- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087754223
感想・レビュー・書評
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とある日本の別荘地での出来事。
そこのある屋には、ウイリアム・ベックという世界的大富豪が滞在している。
その彼の別荘で殺人事件が2件立て続けに起こる。
ライター、そして探偵である主人公、頸城がその真相に迫っていく。
独特の表記が少々読みづらかった。
殺害される「ロジャ」やハウスキーパ、サリィ、というように語尾に「ー」をつけないことに最後まで慣れなかったためだ。盛り上がりを抑えたような書き方が冗長な印象で、物語自体はきちんと進んでいるにもかかわらず、遅々としている気がしてならなかった。
加えてこの長さだ、途中で退屈し始めている私がいた。
犯人について、また、動機については解くことができなかったため、その点については面白いと思った。
しかし、動機にはあまり納得できたとは言いがたく、消化不良の思いが残る。
もちろんそれなりに伏線はあり、しっかりと回収してはいるのだが。
頸城のインタビューがそれにあたる。
著者の感性と合わないのかもしれない、個人的には夢中になれた本ではなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに森さんの本を読んだ。
読んでから知ったのだけど、これって「ゾラ・一撃・さようなら」の続編なのね。持っているけれど積読している…ちゃんと調べてから読めばよかった。
とはいえ、今作で主人公の過去に興味を持てたのですぐに読もうと思う。
主人公がわりと普通というか、とっつきやすいのですらすら読めたし、一方で相変わらずの森さんの世界観も楽しめた。
私のように、登場人物を介して森さんの思考回路を垣間見たい人間には楽しい作品。ただ、ミステリーとしてはどうだろう…終わり方はパッとしないのではないかな。 -
「これから、きっと、どこかで女と会うんでしょう?」
「女って、誰のこと?」
「とぼけてる」
「まあ、人間のうち半分は女性だからね。もしかしたら、会うかもしれない」
『その言葉の嫌らしさは、僕が抱いている気持ちには微塵も存在しないものなのに、そのままは伝わらないだろう。それでも、その言葉しかないというのが、つまり、言葉が生まれながらにして汚れていることの証拠だ。』
「そうだね。不謹慎な話をしているね、僕たち」
「だって…」
「まあ、ビジネスっていうのは、ほとんど不謹慎なものだけれど」
「そうよ。そのとおり」
「何をしに、こちらへ?」
「なにも… ー 父のお供で。でも、パーティがあるわけでもないし、話し相手もいないの」
「そのうち、パーティくらいあるかもしれないし、話し相手くらいなら、いるでしょう?」
「今は、いるみたい」
「そう、それもある。すべての情報を素直に受け入れる。自分の間違いにできるだけ早く気づくセンサを持っていること。人から指摘されるまえに気づいた方が良いからね」
「どうしてですか?」
「自分で気づけば、バージョンアップできる。人が指摘すれば、それはエラーになる」
「ここで、どなたかお待ちなのですか?」
「いえ、誰も」
「座っていい?」
「たぶん」
「たぶんって?」
「さっきまで、そこに刑事さんが座っていたから、たぶん、君が座っても、壊れたりはしないと思う、という意味」
「それは、若いからだね、たぶん」
「頸城さんだって、若いじゃないですか」
「ありがとう ー 正直言うと、こう見えても、君くらい若いときもあったんだよ」
「そう…。私、仕事ってしたことがないの」
「バイトも?」
「ええ、一度もない」
「そう、それは、素晴らしい」
「え? どうして?」
「仕事なんか、しない方が良い。人間として、その方が素晴らしい」
「頸城さんは、昨日の殺人をどう思いますか?」
「警察が解決してくれると良いな、と思っているけれど」
「でも、探偵なんでしょう?」
「探偵といっても、誰かが僕に、殺人について調べろと依頼したわけじゃないからね。ほら、ペンキ屋さんだったら誰でも、公園のベンチを自分の好きな色に塗れるってわけじゃないよね」
