ミシンと金魚

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 3094
感想 : 299
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717860

感想・レビュー・書評

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  • 語りの視点がとても斬新で惹き込まれるような作品でした。

    ガタイのいいみっちゃん、ホンモノのみっちゃんといった、みっちゃんのことを言っているはずなのに不思議な表現にはじめは戸惑いました。しかし、物語が進むにつれ、同じことを何度も質問したり、自分の昔話を語ったりする姿が描写され、主人公が認知症であることが推察され、表現の面白さが際立ちました。

    またこの「みっちゃん」なる人物の由来にも深い物語があって、現代の物語と過去の物語が二層に連なっているのがとても面白いし、グッときました。

    また「ミシンと金魚」というタイトルが主人公の人生を象徴する2つのキーワードであることが示唆される章からスイッチが入ったように読む手が止まりませんでした。

  • 認知症を抱える高齢女性のカケイさん。彼女が語り手となる小説。

    すぐ忘れてしまっても、感情はあるのに。言葉にできなくても、分かっているのに。そんな状況がカケイさんの目線から描かれる。カケイさんの勝気な語り口調と憎めない人柄が物語を暗くし過ぎない。

    生まれた時代背景や生活歴。隠された過去までは分からなくとも、その人の歴史を少しでも知っていれば、その人の言動の裏にあるものを読み解くことができるかもしれない。
    カケイさんにとって「みっちゃん」がどれほど深い意味を持つ特別な呼び名なのかということも。

    人生経験が豊富なお年寄りの強かさ。若者より一枚も二枚も上手なんだってこと。ケアマネジャーとして働く永井みみさんだからこそ書けた小説。著者のように想像力を持って人と関わっていきたいと思った。

    そして最期は事実よりも感情。死ぬ直前まで残っている感覚と感情。カケイさんの最後の行為はとても尊く感じた。


    たけさんの感想を読み、気になっていた小説。
    読めてよかった。感謝です。

    • ひろさん
      shukawabestさん、おはようございます(*^^*)
      コメントありがとうございます。
      shukawabestさんの「月とコーヒー」の感...
      shukawabestさん、おはようございます(*^^*)
      コメントありがとうございます。
      shukawabestさんの「月とコーヒー」の感想、とっても共感でした♪そうそう、あとがきも良いですよね~(*´˘`*)私も吉田篤弘さんの他の作品も読みたいなあと改めて思いました。

      「ミシンと金魚」も読んでよかったと思う作品でした。機会がありましたらぜひぜひ♪

      自分のお気に入りの作品を読んでもらうって、なんだかくすぐったいというか、嬉しいですね♪こちらこそ、読んでくださり、また素敵な感想をありがとうございました!
      2022/08/01
    • shukawabestさん
      こちらこそ、ありがとうございます。次、ひろさんのオススメ読むとしたら「線は、僕を描く」ですかね。全く知らない作家なので。ただ、読むのはかなり...
      こちらこそ、ありがとうございます。次、ひろさんのオススメ読むとしたら「線は、僕を描く」ですかね。全く知らない作家なので。ただ、読むのはかなり先になりそうです。読みたい本が溜まって来ておりまして•••。夜分に失礼しました。
      2022/08/01
    • ひろさん
      私も読みたい本が溜まってます~。まぁ、次に何を読もうか悩む時間も楽しいんですけどね♪
      「かたみ歌」がとてもよくて、次の朱川作品は「花まんま」...
      私も読みたい本が溜まってます~。まぁ、次に何を読もうか悩む時間も楽しいんですけどね♪
      「かたみ歌」がとてもよくて、次の朱川作品は「花まんま」にしようかなと思っています(*^^*)私も読むのはまだ先になりそうですが、楽しみにとっておきますね♪
      2022/08/02
  • 壮絶な人生を送った認知症主人公のひとり語り。ずっしり重く、心が詰まる作品。私は救いを見出せなかったので、とても辛い読後感でした。

  • 独特な語り口調に引きこまれた。
    認知症のカケイさんの思考と発している言葉のギャップが、なんだかリアルな感じがした。
    覚えないといけないことは忘れてしまい、忘れたいことは忘れられないというのが切ない。
    壮絶な人生を生きたカケイさんは、結局幸せだったのだろうか。
    色々と考えさせられる作品だった。

  • 私も少し医療に関わっている。
    デイサービスの人とも触れ合う機会もあった。
    名前も忘れてしまったが、あの時のお爺さんやお婆さんの顔が浮かぶ
    当たり前だけど、人には人生があり、皆必死に生きてきたはずなのだ。その人生を垣間見れると、胸にグッとくるこの感情はなんなのだろう。貴方に優しくした自分は誰かにわかってもらえて優しくしてもらえるのだろうか。年老いて、訳がわからなくなった時に、誰かが私の人生を尊厳をもって受け入れてくれるのだろうか

