政と源

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087806854

感想・レビュー・書評

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  • 東京下町。元銀行員の堅物で、家庭を顧みず仕事一辺倒に生きてきた国政と、幼い頃からつまみ簪職人として生きるも、かなり破天荒な源二郎。合わせて146歳の幼なじみの二人のお話。
    国政のイジイジした性格にはイライラさせられたが、昭和のお父さんって案外こういうのかもなぁと途中から少し可哀想に思えた。方や、べらんめえ的な源二郎の方も近くにいたら頼りになりそうだが、身内としてはどうなんだろう?両極端な生き方なのに、お互いに少し足りない物を補いつつ生きてきた。もう腐れ縁で離れられそうもない。そんな二人の関係が羨ましくも思う。
    戦後再開した二人のシーンが心に残った。

  • 幼馴染のお爺ちゃん2人が主人公。性格が全く違う2人はこの歳になってもくだらないことで喧嘩する。それでも実は互いを大切に思っていて、言動の節々にそれが見え隠れするのがいいです。こういう話好きだな。
    図書館で見つけてたまたま借りた本だけど気に入りました。実家の母も好きそうなストーリーなので、アマゾンで買って実家に送った。母の読後の感想も楽しみです。

  • 中を見ないで読み始めた、知ってたら多分読まない本だと思う。
    一行読めば大体見当がついた。、
    悪くはないけどね読むほどではない。

    東京墨田区の東京空襲を経験した
    簪職人の源二郎と銀行をリタイアして何もすることのない幼馴染の有田国政の二人の日常。

    まあ、一種の三浦しをんお仕事本の括りにはいる?
    雑誌に毎月掲載された文を
    本にしたみたい。

    雑誌に載ってるのを読むくらいかちょうどいい。
    飛ばし読みした。

  • 荒川と隅田川に挟まれた三角州のような墨田区Y町
    大学を出て、勤勉さがなにより大事だと銀行に入って働き今は年金暮らしの有田国政73歳
    小学校もろくに卒業せず、子供と時分につまみ簪職人に弟子入りし、己の腕一本で
    でやっていけるようになってからは、気の向くままにしか仕事をしない堀源二郎73歳
    幼馴染とはいえ二人は正反対と言っていいほど生き方も考え方も違っている。
    しかし喧嘩をしても仲直りをし何故か一緒にいるから不思議だ。

    国政は数年前に突然妻が娘の所へ家出し、妻からも娘からも無視され孤独だ。
    仕事の忙しさを言い訳に家族と向き合っていなかったから当たり前だ。
    源二郎は早くに妻を亡くし子供も居ないのに、徹平という若い弟子を取ってなんだか楽しそうにしている。
    そんな源二郎に国政は薄暗い苛立ちを抱えている。

    ●『政と源』 源二郎の弟子の徹平が昔付き合っていた不良仲間に暴行と恐喝をされ、それを政と源  が退治する…。

    ●『幼なじみ無線』 ぎっくり腰になって動けなくなっている国政を虫の知らせて駆け付けた源二郎が介抱する…。

    ●『象をみた日』 徹平の作ったつまみ簪アクセサリーを上野で販売していると…。

    ●『花も嵐も』 二人で初詣に行ったら源二郎の妻の事で言い過ぎて気まずくなってしまう。そこで若き日の源二郎と妻の出会いを思い出し、自分の妻との出会いなどを思い出し妻に会いに行く決心をする…。

    ●『平成無責任男』 国政は勇気を出して、横浜に暮らす娘一家を訪ねるが全く歓迎されなかったが、やっと、妻に帰る気があるかと問うことが出来た…。

    ●『Y町の永遠』 徹平とマミとの結婚式の仲人を依頼された国政は頑なに仲人を拒否する妻に毎日葉書を送る…。

    ゴールや正解がないから終わりもない。
    幸せを求める気持ち。自分がしてきたこと。
    それらに思いを馳せては死ぬまでひたすら生きる。
    その時間を永遠というのかもしれない

    政と源のような年齢になっても二人のような素敵な関係を続けられる
    友達がいるといいな

  • ラストが爽やか。
    それまでの国政さんのうじうじが、すーっと薄れていった。
    良かった。

    国政さんは人に拒絶されるのが怖くてなかなか一歩が踏み出せない。
    別居中の奥さんにも、結婚して一児の母になった娘にも、可愛い孫娘にも、どんな風に話せばいいか分からない。
    会いに行っていいのかと足踏みしてしまう。
    国政さんのそんな逡巡が嫌になるくらい分かってしまう。
    もう本当に嫌だ。
    こんなうじうじが何のプラスにもなっていないことなんて知ってるよ。知ってるけどどうしようも出来ないんだよ。
    読みながら同族嫌悪でイライラ…。

