よだかの片想い

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715071

感想・レビュー・書評

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  • とてもいい作品だった。

    相手との距離は、
    実はずっと縮まらず広がらず、
    出会ったときから同じなんだと思う。
    それを介して関係を構築して、
    そして一緒にいられる時期が終わったら離れていく。
    悲しいけれど、そうするしかない。

    そうやって離れなければいけない相手であっても、
    自分が抱えているものを咀嚼するために相手のことがどうしても必要で、
    相手に救われる瞬間がある。
    そのことがはっきりと表現されていて、
    私もいろいろなことを思い出しては胸の奥にその都度痛みを感じた。

    とてもいい作品だった。

  • 顔にあざがあることをコンプレックスに思いながら、まっすぐに強く生きてきた女の子が、恋をし、人との付き合いを通じて、さらに、でも、自分の意思をしっかりと持ち、強く生きようとする姿を描いたお話。決してワガママではなくて、自分の気持ちを大切にしながら成長していく姿は、読んでいて励まされました。読後も希望が持ててよかったです。
    しばらく島本さんの作品から遠ざかっていたけれど、また読んでみたいなと思いました。

    <追伸>
    読後の余韻が思いのほか長く心地よく続いているので☆4→☆5に。
    人は誰もがコンプレックスを持っている。それは目に見えること、見えないこと、様々だと思う。私がアイコの立場だったら、私はこんなにも真摯にまっすぐに生きることができただろうか。様々な悩みはあるけれど、堂々とまっすぐ前をみて、自分というものを大切にしながら生きていきたいと思った。それぐらいアイコの姿は力強くて凛々しかった。

  • 女性のトラウマを深く掘り続けてきた島村さんが新しくであったテーマが、顔のあざ。
    つらい思いをさせられてきた思春期の頃は、物語の冒頭で一気に通り過ぎ、自分の居場所を見つけ、落ち着いた毎日に起こった、ひとつのできごとから物語ははじまる。タイトルどおり片思いの話で、恋愛を成就させなくても、良い出会いがどんなに人を成長させるのか、ということを実感させてくれる。これまでの彼女の作品では、一番好きな余韻のある作品だった。

  • 否定も同情もせず、ただ寄り添ってくれる存在がアイコのまわりにいて良かった
    アイコを傷つけさせまいと知らない間に守ってくれていた母と、優しい父 そんなふたりの優しさや親という立場、悔しさから出る「なんでこの写真なの」という言葉は、幸福そうで前向きな娘を見たかった親としては「なんか違う」と感じられてしまうのは仕方がないことかもしれない
    だけど、ありのままの姿を残せたことを両親にわかってもらえなかった、自分自身が胸を張れる自分は少しだけ駄目だと言われてしまうようなほんのちょっとの絶望感を書くのが本当に上手
    両親を大切に思うからこそ、自分の存在で苦しめてしまっている事実は耐え難いね

    「かわいそう」と言われてアイコが初めて気がついたように、どうにもできなくてそれまで特に気にしていなかったことを初めて人に指摘された時の恥ずかしさと心臓が掴まれる感覚、その一方でどんどん冷えていく頭の中で混乱する自分がごちゃ混ぜになるあの瞬間は経験した人しか分からない
    そういう意味でアイコにとっての飛坂は私にとっての島本理生さんと同じ

    最後の方、時間がかかるけどレーザー治療が可能と知ってためらう気持ちがよく理解できた いい面だけじゃなくて、コンプレックスがなくなることで生まれる悪い面というのは必ずある 例えば整形でもこの人は整形前でも仲良くなれてたかな?と自問自答して、まちがいなくそうであると自信を持って言い切れるほどの人物ならきっとそうなんだろうと思う だけどその見極めって難しいしその判断は間違いかもしれない

    それにしてもアイコがめちゃくちゃ卑屈にならず生きてこれているのは両親のおかげであることを痛感する

    「夏の裁断」に引き続き教授がいい人 今まで重ねてきた倍の時間で得たことを伝えられる役割は先生がいちばん身近ですごく大事なのでは

    そろそろ飛坂について触れよう(笑)率直に言えば、きっと2人とも未熟だったんじゃないかな 「アイコを幸せにできない」と言える飛坂はまだ救いがある方 アイコは飛坂のことを男の子に向かっていけるかっこよさだけじゃなくてそのまっすぐな強さにも惹かれたのかもしれない
    きっとアイコはこの経験を糧にできるはずだから、この先彼女が幸せな人生を送っていけるように願うしかない

  • 面白かった。

  • 今の自分に必要だった本。
    強くて弱くて逃げずにしなやか。
    根っことか枝とかの成長って感じ。方向は定まってなくて、でも漠然と向かう先はかっこいい

  • 生まれつき顔に大きなアザがあるアイコ。
    恋愛を諦めて生きてきたが、そのアザがきっかけで出会った映画監督に恋をする。

    この本は母に勧められて読んだ。
    途中からその理由がなんとなくわかった。
    状況はかなり違うが主人公は私と同じような恋をしていた。

    約束は守ってほしいし、私と会うことを一番楽しみにしていてほしい。相手にもこちらが想うのと同じくらい、好きになってほしい。

    忙しい社会人の彼とは遠距離でなかなか会えず、連絡も気まぐれ。
    彼の負担にならないように聞き分けの良いふりをして、都合の良い女になってしまった。
    それでも良いと思えるくらい好きだった。
    私にとってもその人が本当の初恋だから。
    たくさんのことを教えてくれたし、彼のために綺麗になりたいと初めて思えた。

    もう一度会いたいという言葉を飲み込んで過ごす日々、彼のことはまだ忘れられない。
    私もアイコのように前に進めるだろうか。

  • 大切な恋愛を丁寧に描かれています。

  • 主人公がとにかく芯の強い女性。
    そのまっすぐさに、惹かれる人、助かる人が多いのも頷ける。
    切なくて、愛しくて、尊くて生涯お互い忘れられない恋愛ができたことって、至上の喜びじゃないかな。
    大好きな作品になりました。

  • アイコは飛坂への初恋を経て、今まで閉じこもっていた殻から抜け出せた様な感じがする。みんなも何かしらのコンプレックスを抱えているんだということに気が付いて、少し心が軽くなったかのよう。焦って直ぐに結論を出す必要はない。また新しい恋も始まりそうな予感。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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