられるようだった。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。代理店勤務、フリーのコピーライターなどを経て97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞、13年 『北斗 ある殺人者の回心』で中央公論文芸賞を受賞。他著書多数。

「2022年 『心心 東京の星、上海の月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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