- Amazon.co.jp ・マンガ (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091355799
感想・レビュー・書評
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19世紀末のパリ。
画壇界を席巻するパリ一の画商
グーピル商会のテオドルス・ファン・ゴッホ。
街に生きる普通の人々や
労働者たちのありのままの姿を描きたいと願うテオドルスの兄で、
のちの天才画家フィンセント・ファン・ゴッホ。
この漫画はそんな二人のゴッホの絆や確執を描いた
伝記ロマンです。
高い志を持った
日の目をみない芸術家たち(ボヘミアン)から
権威の犬や保守側の人間だと思われていたテオドルス・ファン・ゴッホが、
「体制は内側から壊すほうが面白い」と言った
まさかのセリフから
一気に引き込まれました。
(巨悪や権威に立ち向かう男たちほどカッコいいものはないもんね~笑)
貴族の肖像画や神話を元にした従来の権威主義の芸術とは違い
生活の中にある「ありのままの素晴らしさ」を描いた
テオドルスが企画したアンデパンダン展によって
美術革命を起こそうとする若き志士たち。
そしてその行動は
金持ちの美術蒐集家ではなく
一般の街の人たちから圧倒的な支持を受けるのです。
上流階級のためにあった「芸術」というものを
市井の人々のものにし、
貧しさに喘ぐ多くの人の人生を
美術によって救おうとする若き志士たちの行動は
素直に胸を打つし、
美術は労働者たちにも解るものだと唱え、
人間のありのままの姿を包み隠さず描く革命は
危険であったハズのロックという音楽が1970年代に入り
テクニックを重視しどんどん高尚なものに鳴り果てていく中で現れた
「パンク」というロック界の「揺り戻し」現象とカブってきて
個人的にはかなり共感しました。
もし、誰もが知っているゴッホのストーリーが
実は作られたものだったとしたら…
そんな斬新な発想と視点から
新たに紡がれたストーリーは
二人のゴッホの絆と
兄の才能を嫉妬する弟の葛藤を
実にスリリングに
そしてミステリアスに描いていきます。
しかし、作者の穂積さんは
デビュー作の「式の前日」のときから思ったけど、
やっぱこの人は天才ですね~。
わずか2巻の中に
これだけ濃厚なドラマを凝縮できる才能は稀有だと思うし、
天性のストーリーテラーだなと思いました。
映画『アマデウス』のモーツァルトとサリエリ、
西川美和監督の傑作『ゆれる』の
オダギリジョー演じる写真家の弟と香川照之演じる冴えない兄、
『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』の凡人の姉ヒラリーと天才の妹ジャッキー、
『ソーシャル・ネットワーク』の
真面目な優等生だが仕事のセンスのないエドゥアルドと
友達のいない変人だがやることなすこと上手くいくセンス抜群のマークなどなど、
才能を持つ者と持たざる者の対比を描いた映画や小説は多い。
才能を持つ者は持たざる者の苦悩を理解できないし、
そもそも自分が才能を持つ者であることにすら気付かない。
反対に才能があるが故の
誰にも理解できない孤独感ってのもあるんですよね。
兄と弟の絆や確執がメインテーマではあるけど、
保守的な美術界を変えるために戦った
若き志士たちの記録として見ても
なかなか面白い作品です。
全2巻。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
創作の醍醐味か。
歴史小説をはじめとして、実在の人物をモデルに創作することはよくある。しかし、通常はそれが創作だと分からないように、あたかも本当であったかのように描く。読者はすっと受け入れるのが通例だ。
この作品の漫画史を画する部分は、確信犯的に、読者にそうと分かるように、創作したことだ。正直すぎるといってもいい。たいていの読者は、すでにある意味、作られたゴッホ兄弟のイメージを持っているため、裏切られたと思う。評価もしないだろう。
しかし、本作で見逃してはならないのは、二人のゴッホの本質を捉える努力をしていることだ。わざとらしい構成を使いながらも、「いまの時代」につらなる美のあり方を伝えることに成功していると認めないわけにはいかない。 -
本当なのかはわからないけど、こうだったらいいな…。
購入 -
すべては兄のため。
フィンセント初めての怒りの果ては、
兄弟の絆と宿命への道。
兄の死に、テオがとった行動は驚愕!!
ものすごい想像力です!
こんなゴッホ兄弟、考えつきませんよ~。 -
これは良かったな~。2巻完結っていう潔さも素敵。長く続けようと思えば続けられたと思うけど、作者的に一番描きたかったのが、きっと2巻の後半、ゴッホの人生はでっち上げられたもの、っていう設定だったんでしょうね。個人的には正直、ゴッホの絵によって救われる人たちを描いた、1巻の展開の方が好きだったんですが。でもそれを続けたら今度はマンネリっていう問題が出てくるだろうし、作品全体のバランスで見ると、絶妙なのかなって思います。
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テオとフィオの兄弟の絆のお話。
途中でゴッホのお話だって気付いたけど、ゴッホは亡くなってから有名になった事と自画像くらいしか知らなかったので先入観なしに読めた。
一巻では、一見完璧な男テオの、兄の才能に嫉妬してる様が垣間見れたあたりで切なくなってしまった。
二巻ではそんな2人の兄弟の絆に涙。
もう少しフィオがテオの元を離れてからのフィオが見たかったなー。
怒りの感情を知ったフィオが、絵を描きながら世界の美しさを改めて実感した三年間。
読んだ後の充実感が二巻で完結とは思えない!-
2014/04/09
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久々に泣いたー少女漫画で泣いたー。このマンガがすごい2014はこれが獲るだろなと読んでないのに思ってたけど(笑)書店員嗅覚あったみたい☆ゴッホを弟目線でとか、解釈の新しさとか。いや、兄弟愛でめちゃ泣ける。
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私はもともと画家のゴッホが好きで、その理由の半分くらいはゴッホの人生への興味でした。
だからこの展開はとても楽しかった。作られたゴッホの人生にまんまとはまった民衆の一人のようになった気がした。
欲を言えば、もっとじっくり二人の人生を見たかった。