- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716283
作品紹介・あらすじ
「御吉兆!」と鳴く勇猛果敢な鶉_うずら_を連れた若き隠居大名・有月。泣き虫で人に振り回されてばかりの村名主・吉之助。昔なじみだった二人が再会し、江戸を揺るがす難事件、背後に蠢く策謀に挑む!
感想・レビュー・書評
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畠中さんの時代物。
江戸時代ならではの事件がおき、妖怪は出てきませんが、若き日の仲間だった二人のコンビと、うずらの活躍に楽しさがあります。
高田吉之助は江戸で辻斬りに狙われたとき、現れたお武家と鶉に命を救われます。
口は悪いがやたらと見目が良く、腕も立つお武家の有月は、木綿の着物姿で気さくに行動しているが、じつは大名家の人間。
吉之助とは同じ道場で剣を学んだ仲間だった。
長男だけが家と財を継ぎ、次男以下は部屋住みの身で、養子の口がなければ結婚もままならない時代。
どちらも長男でなかった二人は、十数年後、たまたま跡継ぎとなって再会したのです。
巾着に入って連れ歩けるよう躾けられた真っ白な鶉の佐久夜は勇猛果敢な性格で、人の言葉がわかるよう。
ポイントで活躍し、華を添えています。
いまや村名主の豪農となって大名に金を貸すほどの立場となっている吉之助ですが、相変わらず泣き虫で動転しやすい。
有月に振り回されつつ、豪農の不審死事件に巻きこまれていきます。
吉之助の姪の結婚話や、肥料の取引の問題など、ひとつひとつの出来事を解決しながら、しだいに見えてきた大きな陰謀が‥?
百姓、商人、大名という立場の違い。
身分制時代にはたいそうな権威のある侍身分ですが、大名でさえ内実は経済的に苦しい。
なぜそうなったのかという説明もあり、それぞれの苦労がよくわかります。
事件は現実味がありビターで、切なさのある結末。
有月のキャラと鶉の佐久夜が光ってます!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった。
江戸時代のことは時代劇くらいでしか知りませんで、そうするとやはり江戸の町くらいしか知らないことになるのですよね。
百姓の生活は、今も残る文化遺産的住宅やら宿やらでしか伺えない。
金勘定も含めてなるほどと思いながら読んでいました。
高い身分には憧れるけれど、それはいいところだけしか知らないからなのですな、というところは今のよにも通じますよのな。 -
面白かった。
時代物に関しては、実在した人物のものが好きなので、ファンタジー系の畠中さんはこれまで読まなかったが、いただいたので読む。
たまたま、ウズラの佐久夜が登場する以外、妖怪などは出てこなかったからか面白かった!
主人公は、自称大名の有月と、農家の三男坊の吉之助、それに巾着うずらの佐久夜。有月は男盛りの30代の男前。涼しげな顔。安い着物を着ていても漂う気品。剣の腕前も良く、胆力も備わっている。こりゃ、想像しただけで、惚れてまうやろーです。
ただ、深めの内容を扱っているにも関わらず、タッチが軽く、またキャラクターが魅力的すぎて、関心が内容に行きにくい難点ありです。感動はできなかったもん。という訳で、★4。典型的エンタメ作品やと思います。 -
大名?と村名主のコンビが活躍する時代ミステリ。なんといっても勇敢なうずらが可愛くってほっこりしてしまいます。「御吉兆」って鳴くのかー。それは知らなかったなあ。
だけど。作品の雰囲気としてはほっこりばかりではなくて。むしろ辛辣でした。少しずつ明らかになってくるとある陰謀と、それに付随して起こる数々の事件。人々のそれぞれの立場のつらさも、こういうのは案外と知らないことでした。大名が金持ちでないというのも意外。
読後感はなんとも哀切な印象が残ります。彼らの望みは、理解しがたいのだけれど。人それぞれの価値観の違いがこれほど悲しく思えることもありませんでした。 -
(15-86) 若い頃同じ道場に通っていた仲間が今は色々な立場になり、協力したり敵対したり・・・。これは畠中さんの作品に頻繁に出てくるお馴染みの設定だわ。まだ若いのだがほろ苦い思いを抱え、何とか世を渡っていく彼らの物語がとても良かった。
巾着鶉って初めて知った。丸っこい身体をしてるし、確かに懐いたら可愛いだろうなあ。今でもそうやって飼ってる人はいるんだろうか。 -
うずらは可愛い。
筋書きも悪くない。
しかし主人公がなぜこうも泣くのか…。
泣き虫設定とはいえ、あまりに泣きすぎではないか。
泣くこともひとつの暴力だと思う。
主人公の弱虫ぶりを強調する表現でしかないのだとは思うが、もはや不快なレベル。
完全に子ども向けの作品ならまだしも、大人に向けて書かれているのに、あまりにも感情表現の幅が狭く、稚拙すぎる。
主人公になんら人間的魅力を感じられない。のみならず、そのあまりの幼稚さと浅慮に反感すら覚えるのは読んでいて苦痛。 -
うずらってペットにできるの?
