ごめん。

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711929

作品紹介・あらすじ

学生服専門の洋品店で働く吉本佑理(32歳)は、職場上司の無自覚なセクハラやパワハラに合いつつもなかば諦めも感じていた。ある日、例のごとく「きみ、彼女いないの? 吉本さんを誘ってあげたら」と言う部長に対し「無礼です」と言い切る出入りの配送業者、里村の自然なふるまいが佑理の心に飛び込んできた。その後デートを重ね次第に距離を縮める二人。そして、告白のタイミングでこれまで三、四人と付き合ってきたと言う里村に対し、佑理は今まで彼氏が一度もいなかったことを、勇気を出して告げる。すると里村は何も告げずに去ってしまう。フラれた。失意の佑理に里村から電話が。「ごめん、おれも付き合ったのは中学の時にひとりだけ。いまマンションの下にいるんだ。戻ってもいいかな」(第一話「ひとり道」)。
あなたは“その言葉"を一日に何度、口にしますか? 様々なシーンのごめんで登場人物たちが少しずつ繋がってゆく、心温まる連作短編集。

目次
第一話 ひとり道
第二話 いつも俺から
第三話 甘いママ
第四話 いけない奥さん
第五話 かすがい
第六話 電話家族
第七話 ナニサマ
第八話 うさぎが転んだ
第九話 小言幸兵衛
第十話 ハッピーエンド
第十一話 しゃぼん玉

【著者略歴】
加藤元(かとう・げん)
1973年神奈川生まれ。日本大学芸術学部文芸学科中退後、10種類以上に及ぶさまざまな職業を経て、2009年『山姫抄』で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。11年に刊行した『嫁の遺言』が多くの書店員の熱い支持を受けベストセラーに。他の著書に『泣きながら、呼んだ人』『蛇の道行』『四百三十円の神様』『好きな人ができました』など。

感想・レビュー・書評

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  • いろんな「ごめん。」の短編11話 リレーのようにどこかで繋がっていく

    第1話の主人公は、学生服専門の洋品店で働く32歳の佑里、何よりも読書が大好き、小さい頃から変な子と言われてきた佑里に、里村くんというはじめての恋人ができた!
    「ごめん」から始まる二人の恋、不器用で情けなく格好の悪い似た者同士の二人 。遠慮がちで、口を開けば、ごめん、ごめん
    読んでいても、もどかしい二人の恋が、最終話「しゃぼん玉』で
    ちょっぴり進展
    ゆっくりゆっくり気持ちを確かめながら進む恋もいいよなとニンマリ

    個人的には、1話と11話の前述した恋の話と第7話「ナニサマ」と
    第10話の「ハッピーエンド」が好みだな
    風采はパッとしないかもしれないが、鍋島課長カッコいい

    いろんな「ごめん」に考えさせられてしまう

    その場の事を終わらせたいばかりに、とりあえず謝っておけばいいんだろう。心無い「ごめん」を繰り返していた夫が、妻から「あなたの『ごめん』は単なる枕詞、もう無理、ごめんなさい」と離婚を切り出される
    当たり前だろう、そりゃ!

    そんなの謝ったことにならないでしょうという「ごめん」
    そこまで自分を卑下して謝らなくてもいいよと言ってあげたくなる「ごめん」
    人間関係が込みいって、ギスギス、言ったもの勝ちのこの世の中
    確かに「ごめん」にあふれているようで、方や「ごめん」の一言が言えない人もいる
    人間関係を円滑にしたり、余計にこじらせたり・・・
    いやはや難しい世の中になったものだ
    相手の立場に立って、心からの「ごめん」を言いたいものだ




  •  いろいろなシチュエーションで発せられた謝罪のことば「ごめん」を描く連作短編集。
    全11話で、各シーンで登場した人物が別の話で主人公を務めることで、広がりを持った作品に仕上がっている。