    国政さんの幼馴染の源二郎さんは国政さんとは対照的。
    若い弟子に慕われ、町内でも顔が広い。
    でもこの軽やかさは天性のものですよ…と私などは(きっと国政さんも同じでしょう)思ってしまうのです。
    そんな自分にまたイライラ…。

    この小説はそんな国政さんと源二郎さんの友情の日々を描いている。
    大事件が起こるわけではない。(途中ちょっとバトルがありますが)
    地味に喧嘩したり、仲直りしたり、(主に国政さんが)嫉妬したり、ご飯を食べたり、昔のことを思い出したり、なんてことない日常。
    でもそんななんてことない時間を積み重ねることでしが、人は人と繋がれない。
    相手への気遣いを伝えること。
    相手から差し出された手を握り返すこと。
    その一つ一つを疎かにしちゃいけないんですね。

    照れくさくても、嫌がられないかなって不安になっても、最初はおどおどとでも近付いて行く。
    どうしても無理なら潔く諦める。
    でも、自分は嫌いにはならない。
    そんな強い人間になりたいなと思った。

  • 下町のハートウォーミングストーリー。
    主人公は70歳代の幼馴染2人なんですよ。
    片方は40代で妻を亡くしたつまみ簪職人、もう片方は70歳になった頃に妻に出て行かれた元銀行マン。
    死がわりと身近にあって、体に痛みも出てくるお年頃。

    老後の生き方についてふいに考えさせられる物語でもありましたね。
    今の団塊世代の男性もきっと、家庭を顧みずに我武者羅に働いてきた人が多いんじゃないでしょうかね。
    終着点が熟年離婚だとすれば、なんだか寂しい。

    ところで主人公のこのお二人、案外子どもか!ってくらいに拗ねたり意地を張ったりする場面もあるんですが、こんな風に長く付き合いのある関係を持てるって、本当に素晴らしいことですよね。
    それも、こんなに違う二人が。
    違うといえば、作中で登場する徹平&マミちゃんもまた素晴らしい。ちょいちょい登場する二人の幸せな姿と、困難を乗り越えようとする漢気溢れる姿にぐっときました。

    この本は素晴らしいところがいくつもあるんですが、その1つがまず装丁。和風で美しい装丁な上、中には格好良いイラストまで描かれています。
    それからところどころで登場する国政の心の声やツッコミが面白くて。
    「あそこを船で通ってるとき、俺の頭にカモメがとまったんすよ」
    「本当かい」
    (略 ※徹平のお馬鹿発言)
    "徹平くんは、カモメに脳みそを持ち去られたのかもしれないな、と国政はちらと思ったが、むろん黙っておいた。"とか、いちいち面白い。

    三浦しをんさんの紡ぐ言葉は本当に丁寧で心に届くから、物語ももちろんいいのだけど、読んでいてとても心地よかったです。
    ああ、いい物語を読んだなあという気持ちでいっぱい。

    大事な人が亡くなった時の描写で、
    「長く親しんだ景色をまたひとつ失ったさびしさは、これから少しずつ胸の底に降り積もることだろう。」とか、どうしてこんな的確な言葉が選べるんだろう。
    とにもかくにも、いろんな方面から最高の1冊でした。

    • yocoさん
      杜のうさこさん、初めまして。
      嬉しいコメントありがとうございます^^

      この本、ほんとよかったですよ~♪
      三浦しをんさん好きだなぁと...
      杜のうさこさん、初めまして。
      嬉しいコメントありがとうございます^^

      この本、ほんとよかったですよ~♪
      三浦しをんさん好きだなぁと改めて感じ入っていたところです。いいですよね、しをんさん。
      >個人的に、幼なじみとか、おじいちゃん、おばあちゃんものが好きというのもあるんですが、
      くすっと笑ったり、おいおい!って突っ込みをいれたくなったり、
      かと思えば、ほろりとさせられたり…。
      すごくわかります・・・!
      登場人物のキャラもよくて、でもちょっと哀愁があったりして。
      つまみ簪、私も読み終えた後に検索してみたんですが、ものすごく美しくて、感動してしまいました…頭に思い描いていたものと全然違って、普段目にすることないものでしたが、徹平が作ったようにピアスもあるみたいで、思わず欲しくなりました。

