霊の棲む島 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (672ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606935

作品紹介・あらすじ

初夏の夜、女が一人息子を後部座席に乗せ、血塗れの手でハンドルを握って、唯一安全な場所へ急いでいた。幽霊島と呼ばれる彼女の故郷へ。北欧発大人気ミステリ・シリーズ第7弾。(解説/杉江松恋)

感想・レビュー・書評

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  • エリカ&パトリックの事件簿も7作目。
    重量級のシリーズ、がっつり続いてます。

    古い灯台のある島へ、子どもを連れて渡る一人の女性。
    夫から逃げてきたらしい。
    数日後、別な土地での事件が発覚するが‥
    この町でも関連する事件が?
    灯台のある島での、遠い過去の出来事も、交互に語られます。

    エリカ夫妻の住む町では、大きなプロジェクトが進行していました。
    自治体執行委員のアーリングは、担当の華やかな女性と昵懇に。
    警察署長のメルバリは、仕事は出来ないのに見栄っ張りな困り者で、ほとんどコメディキャラですが、私生活ではいいパートナー(パウラの母リータ)とめぐり合い、意外に良い所を見せて幸福になっています。
    ところが‥

    前作の終わりに、主人公達には衝撃の事件が起きていました。
    パトリックが倒れ、エリカと妹のアンナは交通事故に。
    (細かいいきさつはネタばれしないでおきますけど‥)
    アンナの苦しみの大きさ、家族の並々ならぬ心配がリアルに描かれます。
    どんな言葉も届かないように見えましたが。
    そっとしておくしかないと思うのは違い、傍にいて暖かさを感じさせるようにというカウンセラーの言葉は、知っておいたほうがいいことかも。

    いつもながら盛りだくさんで、濃い!
    今回は島や過去の因縁が出てくるため、他の北欧作家の作品を思い出させる部分がありました。
    こういう雰囲気は、土地柄なのね~。
    北欧のミステリは近年かなり紹介されていますが、まだまだ良く知らないことばかりで、新鮮味あります☆

  • うー。
    今回は本体に負けず内容が重かったなー。
    様々な形のDVと母の愛。
    先日のトークイベントでカミラさんが身の回りにある様々な問題を描いているって仰っていたけど、それゆえ正解のない群像劇となっていてしばしざらりとした感触があるんだよね。
    人間関係もどんどん変化していくので、どうしても続きを読んでしまうシリーズ。

  • 最初の方は良く分からなかったですが… 進んで行くほどに、面白くなってきましたよ。今回のDV問題 重かったですね、前作よりは面白かったような気もします。 このシリーズは続いて欲しいですね 最後の方は一気読みです

  • ヨハン・テオリンの「冬の灯台が語るとき」に構成が似ている。北欧ならでは。

  • 義母の変化っぷりが一番印象に残るってゆうね。長いシリーズだけに人間関係も良好になってきてんのかな。

  • 待ってたよーエリカ&パトリックシリーズ!もう七冊かー。今回はフェルバッカ沖の小さな島。グローシャール島。昔と今の悲劇が下敷きになっている。全体的に虐げられる女性がメインになっている。あと、苦悩する女性。思えばシリーズの中でも様々な女性の生き方が描かれているな。エリカ・アンナ・パウラ。もしこの作品がシリーズ初読だったらキツいかも。これまでシリーズを追いかけて来た人には安心の安定感で楽しめると思う。

  • エリカ&パトリックシリーズ第7作。前回衝撃的な終わり方をしたところから数ヶ月後の今作。冒頭から重い空気が漂い、読み進むうちに登場人物たちの感情に引き寄せられていく。単純に犯人を特定するのではなく、いくつものサブストーリーが蜘蛛の糸のようにつながる展開に眠れなくなる。

  • 「エリカ&パトリック」シリーズ7冊目。
    前の「人魚姫」の終わり方が「ええええ!」というものだったのでどきどきしてたんだけど…。主人公二人は結局大したことにはならず、かわいそうなのは妹とその夫(エリカの元彼)。不幸はあくまで妹が背負うこのシリーズ…。