「今から、どこかへ行きたいな、私」
「どこへ」
「どこかへ」
「べつに、僕は止めないけれど」
「そうじゃなくて、迎えにきてくれないかなぁって…。ランチはどう?」
「ああ、そういう意味か。だったら、そう言えば良いのに」
「言ってると思んだけれど」
「ええ、あるでしょう? 小さいのに糸を通して、ブレスレットとか作るの。もう困っちゃうのよ。沢山沢山作って、私にくれすぎるわけ。腕中ブレスレットになるくらい。マサイ族じゃないんだから」
「マサイ族って、そうなの」
「いえ、知らないけれど」
「ツイッタに書くと、炎上するよ、それ」
「暇だった?」
「君のためなら、いつでも暇だよ」
「でも、あれね…。うーん、言いたくはないけれど、いよいよ、本が売れそうな条件になってきたんじゃない?」
「君が出張してこられたのも、それなんだね?」
「もちろん、そうだよ。一昨日の事件がなかったら、無理だったと思う。今どきはね、出版社どこも厳しいんだから。特に、私みたいな非正規は」
「僕なんか、もっと非正規だよ」
「君は、どっちかというと、非常識」
「同じ屋敷で人が殺されたばかりだっていうのに、こんな話している方が非常識」
「絶対的な正義って、何ですか?」
「僕は、そんなものはないと思っているけれど、世界には、そういうのが沢山、いろいろあるんだってこと」
「テロみたいなもののことですか?」
「そう。自分の命だって簡単に投げ出せるくらい大事な正義があるんだ。そんなものを知ったら、人の命なんて、立入り禁止の標識くらいの意味しかない。駄目ですよと言って止められるものじゃない」
「だけど… ー それでも人を殺しちゃいけないわ」
「うん。君の言うとおりだ。ただ、そういう綺麗な心があっても、いくら願ったり祈ったりしても、止められないものがあるということだね」
「悲しいですね」
『人間の歴史は、誰かの声を示すために、膨大な数の人命を奪うことの繰り返しだった。それは今も、毎日、世界のどこかでまだ続いている。』
『この事件にだって、僕は正義の香りを感じる。他者を排除するだけの正義を持っている者が、引き金を引いたのだ。その指は、微塵も震えなかったはずだ。』
「あ、僕だけど。悪いね、仕事してた?」
「してた。残業、でも、近くには誰もいないから、OKだよ。私だけ残業」
「どうして、君だけ?」
「どうしてだろう。私が仕事が遅いから? それとも、私の仕事が多すぎる?」
「どっちなの?」
「わからないわ。でも…、そんなこと、どっちでも良いでしょう。やるしかないんだから」
『気持ちの良い朝だった。朝が気持ちが良いなんて、最近まで感じたことはなかった。それに、どうして気持ちが良いと感じるのかもわからない。ただ、良かった、今日も生きている、という確認なのだろう。』 -
モテモテ探偵に、いかに壮大な失恋をさせるか。それが主題のシリーズかもしれない。3作目も用心せねば。あぁ、心が痛い、回路が途切れる。
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ぼんやりとしている
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2015/08/03
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「ゾラ・一撃・さようなら」の続編。
IT長者の別荘で起こる事件に,取材中のライタ兼探偵が巻き込まれる。
Vシリーズの頃のような軽快で小粋なノリ。
森ミステリィなので事件そのものはまぁ・・・。
エピローグのやりとりの素敵さは異常。 -
探偵でありライターである頸城が,インタビューやらデートやらしながら飄々としているのが,殺人事件がそこにあるのに,緊迫感がなく独特の空気感があって面白い.トリックはヒントがたくさんあったのに気がつかなくてがっかり.
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いいなぁ
森さんいいなぁ
静かでクリアで理路整然とした文章
そして思考
こんな風に生きたい
常に自分を客観視できる自分でいたい
いかに自分が曇っているかがわかる -
映画を観た後のような読後感