- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087816211
感想・レビュー・書評
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「マラス」を知っている人は少ないのではないだろうか?
「マラス」とは、ざっくり言うと、中米の「凶悪な若者ギャング団」なのだけれど、その成り立ちや流派などはかなり複雑で、一言では説明できない。
貧困、家庭問題、ネグレクト、人種差別、地域柄…様々な問題が複雑に絡み合って誕生したのが「マラス」なのだ。
ホンジュラスというと珈琲の産地ぐらいの認識だった私だが、この本を読んでこの国の人々が抱える深刻な問題を初めて知った。
そこで誕生した「マラス」とは一体どんな存在なのか?
この本は、ジャーナリスト・工藤律子さんとフォトジャーナリスト・篠田有史さんが自分たちの目で見て感じた「マラス」のドキュメンタリー。
殺人、強盗、強奪…そんな事件が普通に起こる街で人々が生きていく術は結局自分たちもそこに染まることなのか…。
そんな「マラス」のリーダー的な存在だったアンジェロの話は特に印象深い。
ギャングリーダーから、ある出来事をきっかけに牧師になったという男・アンジェロは地獄を見たからこそ人々の心を救うことができるのかもしれない。
彼を救ったのは宗教と信仰だった。
自分の中に信じるものがあるということは何よりも強い。揺るがない自分を持っているものは何よりも強い。
宗教を持つこととは…自分の中にある善と悪を神によって感じることなのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
題名のマラスは、中南米のギャング団だというが初耳だった。本書はそのマラスを題材にしたルポ。
絶望的なまでの貧富の格差、政府の腐敗。そんな中南米の社会にギャング団がはびこり、スラム街で育った青年、少年までもが取り込まれ、社会そのものを蝕んでいく。
悲惨以外の何物でもないが、マラスから抜け出そうとする少年、救いの手を差し伸べるNGOやキリスト教の神父・牧師にわずかながらも光明を感じた。
「 開高健ノンフィクション賞」受賞作ということで読んでみた。ギャング団や刑務所にまで乗り込んで取材する著者の取材力に、この受賞も納得。 -
一気に読了。
読み応えのある本で、全く知らない世界だったので新鮮だった。
必ずしもホンジュラス全体がギャングに染まっているわけではなく、マトモに育った人たちはギャングから離れたところで、ギャングを敵視しているということが分かり、一安心。
もっとも、この本は、ギャングにならざるを得なかった人や奇跡的に抜け出せた人たちに焦点を当てているので、ギャングを掃討するという政府の方針がむしろギャングを凶悪化したと批判。