教団X

著者 :
  • 集英社
3.12
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本棚登録 : 5096
感想 : 541
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715903

感想・レビュー・書評

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  • 気になる作家さんでしたが今まで手に取れず、最初に取ったのがこれというのはかなりヘビーだったかも(笑)

    重厚ですね。内容も文字通り本の厚みも。上下分冊にして欲しかったな、と重みに耐えながら読みましたが確かにこれは読み終えてみたら上下にしてしまうよりまとめたほうが良い内容であると感じました。

    すごい作家さんですね。壮大、かつ深遠。今までもったいないことをしていたのかも。でもちょっととっつきにくい。いやそこがすごくいいと思うのですが。
    好き嫌いというよりは「とっつけるとっつけない」で分かれそうな作家さんですね。

    こういう教祖、こういう世界観自分の知らないところに存在していそうです。何故だか「居場所」ということをすごく考えさせられましたね。

    「中村文則にはまる」までは行きませんが、どうにか手を出して行きたい(?)価値ある現代の作家さんの一人であるように思いました。

  • 非常に良くできた宗教学書、哲学書、科学書である。もちろん純文学書、エンタメ文学書でもあり、かなりの割合で官能小説書でもある。

    といった具合に様々な側面を持っていて、百科事典かと言わんばかりの超大作。これまでの中村文則の長編小説は全て読んでいるけど、それらのいいとこ取りもしてあり、まさに彼の全てが詰め込まれた作品だと思う。

    心に染みる言葉が多く、貼った付箋は35枚に上った。


    1.俺のこれまでの人生? そんなものに何の価値がある?

    2.目の前に神を見た感動に包まれれば、人間の内面は相当活性化されるはず。

    3.宗教家が不本意に誕生していく、奇妙な構図だった。

    4.ここにお前の人生がある。お前の生きる目的の全てがある。私はこの世界を変えるつもりでいる。お前の力が欲しい。

    5.彼がしていたのは、あらゆる欲望をなくすこと。快も不快もなくし、感覚的な感受も喜ばず、これはあれ、あれはこれ、という識別作用もなくした「無」の状態。

    6.もしかしたら、私達の意識は、何も決めてなんかいないのかもしれない

    etc.


    2015.9.10

  • 露骨な性描写が結構多くて、
    カフェで読んでたのですが中断しました。
    部屋で1人で読んだ方がいいです。

    あまり好きなタイプの話ではなく、
    世界情勢や政治的思想、原子の話や神の話、作者が語りたいことを教祖や各人物の台詞として語らせている感じがします。世界情勢の裏については、読後はもう何を信用していいのかわからなくなる。

    また、悪と性を様々に書いた結末が、大きな母性愛であったり、純愛であったり、アフリカの少女の笑顔であったり、きれいに終わらせようとしているところが、ただの賢者タイムにしか見えない。