         * * * * *

     「ごめんなさい」でも「すみません」でも「申しわけありません」でもない。
     自分と同等もしくはそれ以下であると認識している相手に口にする謝罪のことばです。もちろん、相手が年上であっても子どもから親へなど家族のようなごく身近な相手にも使います。
     だからいろいろな場面で気軽に口にできる汎用性の高いことばだと思います。

     そこを加藤元さんはうまく活用し、さまざまな「ごめん」を用意してくれていました。
     佑理と里村くんの間で交わされる微笑ましい「ごめん」や寿見子が鍋島に告げる切ない「ごめん」の他、杉田課長の放つ嫌悪感すら感じる「ごめん」、果ては飼猫・信介の決意の「ごめん」まで実にバラエティに富んでいて、最後まで退屈させない内容でした。

     加藤元(げん)さんは女性の作家で、親しみやすい作風は奥田英朗さんの作風に少し似ているように感じるところも気に入りました。

  • ごめん、ごめんなさい、すみません。私たちは生きている間に何度この言葉を言うんだろう。心から謝罪して口にするばかりではなく、誰でも深い意味のない「ごめん」や形だけの「すみません」も口にしたことがあると思う。この本に出てくる「ごめん」にも色々な形がある。そんな謝罪ならいらないよと思うものもあれば、謝る必要なんてないんだよと思うものも。
    表紙の絵になっている黒電話のストーリーにはホロリとさせられました。

  • あぁああ、カトゲンはずるい。ずるいよ!
    人間関係の煩わしさや嫌悪感や苦痛を「ほれほれ!嫌だろ?人付き合いってこんなにうっとうしいんだぜ」ってこちらのネガ感情を煽っておいて、その後、さらさらさらさらとその向こう側にある「ゆるせる」感や「いいところ」や「わかるところ」を見せてくる。読み終わると「やっぱ、ヒトは一人じゃ生きられないよな。一見ヤなやつでもうまく付き合えば居心地よくなるよな」なんて思っちゃう。そしてなぜか読んだ自分が「良い人」な気がしてくる。

    人間には二種類ある。「ごめん」が言えない人と「ごめん」しか言えない人。
    だけど、その時、その場所、その相手によって、「ごめん」の意味は大きく変わってくる。
    「ごめん。」がつなぐヒトとヒトの心。
    愛すべき不器用人を書かせたら天下一品作家カトゲンからの愛すべき「ごめん。」物語。
    本を閉じた後の気持ちよさたるや。

  • 普段短編はあまり好みではないのですが連作ならと図書館で借りました。
    借りて正解!
    すごく好きな感じの連作集で、一話と最終話がちゃんと繋がっていたり、七話であれ?初めて出てきた家族かな、と思って読み返したらちゃんと一話から名前が出ていて最終話でも登場したり。
    比較的みんな短めの話だったけどすごく心に残りました。

  • 悪い事をしたら謝りなさい、と親から言われて育ったはずがいつからひとは謝らなくなったんだろう。

    接客業を生業としているので謝罪の言葉を使う事はままある。「粗相がありまして」 「ご希望に添えず」 などなど多岐にわたる謝りのパターン。
    ただしこれらは申し訳ない、を表している。
    なら『ごめん』は?
    砕けた口調はそのまま相手との距離でもある。
    そして距離が近い程、ニュアンスも真相も多岐にわたっていく。
    場を繕う「ごめん」、怒りながらの「ごめん」、
    ヘラヘラした口先だけの「ごめん」。
    いちばん言えないのは心底から伝えたい「ごめん」、いやいちばん大事なんだよ? でも、けれど。

    物語の登場人物たちが数々の場面で「ごめん」と呟いている。その言い回しと吐露した心情にぶんぶんとうなずく自分がいる。分かるけどそれ駄目なヤツや、と突っ込みを入れている自分がいる。
    そうして気付いた。
    最も大切な「ごめん」には(ありがとう)が含まれているのだと。

