- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087606843
作品紹介・あらすじ
大晦日、“自殺の名所"の高層ビル屋上で鉢合わせした失意の男女4人。互いの不幸を語り合ううち、もう少しだけ生きてみようかということになるが……。ぼやきを勢いの言葉で綴る英作家の真骨頂。(解説/三橋曉)
感想・レビュー・書評
-
すごくおもしろかったし、よかった。
人生に失望して自殺したがってる四人の話だけど、ユーモアたっぷりで暗いところがまったくなく、安心して楽しく読める。それでいて、突然すべてがうまくいく、なんて結末でもなく、苦い人生は苦いまま、うまくいってない状況が劇的に変わるわけじゃないけど、それでも希望がわいてくるような話で。
みんな、変わらなきゃいけないって思っていてでも変われなくてどうしていいかわからなくて悪循環、みたいなところがとても共感できて。
文章はユーモアがあって、でも饒舌すぎる感じが苦手な人はいるかもしれない。なんかちょっとしたところで、個人的に、名言!とか思うところがいろいろあって、たくさんページを折ってしまった。
映画や音楽や本がたくさん出てくるところもよかったな。
ニック・ホーンビィ、「ハイ・フィデリテイ」はじめ、大好きだったけど2000年以降読んでなかったらしい。他のも読まなきゃ。
こういう、翻訳物で、ミステリではなく、純文学でもない、読んで楽しくほっとできるような小説を、わたしは読みたい……。 -
読書友達さんに発売を教えていただいた本。ニック・ホーンビィは本当に久しぶり。
大みそかの夜に、偶然同じ場所に来てしまった4人のお話。彼らのバックグラウンドに共通点はないけれど、「もうどうでもいやになったのですから」という思いは共通。1人がほかの1人の行動を止めたことで、なんとなくセッションが始まる。そのさまが、登場人物目線で、かわるがわる語られる。
年長2人の抱える状況は結構深刻で、年齢がこちらに近い(推定)ものとしては、彼らが背負った「これさえなければ」という大きな荷物について、かなりリアルに「その荷物はおろしてしまいたいよなあ」と理解を寄せてしまう。それに対して、年少2人の抱える悩みは、人生において深刻な問題ながら、「青春の蹉跌」とでもまだ言えるレベルかなあと思う。でも、それが彼らの人生の障害になっているんだから、「つまずき」なんて生やさしいものじゃないのも経験上よくわかる。でも、人生の午後はまだまだの彼らには、それは結構難しい。
ホーンビィの小説はいつも会話やシチュエーションの運びが軽妙で、込み入った陰鬱な状況を描いていても、徹底した悲劇に追い込まない。シニカルでありコミカル。なかでもこじらせ文科系アメリカ人男子・JJの描きかたが容赦ない。聞いている音楽はさておき、読んでいる本は「ああ、それでは…」と察してしまうラインナップ(ということは、私もいろいろこじらせているのか?まあそうだけれども)だし、しかも、彼らがとりわけ美大生を苦手としているのを、なぜホーンビィが知っているのか(笑)。それに、熱狂的なアーセナルファンで、それで1冊本を書いてしまっているくらいだから、雑談にサッカーネタを仕込んでくる部分が輝いている。「たとえば」とマーティンが挙げる検視報告書の書き出しはマンチェスター・ユナイテッドのFWネタだし、JJが夢見るライブ会場にも、イングランドサッカーの殿堂・ウェンブリースタジアムががっちり織り込まれているしで、「それにしてもイギリス人(ただし貴族以外の)、どんだけサッカー好きやねん!」といちいちツッコミを入れてしまう。
プチ豪遊しても、騒動の原因かもしれない人物に会いに行っても、どれも「解決策」にはほど遠くてやきもきするし、終盤のジェスの「解決策」もとっちらかりすぎて「あちゃー」という感じもするんだけど、まあ、このあたりはいろいろとっちらかった女子の精一杯考えたアイディアなのだから、それは素敵なことだと思うし、彼女の一番気にかけていたことに、モーリーンのナイスアシストが決まるのだから、一番の問題児が片づいた(実際はわからないが)ことが嬉しく、なんだかほっとしてしまった。何だ私、それって母親目線?