    間間に挟む性描写も企画もののAVのようで、

    世界情勢とか語る

    安いセックス

    賢者タイム

    非常に男性的な小説、という感想になりました。


    『教団X』というタイトルから、
    もっとエンタメ度の高いものを想像していたのですがちょっと違いました。

  • エンターテイメントと純文学。限りなくエンターテイメント寄りだけど、何故だか純文学に対する作者の悔しさを感じてしまうのは何故だろう。

  • 読書芸人や、多数の人が絶賛してたが、わからない…

  • 個人的には非常におもしろかったと思うが、好みが別れそう。

    人が生きる意味、心の支え、目指すべき場所とその先にあるもの。

    答えのないテーマに挑み、答えを導こうとする展開。
    フィクションだとは思えないリアリティ。

    ボリュームはあるが、人生に迷っている時になら、一気に読みきれてしまうだろう。

  • これで1800円とは,値段の基準は何なんだろう?~30代の楢崎透は立花涼子を探し求めて松尾正太郎という宗教家?の屋敷に行くが,教祖?は痔で入院中。吉田という坊主,峰野という美女,よっちゃんという奥方が居る。第二土曜の集会で松尾が話しているDVDを見ている内に,松尾と同じ師を持つ沢渡という宗教家の元に立花はいると知る。松尾の許から,高野君という男が沢渡の主催する教団Xに連れて行かれ,代わる代わる女と性交を繰り返す。スパイとして楢崎は連れ戻されるが,松尾の生い立ちを知り,量子の揺れと運命論が染みこんでいく。高野は父に捨てられ絶対的な飢餓を経験し,当時の父の彼女だった立花の母に救われ,13歳で恋人同士になった義理の兄弟だ。涼子は実に父の悪口を言われ続け,責められ続けていたのだ。高野はアフリカでNGOの活動中に現地を食い物にするODA企業に抗議しようとして原始宗教団体に拉致され,殺されそうなところを教祖に救われ,テロリストとして育てられたが,テロ直前で逃げ出した。日本でも死人のでないテロを企画し,資金を教団Xに求めていた。勿論,教祖には内緒だ。沢渡は系列病院を経営する医師の父の許から,発展途上国の無医村で診療にあたり,13歳の少女の結核を治して陵辱し,ついには心臓手術中に心臓に傷を付けて殺してしまった。自動的に貯まる資金を使って,性産業から娼婦を救い,自分の所有するマンションを教団の拠点にしている。高野の意図など既に承知していて,途中からテロ計画を乗っ取る。松尾は最後の説話を残して家に帰る途中で病死し,沢渡はマンションの21階で炎に包まれながら頭をピストルで撃ち抜いた。公安がテロを煽って,日本を全体主義に向かわせようとしていたが,死人は二人,教団が機動隊に囲まれながら手にした武器も模造銃だった。高野は上司から後を託された30代のハンドルネーム・子育て侍にピストルで撃たれるが,それをスマホで撮っていた立花の動画で世の中に知らされてしまう。松尾の平和主義が受け継がれるか?~いやいや,確かに中村君37歳のすべてを読んだような気がする。最後の最後にフィクションだ!と書いておかないといけない怖さを感じる。p200の『「聖書」として編纂されました。中には当然,当時の教会に則さないものもあった。』…「則さない」ってこうやって使うんだっけ?

  • ・「もし人生をやり直せるとして」
    立花涼子はそう言ったことがあった。
    「これまでの自分の人生をなぞってまた今のあなたになることを、あなたは了承する?」
    あの時自分は何て答えただろう。楢崎は考えている。もちろん、と嘘をついただろうか。それはない。正直に答えたはずだった。


    ・「世界に不満があるなら、世界を変えるか、自分の認識を変えるしかない。そのことをアダルトビデオ絡めて話そうとしたんだけど、見事に失敗してね。客席からのブーイングに松尾さん逆ギレしてたよ。…まあ、ようやく帰ってくることになったから、今度は生で見れる」
    「帰ってくる?」
    「…ええ、そうなんです。松尾さんが明日退院だそうです」


    ・ではなぜ物語が必要なのか?それはわかりません。ですが、この世界は物語を欲している。原子は、人間という存在を創り出す可能性に満ち満ちていたのだから、物語を創り出す可能性にも満ち満ちていたことになる。我々の不安定な生からなる様々な物語が何に役立っているのかはわからない。でも、世界とは恐らくそういうものなのです。世界の成り立ちに、つまり原子にその可能性
    が満ち満ちていたという証拠から、我々は物語を発生させるために生きていると考えていい。神とは、恐らくこの世界、宇宙の仕組み全体のことです。だからこの世界の成り立ちそのものを神と呼んでいい。世界の偉大な古き宗教は、それぞれの文化によってその神の見え方が異なっているだけです。


    ・「私は彼らのために証言しなければなりません」
    そういう立花を見ながら、芳子は目に涙が滲む。生真面目だ。本当にこの子は。こういう生き方は苦しいだろう。
    「そう。それがあなたの生きかたなのね」
    「はい」
    「ねえ、ちょっといい?」
    芳子は立花を抱き締めた。温かい。立花は思う。不意に涙が込み上げる。


