日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087481785

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  • 縄文文化が栄えた地・東北の自負《赤松正雄の読書録ブログ》

     ほぼ四半世紀も前のことになる。東北の地が日本文化の源流を形成していたとの試論を世に問うた人がいた。哲学者・梅原猛氏だ。その著作『日本の深層』を改めて読み、東日本大震災復興後の今こそ宣揚されるべきだと確信する。

     東北六県は、ややもすれば文化果つるところと揶揄され、後進地域とみなされがちだ。しかし、実際は違う。繊細で深みのある高度な縄文文化が栄えた先進地域であり、今日の日本文化発祥の源だった。梅原さんは東北各地を旅しながら、宮沢賢治、太宰治、石川啄木ら詩人、作家たちの心の深層に耳を傾けながら、土着の信仰や祭りの習俗を追い、日本人の隠された魂の秘密を探り当てたのである。平易な語り口で丹念に記述された試みは、私たち日本人のルーツを指し示されたごとくに知的好奇心が掻き立てられる。

     関西との比較が随所にでてくるのは嬉しい。弥生文化の花が咲き誇ったがゆえの自負心を持つ関西人と、さらにそれを遡ること千年も前に存在した縄文文化に自負心を持つ東北人と。双方に関わりが深い梅原氏ゆえの比較文化論は読み応え抜群だ。阪神淡路の大震災の傷癒えぬ頃に、兵庫県公館でその講演を聴いたことを思い出す。1925年生まれの自分はもうすぐ80歳になるが、と前置きし、85歳までと、それから先とにわけ、仕事の目標や抱負を述べられた。“老いてますます壮ん”との言葉がぴったりだった。

     民族学者・柳田国男が文中しばしば登場する。この人は我が郷土播州が生み出した文字通り“知の巨人”だが、今年は没後50年とかで、地元・福崎町などでいくつかの催しがあり、楽しみだ。梅原さんは、柳田国男が百年前に書いた『遠野物語』を引用して東北を解きほぐすよすがにしている。

     梅原さんは「『遠野物語』を何度も読んだが、その内容は不思議な話ばかりなので分からなかった」と書いている。勿論分からぬままにはされていないのだが、へぇーえ、梅原さんでさえ、と思わず安堵の気分が当方にわいてくるのを禁じ得なかった。

  • 図書館
    それなりに梅原学を学べた

  • 赤坂憲雄先生解説 あえて分類を民俗学に入れました。

    2009年89冊目 6/26

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著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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