鮮やかな一発逆転サヨナラ満塁ホームランをお望みのかたには少々物足りないかもしれないけれど、あきらめとも現状のだらだら追認ともまた違った穏やかな幕引き。「さて、とりあえず今日は遅いから、もう寝よう」と、布団にもぐりこむとちょっと幸せになる感じに似ているかもしれない。 -
ジョン・キューザック、ジャック・ブラックが出演する『ハイフィディリティ』や『アバウト・ア・ボーイ』の作者とは知らず、読む。
リアリティーショーのカーダシアン一家みたいに、登場人物がこちらに向かって感想や状況説明しながら物語が進んでいく、おもしろい小説。
設定も一風変わっている。大晦日の夜に自殺しにやってきて、たまたま出会った個性がバラバラの4人の物語。
冒頭からシュールな笑いがあるし、ちょいちょい出てくるブラックジョークな台詞やシーンがクスッと笑わせてくれる。
個性の強い4人だが、読んでいくうちに可愛い存在になってくるから不思議。
これまでにない読書体験で、楽しんで読めた。
ただ、海外ジョークとかブラックジョーク好きな人にしか好まれないかも。
好き・嫌いの分かれる小説だと思う。 -
ニック・ホーンビィ 『ア・ロング・ウェイ・ダウン』A Long Way Down (2005年)
ロンドンの生活がよくわかるアバウト・ア・ボーイの作者、ニック・ホーンビィの小説。
飛び降り自殺で有名なアパートの屋上で同じ志?をもって集まった全然バラバラな人たちのその後を描いたお話。どのキャラも独特で、そのキャラクターごとに描かれた生活と発言が面白く、いつも場を乱す女の子ジェス、なんだか(実際に大変な生活なんだけど)ネガティヴな毎日を送っていたおばさんモーリン、ニューキャスターしていたのに大人だと思った女性が少女で…どん底のマーティン、そしてアメリカからロックバンドとしてロンドンに来ていたけど…なJJ
その4人の関係と行動とが絡まり合って…ちょっと時間かかったけど、楽しめました♪
よく映画化される作家だから、どうかなと調べたら、2014に映画化はされてるけど日本では未公開…公開してほしいな〜ピアース・ブロスナン、トニ・コレット、ロザムンド・パイクなど役者揃ってるんだけどな…
#本 -
超面白い!20140729@東京
-
ホーンビィの新刊。訳者が変わっててはじめのうちは訳の雰囲気がちょっと馴染めなかったけど、ひさしぶりにホーンビィの小説でかっちりハマった感じがした。ホーンビィの、普通のひとの普通さを描きながらもなにか大きなテーマを伝えてくれる筆致がとても好きで、「ハイ・フィデリティ」以来の良作だった。
-
自殺志願者も四人集まれば。。。
色々な人生問題も他人にしてみればパーっと解決?
外国ものらしく、汚い言葉と冗長さが目立つけど、
三谷幸喜とかで、ドラマにしたら面白そう。 -
ホーンビィの翻訳本すごく楽しみだったけど、読み始めはなんだかとても読みにくかった。文章のテンポが悪いのか、慣れるまで結構ストレス。
ハイフィディリティとかソングブックあたりを期待して読むとすごく読みにくく感じるはず。
物語自体は、大晦日の晩に自殺しようと自殺の名所の高層ビルに集まった接点の無い4人が主人公。結局もうしばらく生きてみてもいっか、ってオチなんだけど、今ひとつどのキャラクターにも感情移入できなかった。強いていえばJJかな。あとは救いが無かった。 -
読みにくい。
翻訳ものだからか、話がなかなか頭に入ってこないよ。
別に、衝撃的な事件や出会い、別れや国家機密がなくったって、読んだらなんだか「ああ、面白かったよねえ!」と思える本は少ないのかなあと思います。国内ものならほっこり系がそれにあたるのかもしれないけど、私はそこはちょっと苦手で(笑)。
わたしも同じく、「ほっこり系」は苦手かもしれ...
わたしも同じく、「ほっこり系」は苦手かもしれません。ニック・ホーンビィとか海外のものだと、ただ「ほっこり」とは違う、楽しいなかにも苦味があったり皮肉がきいていたりといった感じがあるように思えます。