    ・「昔、貧しくて遊郭にいた頃、雪の降る中で外を歩いていたことがありました。お腹が空いて、暗い路地で蒸かしたお芋を売っている小さな屋台を見つけて、財布の中身を見て迷いながらそれを買いました。一口食べた時、私はああ美味しいなって、思ったんです。気がつくと涙が出ていました。自分のような存在にでも、食べ物は幸福を与えてくれると。世界の中にある何かは、自分に対して優しいと。…味を感じられない人も、他の何かを感じるでしょう?美しい風景。風景を見れなかったとしたら、美しい音。音が聞けなかったとしたら、温かな感触。感触も感じられなかったとしてもー芳子の脳裏に今の高原の姿が浮かぶー夢は見られる。生きていたら、その中で、どんな小さなことでも肯定できるものがある。私達は、全ての人達がこの世界の一部でも肯定できるように、一つでも多く、そういう肯定できるものを増やすことができるように努力していきましょう。善を行なうことに構えてはいけません。気軽な善でいい。たとえば日本人全てが百円を出せば百二十億円になる。世界の何かを動かせるほどのお金になる。そうやって、日々の中で、少しでもいい。何かに関心を持って世界を善へ動かす歯車になりましょう」

  • 何度も繰り返し書いているけれど、初期の頃の心の奥底から闇をえぐりとるような作風ではなくなってしまい、最近の、ストーリー性やエンターテイメント性を重視するようになった作者の方向性にはいまいちついていけず、以前は「好きな作家は」と訊かれればまず第一に名前を挙げていたのですが、最近では別の作家になってしまっていた。
    しかし、ついにこの大長編である。
    本人もHPに「次のステップに進むには長編を書かなければ」という主旨のことを書いていて、どんなものかと期待していた。
    読み始めてから暫くは、正直失望していた。やはり目先のエンターテイメント性を追っているようで、ストーリーを構築するのに終始しており、各人が一体どういった動機のもと動いているのかが判然としなかった。
    二つの教団が出てくるが、片方の教団は表立った信仰と言うものはなく説法を聴く会のような感じで、この教祖の語り口はなんとなく佐々木中を彷彿とさせた。説法の内容は、興味深い部分もなくはないのだけれど、全体的に既に知っていることが多かったので、そこまで引き込まれなかった。
    もう一つの教団は、フリーセックスを謳う教団だったのだけれども、これがいけなかった。この作者は、性行為を描写するのがものすごく下手で、今回のシーンも読んでいて恥ずかしくなるような表現が多く、「こんなこと言わねえよ」という気持ちにさせられる、チープ感満載な表現だった。
    そういって話が進んで行き、物理的に重たい本にも辟易してなかなか読書が進まなかったのだけれども、物語が佳境になるにつれ、ラスト200P程度、各人のバックボーンに焦点が当てられるようになると、初期の頃のあの感覚が蘇ってきたようで、そう、そう、こういうのが読みたかったんだ、と感動した。
    物語も大きな展開を迎え、テロリストたちの主張など、今までの作者には無かった緊迫し、物事を別の角度から見ることを教えたシーンがあり、ラストの説法など印象的なシーンもありつつ、エンターテイメント性に再び戻りながら、各登場人物のそれぞれの物語が終わって行く。
    それまでの物語の複雑さに対してラストはやや安直なエンディングであった感もあるし、登場人物のバックボーンの描写が、完全に独立した章立てでなされている(物語と有機的に絡み合っていない)など、やや不満の残る部分もあったけれど、作者の望んでいる方向性が、自分の求めているそれと一致しているのではないかと確認できて、これからまた更に上を行く作品を書いてくれることを期待させてくれる一作だった。

    某番組などで紹介されて、手に取る人がかなりいるだろうと思うけれど(実際どうやらかなり売れているよう)、この人の作品は本質的に大衆向けでは無いので(繰り返すが最近のはそちらに寄っていたけれど)、合わない人にはなんだこれ、と理解できないだろうなと思う。しかしこういったことを考えている人間がいるんだ、こういう世界の見方があるんだ、ということだけでも分かってもらえれば嬉しい。

  • あいかわらずの気持ち悪さ。。
    人気だけど、不思議

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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