- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087713602
作品紹介・あらすじ
「あらすじ」の名人にして、自分の原稿は遅々としてすすまない作家の私。苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースにこころ騒ぎ、子泣き相撲や小学校の運動会に出かけていって幼子たちの肢体に見入る…。とある女性作家の日記からこぼれ落ちる人間の営みの美しさと哀しさ。平凡な日常の記録だったはずなのに、途中から異世界の扉が開いて…。お待ちかね小川洋子ワールド。
感想・レビュー・書評
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宇宙線研究所
素寒貧な心の会
あらすじ教室
生活改善課
暗唱クラブ
作者定番の得体の知れない団体が心をくすぐる。
運動会荒らしの心の動き、忘れた頃の苔の登場が印象的。
スカンクのピンバッチがほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一体どこにいるのだろう…?????
小川洋子世界観を漂う、謎の小説家の「わたし」の日記。 -
特に、感想無しでした。
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図書館で、タイトルからエッセイと思って「小川洋子さんでも書けなくて大変だ〜なんて思うことあるのかあ」なんて思って借りた。小説でした。
苔を食べる、パーティーの床に転がるコンドーム、消えていく見学者...特に何の説明もなく当然のごとくそれを淡々と語る様は、深い静かな海の底にひきづられていく感覚になる。登場人物たちは深海魚みたいだ。
唾液、乳房、母乳、子宮風呂、愛撫風呂...そういう言葉でも、著者の物語ではいやらしさを感じない、生(と死)を強く感じてしまう。淡々と語られるそこにある生と死にぞわっとする(それがよい)。 -
エッセイだー!と思って読み進めたら、エッセイではなかった。かといって小説でもなく、特に起承転結があるわけでもなかった。描写が繊細で、特に苔の話と図鑑の話が好きだった。
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読み始めて「あれ?」と思う。
初めて読むはずなのに既読感がある?…と不思議に思いながら読み進めたら、苔料理専門店で供されたイノシシの死肉に根を張る苔の描写ではっきりと思い出しました。
最初の1章だけ、以前読んだ『胞子文学名作選』(田中美穂/編、港の人)に収められていたのでした。
読書記録を遡ったら、読んだのは6年ほど前だったのですが、あの時も、非現実感の中に時折差し込まれる生々しさにどきどきしたなぁ…。
物語は1人の女性作家の日記の形式で進みます。
最初の苔料理専門店と同様、奇妙な非現実感とリアルな描写のギャップを味わうことができました。
彼女の慎ましい生活の中にある、美しいものも、汚いものも、淡々と容赦なく描かれていて、その合間から立ち上る独特のなまめかしさと若干の気持ち悪さが癖になります。
カイロウドウケツとドウケツエビの描写は、神秘的かつちょっと官能的で、どきどき。 -
2020/06/07
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エッセイと間違えた(´Д⊂ヽこの人の描写は汚いものやなんとなく気持ち悪いものを書くとゲンナリするなあ(-_-)なんとか読み終わる。
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『博士の愛した数式』を読んだとき、その完成度の高さと同時に、これまでの作品がもっていた毒気がみあたらず、一抹の寂しさがあった。しかし、この小説はそんな杞憂を、さっと払いのけてくれた。冷淡、陰微な空間や時間が次々に現れ消え、心は俄かにざわつきだす。小川さんの文章には常に不安がつきまとう。リアルな人生の中の不安はただひたすら惨めで、見るに耐えないものであるのに、彼女の作りだす不安はいつも美しく、慎ましく、たおやかに扱われる。得体のしれない不気味さを感じながらも、その営みの深さにいつまでも触れていたくなる。
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そして何となく全編に昭和の香りが漂っており、郷愁を誘う。