    テーマは「DV」だろうか。現在と過去の虐げられた女性の話が交錯して、最後には一つにまとまるのだけど、なんとも暗くなるような話ばかりで…。過去の、灯台守に女中が嫁ぐ話、オチは現代の感覚だとすぐにピンとくるんだけど、当時の一般的な人は思ってもみないんだろうなぁ…という(ネタバレですが、ゲイの偽装のため連れてこられるという話です)

    そういえばエリカの妹アンナもDVサバイバーで、すったもんだの末に地元でエリカの元彼と結婚するんだけど、またまた不幸がやってくるのであった。

    DV被害者のシェルター、コカインの密輸、小学生がそれを見つけてなめて救急搬送される、数カ月前に大変な暴力を受けた男性が射殺されるなど色々な事件がからまり、視点がころころ変わるのだけど、最後には集約される。
    DVの被害者支援のNPOみたいな組織に男性が関わるのがいいのかどうか、という問題提起もされていたなぁ。
    ものすごく分厚い本だけどいっきに読んでしまった。そしてまた続きを楽しみにするのであった。

  • まるで映画カドラマ一本道見たような読後感。すべてのシーンがヴィジュアルとして浮かんでくる丁寧な文章と、地味にしか進まないけどスリリングな展開とエンディングに、新しい作家発見!と思える面白いミステリーだった。
    他の本も読んでみようと思う。

  • 「カミラ・レックバリ」の長篇ミステリー作品『霊の棲む島―エリカ&パトリック事件簿(原題:Fyrvaktaren、英語題:The Lost Boy)』を読みました。

    「カミラ・レックバリ」作品は、今年1月に読んだ『人魚姫―エリカ&パトリック事件簿』以来ですね。

    -----story-------------
    初夏の明るい夜、ひとりの女が血まみれの手でハンドルを握り、知る限りたった一カ所の安全な場所へ急いでいた、後部座席に小さな息子を乗せて。
    目的地は女の故郷でもあるフィエルバッカ沖のグローシャール島、古くから幽霊が棲むと言われる島だった。
    数日後、自治体の経理担当者が自室で撃たれて死んだ。
    男は直前に“幽霊島”を訪れていたという…。
    スウェーデン発の大人気シリーズ第7弾!
    -----------------------

    「ヴィヴェカ・ステン」に続きスウェーデン作家の作品… 再び北欧ミステリがマイブームですね。

    2009年に発表された「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第7作目… 本シリーズは、第6作目まで順番に読んでいるので、「エリカ」や「パトリック」を中心とした登場人物に出会うと懐かしいような、嬉しいような、そんな感情がこみ上げてきます、、、

    特に前作では、倒れた「パトリック」のところへ向かう途中の「エリカ」と「アンナ」が交通事故に遭った(と思われる)シーンで終わっていたので、次の展開がとても気になり、早く続きが読みたかったんですよね。


    さて、本作品は、「エリカ」の中学・高校時代の同級生「アニー・ヴェステル」と「マッツ・スヴェリーン」が登場… オープニングから事件性を予感させるオープニングで幕開けします、、、

    血まみれの手でハンドルを握る「アニー」、後部座席には毛布にくるまれた息子「サム」… 二人が逃げるように向かった先は幽霊島(ガストホルメン)と呼ばれるグローシャール島だった。

    その頃、「アニー」のかつての恋人「マッツ」も故郷に帰り、自治体の経理を担当していた… その彼がグローシャール島の「アニー」を訪れた後、自宅で射殺死体で発見される、、、

    「マッツ」は故郷に帰る前にイェーテボリのDV支援団体で働いており、自宅前で若者たちから暴行を受けて大怪我を負っていたことが判明したことから、「パトリック」は捜査の範囲をイェーテボリまで広げる… 捜査が行き詰まる中、ゴミ箱に捨てられたヘロインを、子ども達がお菓子と思って誤飲する事件が発生し、その袋から「マッツ」の指紋が検出される。

