- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087712247
作品紹介・あらすじ
リョウ、二十歳の夏。恋愛にも、大学生活にも退屈した日々を送るなか、ボーイズクラブのオーナー・御堂静香に見出され、とまどいながらも「娼夫」の仕事を始める。やがて、リョウは女性たちのなかにひそむ、さまざまな欲望の不思議に魅せられていく…。性愛の深淵を透明感あふれる筆致で描く長編小説。
感想・レビュー・書評
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大好きなことに集中する。セックスでなくてもぜんぜんかまわないけれど、そういう時間をどれだけたくさん一生のうちにつくれるか。富でも名声でもなく、それが人生の満足度を計る鍵だとぼくは思う。
この青年はすごいなぁと思う。周りが就職活動をしている中、自分だけはブレずに自分の好きなことに対してひたむきに取り組んでいる。
「人間好きなことだけやって生きていけないよ」っていう言葉をよく耳にするけど、そうやって好きなことを我慢して生きていったら、いつか後悔してしまいそうだなと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
純粋。
タイトルに惹かれて、手に取った。
ここで描かれる少年は人の気持ちを受け止め、その人を笑顔にさせる仕事をしている。だけど、世間からは後ろ指を指されるような仕事でもある。
汚い仕事とはなんだろう。ここでの少年はとても純粋だ。人の原点とはこういうことではないのかと思う。発展しすぎて見失ったものを、人が行う本来の行為で取り戻している、というか。
衣良さんの小説はこういう性を扱う場面になると、ぐんと透明感を増すような気がする。 -
著者初期の傑作「娼年」の
続編にして完結編。
娼夫として働く青年・リョウは、
女性の快楽の奥に何を見るのか。
主人公を通して描かれる
女性の心理描写が相変わらず凄まじい。
女性社会にいる自分ですら参考になる(何様?)
一作目ほどのインパクトはないけれど、
淡々と流れる文章とストーリーの美しさは秀逸。
-相手の幸福が、自分にとって不可欠な状態を愛という-
逝と、性と、セックスについて、
もう一度真摯に考えてみませんか。 -
前作の「娼年」を読んでから主人公のリョウは女性の心を理解する素敵な男性になったと感じた。
身体を売る仕事は卑しく思えても、著者が描くとその人生そのもの苦しみや葛藤がきれいに並べられて愛おしく感じる。
また自分の未熟な価値観が1つ階段を登ったように成長した気持ちになる。 -
「娼年」のその後のお話。
間がかなりあったので読み返してから読みましたが、読み返す必要もなかったかなと思いました。
過去の話はあまり出てこないので、「過去」と「現在」がばっちり分かれているので、成長したその後のストーリーが楽しめました。 -
娼年が気になっていたものの、貸出中で待っていられなかったためⅡとなるこちらから先に読んだ。
おそらく『娼年』の最後で摘発されたのであろうクラブの再建過程とオーナーである御堂静香の死までを描いている。
テーマがテーマだけに生々しい話が多いものの、描かれ方があっさりとして過度ないやらしさがなく、そのせいか嫌悪感がわかずに済んだ。
中盤、アユムが親との確執を乗り越える場面は現実ではこうスムーズには進むまいと薄っぺらく感じたものの、全体として淡々とした感じがよく、花の香の香水のような清潔で甘い味わいがあった。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99084259 -
「あなたが今悲しいのなら、その悲しみをわたしに感じさせて。ふたりで分けあって、その色をもっと深い色にする。わたしはわたしの身体をとおして、リョウくんの悲しみを感じたい」
「ぼくたちは、心を分けあうために、身体を重ねる」
心を揺さぶられる言葉です。