- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087900217
作品紹介・あらすじ
氷室冴子のまぼろしの短編4編を初めて書籍化!
若い教師を愛する女子高生の心を繊細なタッチで描いた異色作「あなたへの挽歌」。
あるフラストレーションを抱えた彼女の秘密「おしゃべり」。
悲しみ、苦しみ……10代の悩みを情感豊かに描いた「悲しみ・つづれ織り」。
女の子同士のへんてこな関係を軽快につづったユニークな快作「私と彼女」。
等身大の少女から古代ファンタジー、古典へのいざないまで、幅広いジャンルで絶大な人気を誇った氷室冴子の書籍未収録短編をここに収録!
さらに、傷付き、傷付けながら自分を取り戻す少女の姿が話題をさらった受賞作「さようならアルルカン」、一人の少女失踪から明らかになる孤独と傷、そして再生を描いた衝撃の文庫デビュー作「白い少女たち」を併録した大ボリュームの初期傑作集。
伝説の少女小説家、氷室冴子の原点がここにある。
少女の瑞々しさ、純愛、葛藤、ひりつくような焦燥感。
そして『少女』という檻に閉じ込められた閉塞感――。
2008年に生涯の幕を閉じるまで、少女小説ブームを牽引し数多の読者を魅了した氷室冴子。
ページをめくると、あなたが知らなかった氷室冴子にきっと出会う。
時代は変わっても異彩を放ち続ける透明感溢れる世界といきいきと輝くキャラクターに、きっと驚く。
【収録作品】
・さようならアルルカン
・あなたへの挽歌
・おしゃべり
・悲しみ・つづれ織り
・私と彼女
・白い少女たち
【著者について】
氷室冴子(ひむろさえこ)
1957年生まれ。1977年第10回「小説ジュニア」青春小説新人賞佳作入選。コバルト文庫に『白い少女たち』『さようならアルルカン』『クララ白書1・2』『ざ・ちぇんじ!』『なんて素敵にジャパネスク1〜8』『銀の海金の大地1〜11』など著書多数。2008年肺がんのため没。
感想・レビュー・書評
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氷室冴子さんの名前を新刊コーナーで見かけ懐かしさが溢れ出た。亡くなってって久しいのに何で今頃なの?帯に初期に書かれた、まぼろしの短編6編が収められていると紹介されていた。
氷室さんは1980年代から1990年代にかけて集英社コバルト文庫を代表する看板作家なのに、「小説ジュニア」でデビューした氷室さんを軽く見ていた。若気の至りで気取っていた自分が恥かしい・・・。
そんな私が『なんて素敵にジャパネスク』を友人に勧められ見事にはまってしまったのは、子育てで忙しかった頃。平安時代に現代的な感覚のヒロインが活躍する設定は斬新だった。女の枠を外し自由に平安時代を生きる主人公に夢中になった。それまで読んだことがなかったスタイルに魅了された。平安時代を舞台にしたものは歴史小説が主で、主人公たちは平安時代に育った感覚で描かれていたが、氷室さんは敢えて現代の女子高生のような感覚の主人公を平安時代に送りだした。しかも、綿密な歴史・豊富な古典知識をまじえて。今では普通となった『平安朝の貴族文化を現代風にアレンジしてエンターテイメントにする手法』を編み出した最初の作家さんと云われのが肯ける。だからこそ、読者はすんなり平安時代という壁を超えてのめり込んでいけるのだ。古典の授業で習った無彩色の枕草子や源氏物語が色づき日常にグンと迫って感じられた。次に読んだのは、古代日本を舞台に設定したファンタジー『銀の海 金の大地』シリーズ。大好きな作家さんだったのに、51歳の若さで亡くなってしまった・・・。もっとたくさんの作品を生み出して欲しかったのに惜しまれる。氷室さん以来、彼女の影響を受けたと思われる作品が続々出て来たように思える。一番乗りした氷室さんの功績は大きい。
本作は「さようならアルルカン」「あなたへの挽歌」「おしゃべり」「悲しみ・つづれ織り」「私と彼女」「白い少女たち」で編まれている。どの短編にもひりつくような焦燥感や純愛、「少女」という檻の閉塞感が瑞々しく書かれている。多感で未熟を鮮やかに描いた少女小説の原点が詰まっていると、評してある。
でも、現在の私が読んでも、主人公たちと相通じる気持ちがある。いわゆる「少女小説」の主人公たちはいつまでも同じで、少女と云う期限付きではないだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まさか三十代半ばを過ぎて、また氷室冴子さんに心を奪われる日が来ようとは!!