    「マッツ」は麻薬取引に関わっており、そのトラブルから殺されたのか!? しかし、捜査を進めても「マッツ」と薬物の繋がりはどこにも見つからない、、、

    そんな中、「アニー」の夫が射殺死体で発見される… 縺れた糸が一挙に解けていく。


    「エリカ」の好奇心むき出しの自己中心的で不用意な行動には鬱陶しさを感じますが、、、

    それでも、そのおせっかいが高じて、事件の真相が判明していくという定番的な展開… でも、今回は二つの事件(殺人事件と詐欺事件… 時々挿入される19世紀の事件を入れると三つですけどね)が並行して描かれているので、どのエピソードが、どの事件に繋がるかが、最後まで解りにくかったので、600ページを超える大作でしたが、飽きずに読めましたね。


    「アニー」の息子「サム」については、描かれている不自然な行動から、最初から、そんな気がしていたんですよね… なかなか目覚めず、話さず、食べず、しかも、その様子は母親「アニー」の視点からしか描かれてないですからね、、、

    いやぁ、それにしても哀しい事件でした… 「マッツ」が愛した「マデレーン」の死については解決しそうにないもんなぁ。


    本作も過去の「エリカ&パトリック事件簿」シリーズと同様に、次々に新しい事実や謎が提示され、視点を変えながら物語が進展する「カミラ・レックバリ」らしい愉しめる作品でした、、、

    特に真実が徐々に判明して、パズルのピースが埋まるような快感が味わえる終盤は、特に早く感じたなぁ… そして、忘れちゃいけないのが「エリカ」や「パトリック」を中心とした主要登場人物のプライベートが描かれるサイドストーリー。

    前作のエンディングで交通事故に遭った「エリカ」と「アンナ」ですが、「アンナ」は重傷で、二人の運命は大きく分かれてしまいます… 「エリカ」には無事に双子が誕生し、「アンナ」の妊娠中の子どもは死んでしまい、「アンナ」は精神的に追い詰められます、、、

    最初の不幸な結婚、そして、今回の事故… ここまで悲惨な人生にしなくてもイイのになぁ。


    「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第8作目以降は翻訳されていないようです、、、

    本国では第10作まで発表されているのに… 早く翻訳して欲しいですね。


    以下、主な登場人物です。

    「エリカ・ファルク」
     作家

    「パトリック・ヘードストルム」
     エリカの夫、ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「アンナ」
     エリカの妹

    「ダーン・カールソン」
     漁師、教師、エリカの昔のボーイフレンドで現在はアンナのパートナー

    「アニー・ヴェステル」
     エリカの中学・高校時代の同級生

    「フレードリック・ヴェステル」
     アニーの夫、ワイン輸入業者

    「サム」
     アニーの息子、五歳

    「マッツ(マッテ)・スヴェリーン」
     ターヌムスヘーデ自治体経理担当者

    「グンナル・スヴェリーン」
     マッツの父

    「シグネ・スヴェリーン」
     マッツの母

    「アーリング・W・ラーション」
     ターヌムスヘーデ自治体執行委員

    「ヴィヴィアン・ベルケリン」
     <プロジェクト・バーディス>スパ部門担当者

    「アンデシュ・ベルケリン」
     ヴィヴィアンの弟、<プロジェクト・バーディス>経理担当者

    「バッティル・メルバリ」
     ターヌムスヘーデ警察署署長

    「マーティン・モリーン」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「ユスタ・フリューガレ」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
      
    「アンニカ・ヤンソン」
     ターヌムスヘーデ警察署事務官 
     
    「パウラ・モラレス」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事

    「リータ」
     パウラの母、メルバリのパートナー、サルサの教師

    「ヨハンナ」
     パウラのパートナー(同性)
     
    「トード・ペーデシェン」
     イェーテボリ警察管区法医学室監察医

    「トールビョーン・リュード」
     ウッデヴァッラ市鑑識班班長

    「アーンスト」
     メルバリに懐いている犬、元ターヌムスヘーデ警察署刑事の名前から命名

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