スーパーマーケットで買ってきたウズラの卵から雛を飼えす人をテレビで見たけど、
ウズラかあー。
懐にウズラかあー。
餌は、袖の中?ウンチは?してるよね懐に。
だめだ!ウズラが、気になる。
メスだつたら、卵産んじゃう!
だめだ!ウズラに頭占領された。
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厳しい家父長制だった江戸時代。
武士でも農民でも、長男でなければ継ぐべき家も財産もなく、耕す田畑とてなく、嫁ももらえない。
そんな「冷や飯食い」たちは、明日への不安と希望を抱え、小さな道場に集っていた。
そして、十何年かののち…
人々は様々に立場を変えて、再会する。
豪農になった吉之助と、大名になった有月、有月を支える左源太が、幕府の屋台骨を揺るがす大事件を追うことに。
下は肥から、上は武家の家格まで、いろいろなものを売るものだ、とのん気に読んでいたら、なんだか苦くて、無常感まで漂う結末だった。
畠中さんの作品では、江戸の、裕福な町人・商人や、叛骨の戯作者、藩政の外交官たる留守居役たちの内情や苦労が描かれてきた。
今回は村名主でもある豪農。
だんだんと江戸が見えてくると、長い太平の時代だったが、その陰では、上と下がどんどんと入れ替わりつつあったのだなあ…と実感する。 -
うーん、あまり面白くなかった。
主人公吉之介が泣き過ぎなのか、
大殿様有月の剣が強すぎるからなのか、
大名の売買の話が現実味がないのか。
もっとも現実味がないのが、
うずらの活躍だったからか。 -
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正体不明の“大名"と泣き虫の村名主が江戸を揺るがす難事件に挑む!
若き日に同じ道場に通った貧乏武家の部屋住み・有月と百姓の三男・吉也。
金もなく、家にも町にも居場所がなく、この先どうやって生きていけばいいのかと
悩む日々を共に過ごしてきた。
時は流れ、吉也は東豊島村の村名主となり吉之助と改名。
ある日、大名家へ向かう途中に辻斬りに襲われるが、
「御吉兆ーっ」という鳴き声とともに飛び込んできた白い鶉とその飼い主であるお武家によって命を救われる。
お武家の正体は、十数年ぶりに再会した有月だった。
涼やかな面で切れ者、剣の腕も確かな有月は大名を自称するが、どう見ても怪しく謎めいている。
そんな有月と勇猛果敢な鶉の佐久夜に振り回されながら、吉之助は江戸近隣で相次ぐ豪農不審死事件に巻きこまれていく。
一つ一つの事件を解決するうちに、その背景に蠢く、江戸城を揺るがす恐ろしい陰謀が明らかになり――。
新しい畠中ワールドの幕開けとなる、痛快時代小説の誕生です!
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畠中さんのシリーズもののキャラクタはどれも好いなぁ。今回も、見目麗しいが、すでに隠居の身で一見ふらふらしているように見える有月さんといい、大名家にお金を貸すほどの豪農であり名主でありながら、相変わらずに泣き虫の吉之助といい、出来過ぎでないところが親近感を持たせてくれて、物語をより近しく感じさせてくれる。そして何よりタイトルにもなっている、有月さまの巾着鶉の佐久夜の賢さと愛らしさが群を抜いている。あちこち手を回し、綿密に調べ、罠を張って犯人をおびき出し、事件を解決する手腕も見事だが、佐久夜の活躍も見逃せない。たのしみなシリーズになること間違いないと思わされる一冊である。