- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087754032
作品紹介・あらすじ
放射能を逃れ、東京から四国の白縫へ疎開した夫婦。村には口を縫う神さまの言い伝えがあった。ホラー小説より恐ろしい、坂東眞砂子の最高傑作。書き下ろし長編小説。
感想・レビュー・書評
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田舎暮らしに対する憧れが打ち砕かれる本(笑)
後味は悪いが結構鬼気迫る詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
くちぬい とは…
口を縫う 口をつぐんで何も言わない 隠すこと
自分たちの意に添わないものは排除する集落の人たち…そして口をつぐむ…
東京から移住した夫婦を、追い詰めていく…
怖い‼️ -
書き下ろし作品。
福島の原発事故の翌年、妻は拡大す放射能汚染から逃げるため、夫は定年退職後田舎に自分の陶芸の穴窯を持つ夢を叶えるため、高知県奈祁村白縫に移住して来た。
十戸ほどの老人ばかりの集落は、表面上はにこやかだが、外部の者に対しては結束が強く、絶対に余計なことをしゃべらない。「くちぬいさま」という神様に口を縫いつけられるという。
夫が作った穴窯が「くちぬいさま」を祀る祠へ通じる道にかかっている、として取り壊せと言われたのを断ってから、執拗な嫌がらせが続いた。
猫の死骸が吊るされ、愛犬が殺され、水源からのパイプが切断され、飲み水に農薬らしきものが混入されても、警察も医者ももとりあわない。
唯一、役場の職員が過去にも集落でいじめと不審死があったことを知って、心配する。
家のガラスを割られて犯人を追いかけた夫婦は、猪狩りのために鉄砲を持って山に入った老人たちに逆に追い詰められてしまう。
青そこひ(緑内障)になると「くちぬいさま」の神意を行うことが許されるという。結末もだが、決して荒唐無稽とは言えない怖さがある。 -
どろどろの集落の話。住みたくない。
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老後に田舎生活を夢見ている人もまだ多いのではないだろうか。知らない土地で、新しい生活。ワクワクするよりも知らない土地に長年住んでいる人とのコミュニケーション、新たな人間関係の構築、見知らぬ土地での孤立感、慣れた生活との離別は大きなストレスになるだろう。あり得そうで静かに怖い話だった。
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2019/4/17
面白い、映画にしたら怖そう。 -
ロスジェネ、ゆとりなど、世代によって独特な思考があるように、団塊世代前後にも特徴的な傾向があるように思います。
昭和一桁生まれの人びとは、思春期前後の終戦によって価値観の崩壊を経験したことにより、自分たちが日本を作り上げなければいけない使命感で生き、新たな価値観を生みましたがが、それを今でも必死に守ろうとしているように思えます。
しかしその、例えば、終身雇用や持ち家神話、東京至上主義、年金制度は崩壊したにもかかわらず、それにボクも縛られざるをえないことに腹立たしさを感じます。
本書の違和感は、読了後も続きますが、久々に考えさせらたれ小説でした。 -
②/34
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舌禍に巻き込まれ最期は皮肉にも舌癌で命を落とした…存在は知っていても作品は読んだことのなかった坂東さん、やはり彼女の何事においてもストレートな姿勢は賛否両論となるであろうことを強く感じる。
作家の誰もが書くことを躊躇した震災後にいち早く災禍をモチーフとしていることもそのひとつであるのだがこの救われない結末とするのであれば敢えてそれが必要であったのだろうか?
作り方としてもそうで中盤まではのらりくらりの直球勝負で挫折しそうになることもしばしば、「いったい何が書きたかったのか?」と聞いてみたいが既にその口は縫われてしまったようで…