- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716535
感想・レビュー・書評
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家族がテーマの短編集。遠い昔に手を離してしまった家族、歪んでしまった家族、喪った家族を思い出すときの懐かしい香り。
「海の見える理髪店」
大物俳優が訪れたこともあるという、小さな理髪店。店主は髪を整えながら、若者に昔のことを語り…。
「いつか来た道」
帰省の際、折り合いの悪い母と久々に再会する。霞がかった母の記憶と思い出に触れていく。
「遠くから来た手紙」
夫に対しての不満が募り、子どもを連れて実家へ。亡き祖母の部屋で眠ることになったのだが、夜中になると妙なメールが届く。
「空は今日もスカイ」
田舎に引っ越してきた茜。近所を散歩しているうちに仲良くなった男の子は、ちょっと変わっている…。
「時のない時計」
亡父の形見の時計を修理に。修理している間、時計屋は娘のことを話し出す。
「成人式」
不慮の事故で死んでしまった娘の代わりに、父母で成人式に出席することを思いつく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人殺しの父を持ったことないのに、認知症の母を持ったことがないのに、ホームレスに匿ってくれたことがないのに、娘を亡くしたことがないのに。
“ああこういうの身近にあったかもしれない”というようなリアルさがある(中には戦中の祖父からのメールが来るなど、ファンタジーな話もあるが)。
特にお気に入りの話が「成人式」。
少しネタバレになっちゃうが、「成人式」は文字通り成人式に参加する話だ。参加するのは、成人を迎えるピチピチの娘––––ではなく、40、50代の親だが。
ナゼかは割愛するとして…泣けて笑えてスッキリする、後味の良い話だった。
大人になると世間や人の目を気にして、気付くと年相応に生きている。
子供の頃に置いてきた、
“無茶をする、羽目を外す、馬鹿になりきる”
毎日とは言わなくとも、そういう日があってもいいんじゃないかなあと思う。 -
主の腕に惚れた大物俳優や政財界の名士が通いつめた伝説の床屋。
ある事情からその店に最初で最後の予約を入れた僕と店主との特別な時間が始まる「海の見える理髪店」。
意識を押しつける画家の母から必死に逃れて十六年。
理由あって懐かしい町に帰った私と母との思いもよらない再会を描く「いつか来た道」。
仕事ばかりの夫と口うるさい義母に反発。
子連れで実家に帰った祥子のもとに、その晩から不思議なメールが届き始める「遠くから来た手紙」。
親の離婚で母の実家に連れられてきた茜は、家出をして海を目指す「空は今日もスカイ」。
父の形見を修理するために足を運んだ時計屋で、忘れていた父との思い出の断片が次々によみがえる「時のない時計」。
数年前に中学生の娘が急逝。
悲嘆に暮れる日々を過ごしてきた夫婦が娘に代わり、成人式に替え玉出席しようと奮闘する「成人式」。
人生の可笑しさと切なさが沁みる、大人のための“泣ける"短編集。 -
時のない時計
なんとなく好きだった。
その時計、偽物ですよ
父親のことを思い出し、見栄っ張りな父親はやっぱり自分の知っている父親だと安心して微笑んでしまうところ。
成人式
そんなに深い話じゃないかもしれないけど、心に負った傷は本人じゃなきゃわからなくて、思い出にするのも辛いこと。
深い傷は自分だけで隠しこむのじゃなくて共有して思い出に出来れば幸せだなぁ
短編小説で内容もなんか軽くてつまらないと思って読んでたけど、空は今日もスカイからなんか心に残る話になって不覚にも成人式でうるっときてしまった。
家族を思う気持ち、誰にでもある傷やマイナスの感情を読みやすく思い出させてくれて後味も良かった。いい本だった。
つまり私も大人になってるってことなのね。
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小さな物語短編集。
どれも細やかな表現の優しいお話。しんみりじんわりする。
亡くなった娘の成人式に出席する話は哀しみに笑いがあってとても好きだった。
男性作家さんは女性の描きかたが男性目線過ぎることが多々あるけど荻原さんの描く女性は清々しい。
とても良い本だった。 -
直木賞受賞作。海の見える理髪店を含む6話の短編集。
どれも日常にある話、別れ・再会・喜び・悲しみ。短い話でも深く入り込めたし涙腺崩壊寸前のものも。
読んだ後、大切な人に会いたくなる作品だった。 -
最後に向かうにつれどんどん切ない話になっていく。
人間の強いとこ、弱いとこ、いろいろと描かれていて心に沁みてくる。
「明日の記憶」は途中でやめちゃったけど、もう1回読んでみるかな。