  • おもしろかった。
    そんな感想で済ませる本ではないけど、
    カケイおばあちゃんの止まらない語りがおもしろい。

    人生、壮絶で、
    歳をとったら生活のいろんなことがしんどくて、
    あやふやで、でもそういうしんどさや、今までにあったうれしかったこと、悲しかったこと、全部俯瞰するようにフラットになって、最後には一つにひっくるめられて懐かしさだけが残るのかな。
    それはもしかしたら、希望なのかもしれない。

  • 川上未映子、金原ひとみも絶賛! デビュー作にして文学界を騒然とさせる認知症老女の物語とは...... - エンタメ - ニュース|週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト]
    https://wpb.shueisha.co.jp/news/entertainment/2022/02/04/115453/

    新人賞の季節 「すばる文学賞」受賞作が出色の出来 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/711633

    ミシンと金魚 | 集英社 文芸ステーション
    https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/mishintokingyo/

    ミシンと金魚/永井 みみ | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771786-0

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <書く人>身に染む死 目線低く 『ミシンと金魚』 作家・永井みみさん :東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-...
      <書く人>身に染む死 目線低く 『ミシンと金魚』 作家・永井みみさん :東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/185562?rct=book
      2022/06/28
    • naonaonao16gさん
      にゃんこさん

      記事ありがとうございます~
      拝読させていただきましたー!

      作家の永井さん、お人柄に触れる機会がなかったのですごく興味深く拝...
      にゃんこさん

      記事ありがとうございます~
      拝読させていただきましたー!

      作家の永井さん、お人柄に触れる機会がなかったのですごく興味深く拝読しましたー
      コロナをきっかけに途中で書き直した、というエピソードが印象的です。
      想像力ってあっても、やはり実感とは全然違うことってあるし、想像と近くても実際もっとしんどかったり、わたし結構あるんですよね。
      で、人を支援するってなんか途中から傲慢になることってあって、それを修正することの繰り返しで、それがエピソードとして描かれていてすごく面白かったです。

      自分では探せない記事でした~
      ありがとうございました!!
      2022/06/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      naonaonao16gさん
      ニャン!
      naonaonao16gさん
      ニャン!
      2022/06/29
  • 認知症を持ち、介護を受けて生活している高齢のカケイさん。
    彼女の視点で日常が進みつつ、カケイさん自身がこれまでの人生を思いかえす物語。

    作者の永井さんはケアマネジャーの仕事をしながら今作を執筆したとのこと。
    読み始めてまず、文章の読みにくさを感じた。文章は全て地の文で進み、語りはあちこちに話題が飛んで、一文がやたら長い文章も度々あったからだ。
    数ページ読んで、この物語は徹底して認知症の女性の目線を描こうとしているのだということが分かる。
    長い人生を生きてきた女性の、これまでの人生を聞かせてもらっているような感覚があった。そのためカケイさんの言葉には重みが感じられて、特別な言葉ではなくても心に残るものがあったように思う。
    ラストは切なさがありつつも、「良かった」と思える素敵なものだった。
    認知症を持つ方のなかには、カケイさんのような世界を生きている方もいるのだろうと思う。
    色々な世界を生きる人に思いを馳せ、その人の世界や人生を知ろうとする姿勢を持てる自分でありたいと感じた。

  • 独居認知症老女カケイさんのお話し。
    介護スタッフを全員をみっちゃんと一括りで呼んでます。
    本物のみっちゃんの存在が後半でわかります。
    そこからは、捲るページが止まりませんでした。
    みっちゃんたちだけの遺言書も作成半ば、最後(死期)を迎える瞬間もおもしろい事がないか、きょろきょろ今を探しているカケイさん。そんな姿を描けるのは、筆者がケアマネジャーの所以であるから納得ができる作品です。
    そんな人生の先輩の物語です。
    いつの間にか頬に涙が伝っていました。

  • あまりに壮絶な、語り手・カケイの一生。
    母親が明治生まれとのことだから、大正か昭和初期の生まれなのだろうか。
    カケイの人生も、亡き者を含めカケイの周りの人たちの人生も、本書を読み終えて反芻すればするほど、表紙のように気持ちがぐるぐるとなる。
    泣けてくるといえばそうなんだけど、それで片付けていいものかこの感情は。彼女らの人生は。
    様々な理不尽苦しみ孤独罪悪感老い、でもしあわせもあった。
    「ミシン」と「金魚」は、良くも悪くもカケイの人生に強く残るものだったのだろう。
    ミシンには誇らしげな思い出も苦々しい思い出もある。
    もう、なんだろう。苦しいけれど、まさに人生を描いている、とても素晴らしい作品だった。これ以上何か言うことがあるだろうか。

    花はきれい。私も見ることが叶うなら、その花を見てみたい。

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