海の見える理髪店

著者 :
  • 集英社
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感想 : 560
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716535

感想・レビュー・書評

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  • 心の距離が離れてしまった家族との距離を縮める1歩を踏み出すお話の短編集。
    最後の『成人式』だけよかった。
    他は、そこから物語がいろいろ発展するような続きがあれば面白そうだなという、序章のお話って感じ。
    『成人式』の娘の代わりに成人式に出る夫婦が大好き。
    どうか、この夫婦がまた笑える日が来ますように…。

  • 図書館で第一155回直木賞受賞2016のシールを見て貸出。

    どの話も家族、特に親子の関係性に関するもので、子どもが親に抱えるモヤモヤや葛藤、親が子どもに対して感じる後ろめたさや見栄が、時間の経過とともに顕になったり、飲み込めるようになったり。

    後味は良いとは言えない。
    親子とは言え人と人とのかかわりってこういう感じだよね、でも親子だからこそのこういうところあるよね、という自分の言葉で上手く表せない気持ちが時計、調髪、絵画等、それぞれの軸となるものを通しながら進んでいくことで、じわじわ心に降りていくような感覚になった。

    親子って何かと美化されがちだし、甘えというか許されがちだし、他人とのかかわりにはない特殊な関係性があると思っていて。
    それを実の親子、家族以外の関係性も織り交ぜながら対比的に進んでいくストーリーに、子どもとして読むと共感もあり、親として読むもやりきれなくもなり。
    でもそれって、子どもの前で強くありたい、ちゃんとして見られたいって気持ちがあるからこそかも、なんて指摘されたような気持ちにもなり。

    老いとともに、または成熟ともに、見え方は変わるし、それは切ないようなでもすっきりするような不思議な感覚になった。

    なんかまとまらないけど、そんな感想。
    好きな話は、
    タイトルと表紙にもなっている「海の見える理髪店」
    爽やかな理髪店の描写と重たい話のギャップ。ふたりの距離感。暗いのだけど明るい予感がする終わり方。

    ちょっとドキッとさせられた「いつか来た道」
    コントラストの強すぎる崩れた化粧の舞台裏にあった『杏子 PM2:00 』のメモに心が揺さぶられた。
    弱さを隠すためにどこまでも強くあろうとした母。

  • 家族がテーマの短編集。家族を失った悲しみや切なさなどを自分の中で折り合いをつけ希望に進み出す。そんな登場人物たちが丁寧に描かれていた。いることが当たり前だと思っていた家族の存在。それはとても特別で幸せなことだと改めて思った。表題の「海の見える理髪店」と「成人式」が特に好き。

  • なかなかヘビーな事情を抱えたそれぞれの家族の短編集。うちはうち、よそはよそだけど、自分の家庭にも通じる問題もあり。感動よりも、ツラさがが勝ってしまった。。

  • 2023/05/06

  • 短編集だが、じんわり心に残ったのはやはり表題作。
    大きな鏡に美しい海が映る風景を想像しながら穏やかな気持ちで読んだ。

    他はファンタジーな要素もあったり、少し世界に没入しづらかったり。
    とは言え、どれも中々うまく伝えられない家族への想いが込められていた。


    「喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集」

    帯書く人もうまくデコレーションしたもんだ。


    あと、個人的にかわいかったのが、鳩時計の音の表現。
    これから文章で鳩時計の音は
    はぽ はぽ
    と表しましょう。

  • とりわけ優秀なのは、『海の見える理髪店』、『いつか来た道』『成人式』。『時のない時計』もすごくいい。
    『海の見える理髪店』は一人男の人生を淡々と綴り、人生というのはいかに短く、無常な物なのかを描いた。
    『いつか来た道』では、欠陥のある人間は自分に、自分親族にどれほどの絶望さを与えるのかを描いた。ただ現実世界では、その関係はもっと調和不可なことになる。
    『成人式』、泣くことと笑えること、生と死、絶妙に仕込んでいる。
    『時のない時計』、意地悪の職人、変凡な男たち。愛とは決して口にできないこと。そして愛はそれほど美しい物でもなく、自己中で、形の貧相な物であることを見事に表現した。

  • 一度離れてしまった家族の物語
    第三者視点や身の回りのものから、身近にいた家族の知らなかった一面が知れるところが良かった。

  • 短編集。どの作品も物悲しさや少し毒気のようなものがあり、なんとなく後味の悪さを感じた。波長が合わなかった。

  • すごいよこった。
    荻原浩さん、改めて色々読み込もうと思った。
    空は今日もスカイが最高に良かった。
    自分の世界にどっぷりっつかっている小学生のプチ家出、冒険の物語。
    どこまでも自分中心に世界が回っていて、マイペースなのがよかった。
    幼い頃の自分をみるようだった。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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