      しをんさんは、「船を編む」でも感じましたが、ほんとに言葉を大事にされてますよね。言葉選びも表現も胸にすとんと落ちるものが多くて。

      こちらこそいつも杜のうさこさんのレビュー、楽しみに読ませていただいてます^^
      どうぞこれからもよろしくお願いします(_ _*)
      2016/04/28
    • aida0723さん
      「政と源」ときっかけにyocoさんのレビューを読みました。作品のいいところを引き出していて、ニュートラルな視点のコメントが気持ちいいです!
      「政と源」ときっかけにyocoさんのレビューを読みました。作品のいいところを引き出していて、ニュートラルな視点のコメントが気持ちいいです!
      2016/06/04
    • yocoさん
      初めまして。
      コメントありがとうございます^^
      そんな風に言ってもらえると、すごく嬉しいです。
      読み終わった後の感想を素直に残してるも...
      初めまして。
      コメントありがとうございます^^
      そんな風に言ってもらえると、すごく嬉しいです。
      読み終わった後の感想を素直に残してるものばかりですが、また読んでもらえたら幸いです。フォローもありがとうございました^^
      2016/06/05
  • 大好きだったまほろの便利屋コンビが
    まるで
    そのまま老いたかの様な
    国政と源二郎。

    説教じみた台詞や設定なんか一切無かったはずだし、
    最後の最後までこの二人に
    泣き笑いさせられていた、と言うのに
    何故か
    政は良寛さん、
    源は一休さんに重なり、
    2人の僧侶が生き死にについて、
    誰もが納得する
    そんな深い話をしていた様な…
    気がしたのだが。

  • 堅物で融通も気も利かない政と、豪放磊落がそのまま歩いているような源。
    真面目に丁寧に生きているようでいて、不器用すぎる政。
    ガサツなようでいて、しっかりと踏ん張って生きている源。
    対照的なじいさん二人の周りで起きる色んな出来事。
    なんだかんだ言っても、源に救われっぱなしの政。
    じいさん同士の友情にこんなに清々しい気持ちになるとは。
    年季の入った友情に憧れる。
    気持ちのいい小説だ。
    自分はかなりの政タイプ。老後、そばに源はいてくれるだろうか。

  • 有田国政と堀源二郎は、荒川と隅田川に挟まれた三角州のような墨田区Y町に暮らす、幼馴染。
    ともに73歳。
    国政は銀行勤めの後、定年退職。
    妻は娘のもとへ行ったきり戻ってこない。
    源二郎はつまみ簪職人。
    愛妻を亡くして以来の一人暮らし。
    そんな二人を取り巻く、物語。

    三浦しをんさん、やっぱり笑わせてくれます。
    そして、ホロリとさせてくれます。

    • あいさん
      azu-azumyさん、こんばんは(^-^)/

      嬉しいコメントありがとうございました♪
      私こそazu-azumyさんとお友達になれ...
      azu-azumyさん、こんばんは(^-^)/

      嬉しいコメントありがとうございました♪
      私こそazu-azumyさんとお友達になれてブクログが楽しくなりました。
      今まではただの備忘録だったけど、今は情報交換の場となっています。
      好みの本も似ていて本当に助かっています〜♪

      今年も面白い本を教えてくださいね。
      こちらこそどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m

      早速、原田マハさん、三浦しをんさんと嬉しいレビューが続いていてワクワクしました♪
      参考になります。ありがとう。
      私も明日から読書再開です。
      ミステリーからです(*≧艸≦)
      2016/01/07
  • じじいコンビが主役というので、有川浩の「三匹のおっさん」を想定したけれど、これはこれで三浦しをんの世界の人情譚。
    政と源の掛け合いの面白さにサクサクと読めてしまった。それでいて、人生のほろ苦さ、人情の温かさがじんわりと沁みてきた。
    読み終えるのが、惜しい気持ちのまま最後のページを閉じた。
    ぜひ、シリーズ化されることを祈ろう。

    • KOROPPYさん
      これ、ついにドラマ化されましたね。
      初回放送が楽しみです^^
      これ、ついにドラマ化されましたね。
      初回放送が楽しみです^^
      2014/01/16
    • honno-遊民さん
      え!これもドラマ化ですか?その情報は、まだつかんでませんでした。最近、小説を原作としたドラマ化多いですね。
      え!これもドラマ化ですか?その情報は、まだつかんでませんでした。最近、小説を原作としたドラマ化多いですね。
      2014/01/16
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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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