あの頃夢中になったかつてのわたしが、懐かしいと叫ぶ。
このヒリヒリ感、湿度、仄暗さ、たまらない。
あの頃の少女小説にはこれらが詰まってたんだなぁ。こんな素晴らしい物語を成長過程で読めていたんだなぁどんだけ幸せ者だ自分は、と改めて僥倖に感謝する。
40年以上経っても色褪せることのないこの瑞々しさは、さすがコバルト四天王だな。
しかし白い少女たちがデビュー作って、ほんと才能の化け物!!
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学生時代にガッツリはまった、今は亡き氷室冴子の初期作品を集めた短編集。
ただただ懐かしく、10代の頃に読んだ作家さんを30年経って読んだら、どんな気持ちだろう?と手に取ったが、「初期作品集」だけに自分が読んでいた頃より、さらに前の作品で懐かしさの感慨もなく、何となく読み終えてしまった。
基本短編だが、タイトル作でもある「白い少女たち」のみ中編で、これがデビュー作だそう。知らなかった…
他の短編集は、その後に見られる少しユーモラスな感じもあり、さらっと読めるが、「白い少女たち」は今ではありがちな設定を1970年代に描いていたことを思うと、青春小説の原点のように感じる。
この前に読んでいた本の中に「海が聞こえる」が出て来たので、続けて読んでみたけど、もう少し後の作品がさらに読みたくなっただけだった…
でも、敢えて今の10代ではなく、青春時代を氷室冴子と過ごした大人たちに読んでもらいたい作品。 -
他者に迎合することなく成長していく人の姿は、客観的には輝いて見えるのだなぁと思いました。
普通じゃない、それが魅力。だから普通になってしまうと途端に輝きが失われる。でも、ふとした瞬間に以前持っていた輝きを取り戻す人もいるんだと知りました。
本人からしてみたら、他者と交わり合う生活は安心感があり、孤高よりも幸福感に溢れるんだろうけれど…。
自分に置き換えてみると、孤高も共生も、どっちも経験したいなぁ私は貪欲だわ(笑)と再確認させられました。 -
40年以上前に書かれたとは思えないエバーグリーンな作品。表題作が特に良かったなー。
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初めて読む氷室冴子さん
美しくて残酷で、幼くて既に老成してる
少女たち
まぶしくて愛おしい少女たち
特に『さようならアルルカン』『私と彼女』が好き
『あなたへの挽歌』の辛らつさといったら
少女特有の感覚だと思う -
少女の傲慢さも潔癖さも強さも脆さも苦しさも孤独もシスターフッドもぜんぶ詰まっていて、苦しい。10代の頃に読んでおきたかった。
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とても、優しくてどこか残酷な、けれど眩さのある物語(短編集なので、くすっとしたりにやりとしたりするお話もあったけれど。もちろんそれらもとても好きだ)
表題作の二話はほんとにヒリヒリした。でも、特に白い少女たちは、すべての少女たちへの愛を勝手に感じた。誰かにわかってほしいとか、わかりたいとか、わからないくせにとか、ときには興味も、それらすべての気持ちをまるっと優しく包み込んでくれていたな、と。
だれも責めない。ただ、自分がそこにいる。
多感で未熟なすべての少女を、氷室冴子さんは、愛していたのかな。
読んでてついつい責めたくなった自分に反省した。
そして、じわりと涙が浮かんだ。 -
アルルカンが一番好き
白い・・・ほうはどーも
サクッと刺される感じ
好きだわ~~ -
町田そのこさんの好きな作家さんということで手に取ってみました。女性たちの強くいきる心もように感動しました。思春期の子どもたちに読んでもらいたい本です。