  • *あなたは“その言葉"を一日に何度、口にしますか? 様々なシーンのごめんで登場人物たちが少しずつ繋がってゆく、心温まる連作短編集*

    やられました。
    普段何気なく、時には空気のように使っている「ごめん」。こんなにも奥深く、切なく、滑稽で、愛おしいものだったとは!
    ただ、あまりにも面白くて一気に読んでしまったのが悔やまれる…時を置いて、次回こそは一行一行じっくり堪能しながら読み返そう。いつまでもあたたかで切ない余韻が残る秀作。

  • 加藤元(かとうげん)さん、初読みです。最初に裏表紙を見てびっくり。女性なんだ。

    会社員時代、女性の部下もかなりいたし、嫌われて無かったと思う。いや、一人陰口を言った人が居たようですが、それを伝えてくれた別の女性部下は「xxさん(私)の悪口なんて・・」と如何にも心外そうだったので大丈夫だと思うのだが。。。
    この本を読んでいると、ついついそんな思いが湧きます。
    確かにこの本に出て来る多くの男性は不謹慎だったり、男性中心的だったり、いささか無神経。それは判ります。ただね、それに対する女性の内面的リアクションが私には少々怖い。ええ、そのレベルでそこまで否定する? そう感じるという事は、逆に言えば私もそんな風に女性に思われていたのか?
    そんな風に思いっきり女性的(と言うか男性がなかなか入り込めない領域)で書かれた物語です。

    11編の短編集。各短編で様々な「ごめん」が出てきます。
    序盤は苦戦。心の入った謝罪の「ごめん」では無く、言わされる「ごめん」やり過ごすための「ごめん」単なる口癖の「ごめん」そんな話が多いのです。善人ばかりの甘ったるいだけの良い話には飽食気味だけど、だからと言ってこういう寛容度の低い話が続くと少々ささくれてしまいます。終盤になって、後に繋がる「ごめん」の話が増えて良くなって行きましたが。
    個人的には第7話の「ナニサマ」が良かったな。女性店長さんと元恋敵の女性の気風の良さにホッとします(笑)。

  • 色々な「ごめん」を言葉にする人々の連作短編集。
    こういう角度の群像劇って今まであるようでなかったから、ちょっと新鮮。

    そのなかでもキャラが立ってた杉田課長。
    自分本位の勘違い駄目野郎で、人を苛立たせる事に関しては天才的。
    そんな課長と一緒に働く三人の女性社員達がそれぞれ心の中で、時には三人集まって課長をボロクソに言ってる様子が面白い。

    一番ツボだったのは季実子。
    「ひさしぶりなんだ、こんな気持ち。どうしたらいいかわからなくてさ」と課長からどうでもいい恋愛相談を勝手に持ちかけられて「どうしたらって?今すぐ電車に飛び込め。」と内心で毒を吐く彼女には笑った。
    とはいえ実際身近にいたら、相当ストレスだろうなぁ・・・。

    個人的には「かすがい」と「うさぎが転んだ」が好き。

  • 同じ職場や友人、家族の「ごめん」にまつわる連作。
    ごめんって数が多いとなぜかイラッとするものだなぁ。
    子どもなら
    ごめんで済むなら警察いらない!って言う感じ?
    自分的にはありがとうで済む場面にはなるべくありがとうを使いたいと思ってるけど、他人にごめんを求めてるとき聞けないとそれはそれでイラッと‥‥
    まぁ、そんな本だった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ、東京育ち。日本大学芸術学部文芸学科中退。日本推理作家協会会員。2009年、『山姫抄』(講談社)で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。『泣きながら、呼んだ人』(小学館)が盛岡のさわや書店が主催する「さわベス」1位を獲得。2011年に刊行した『嫁の遺言』(講談社)が多くの書店員の熱い支持を受けベストセラーに。その他に『蛇の道行』(講談社)、『四月一日亭ものがたり』(ポプラ社)、『ひかげ旅館へいらっしゃい』(早川書房)、『ごめん。』(集英社)など。昨年刊行した『カスタード』(実業之日本社)は奇跡と癒しの物語として多くの読者を勇気づけ、本作はその続編にあたる。不器用だけど温かな人情あふれる物語には、幅広い世代にファンが多い。

「2022年 『ロータス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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