ホムンクルス (1) (BIG SPIRITS COMICS)

著者 :
  • 小学館
3.53
  • (93)
  • (133)
  • (315)
  • (18)
  • (2)
本棚登録 : 1195
感想 : 122
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・マンガ (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091870711

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ちょっとよくわからない

  • 頭蓋骨にに穴開けたら(トレパネーション)人の心の「ゆがみ=ホムンクルス」が実体化して見えるようになったホームレス(元大手銀行保険トレーダー)の話

    ココロの歪みが具現化した「ホムンクルス」。絵柄による不気味でいびつな、それでいてリアルなイメージ喚起力は素晴らしく、これは「寄生獣」とか「ヒミズ」並の名作じゃねーの?と思ってワクワク読み進むが、ストーリー的には「記号の女子高生」編の4巻辺りからホムンクルス謎解き心理描写に時間かけすぎで急激に失速する。
    15巻あって謎解きが「ロボット組長」「記号女子高生」「オカマグッピー」「鏡の玉子」「のっぺらぼう」の5つしかないのでストーリー的失速はしゃあない。

    これだけだったら☆2付けて終わりなのだが、ラストが引っかかったので考察。

    最終的には「深淵を見る者もまた深淵に覗かれているのだ」的な話に回帰する。

    主人公は外面の嘘(カオ、カネ、モノ)の実体のなさにうんざりして内面(こころ)に救いを求めるわけだが、それにも絶望してあのラストとなる。

    人は自分の感覚=脳(=脳の小人ホムンクルス)を通してしか世界を感じることができない。
    だから他人の内面を見ようとしても、それは結局自分の脳が感じた感覚の投影であって、本当に他人の内面(こころ)とつながることなどできない。

    だから終盤で、主人公が心を通じさせたと思った女性は自分の顔になり、自分で自分とセックスをすることになる。
    世界とは「自分自身の脳が生み出した感覚=幻影の集合体」に過ぎないという真実。だから町に出てもみんなが自分だ。みんなが自分なら、外見の嘘(カオ、カネ、モノ)に惑わされることはない。でも、みんなが自分なら、他人はいない。他人がいないから、誰も自分を外側から見てくれない。もちろん内面(こころ)なんて見てくれるわけもない。

    ――ここは天国か? 地獄か?

    主人公は前半で自分が他人にしたように、他人に内面(こころ)を見てほしかった。そうすることで、自分が一体なんなのか? その謎を解き明かし、価値や意味を与えてほしかったのだ。そうして他人とつながりを持つ(自分の脳の幻影とは別の世界に位置づけられる)ことで人間は世界に存在している(孤独でない)と認識することができる。

    ――嘘(カラダ)も本当(ココロ)も見てもらえなかったら、ななこは、これからどうやってこの世に存在していけばいいんだよ?

    ――1人で死ぬのは寂しいだろう……

    だから人間は、「自分自身の脳が生み出した感覚の集合体」に過ぎない……つまり自分は自分の脳の生んだ幻影の中を、他人は他人の脳の生んだ幻影の中を、まったく分断されて生きているという真実を知っていても「ただ、ほんのちょっと自分に嘘を」ついて、他人が自分の本当を「見てくれる」と信じなければ生きていけないのだ。

    ラストの内容的には多分ななこの頭に穴開けたものの後処置が悪くて死に、警察に追われる身になって逮捕されたのだろう。

    ――やあっ。おまえらかっ!

    結局、主人公を「見てくれる」人は誰もいなかった。主人公は誰も見てくれる人のいない、自分しかいない1人ぼっちの世界に戻っていく。そして、多分その中で生きることに、彼は耐えられないだろう。

    補足
    天国か?地獄か?の中には「自分の顔」に見えない(=ホムンクルスを持たない)人間も描写されていたが、それはつまり主人公が自己投影できない=つながりを持つことのできない人間であるので、結局無意味なのだろう

  • なんか頭蓋骨に穴を開けるトンパネーションとかってやったら変なものが見えるようになって、その流れで自分と向き合ったりまぁそんなマンガ。

    面白くなかった。のぞき屋・殺し屋は直接的で解りやすく面白かったが、こちらは抽象的すぎてついていけなかった。こういう「解る人には解る」みたいなマンガは好きになれない。

    よく10巻まで続いたなコレ。

  • 頭蓋骨に穴を開けて幻覚を見る男の話。だいぶ読み手を選ぶ内容だ。

    頭蓋骨に穴を開けて病気を治そうとする治療があり、トレパネーションと呼ばれるらしい。作中の男は、トレパネーションを施術し、人間を通常の外見で捉えることができず、自分の精神を投影した外見で捉える。投影された外見はその人の精神を反映した外見となり、それを見ることでその人の悩みや本質を見抜く。男は、幻覚を見続けるにつれて、それを理解し、最後には幻覚は自分の内面の投影だと考えるようになる。


    この作品にはストーリーがなく、男の精神の移り変わりのみが描かれる。普通に見ると訳分からん作品だと思う。よく分からず始まり、よく分からず終わる感じだが、描かれているものは中々おもしろい。俺は結構自分で物事を深く考えるほうなので、こういう作品は嫌いじゃない。

    男が最終的に見るようになったものはある種の境地に近い気はするが、ある意味物事の本質を言い当てているのではないかと思う。人は、必ず自分の目と相手の外見を通してしか相手を見ることができない。そして、相手の本質を理解しようとするとき、相手に自分を投影して理解しようとする。もし外見を取り払って直接精神を見ることができたら、正しく相手に自分を投影することは難しいだろう。作中で男も苦労している。しかし、正しく相手を見ることができたら、きっと自分が見えるに違いない。

    単純にストーリーを見ると単なる頭のおかしい男の話だが、作品が男の精神を描こうとしたものと捉えると別のものが見えてくる。他人の精神世界を見るのは正直気持ちのいいものではないので、読んでる最中も読み終わった後も微妙な感じだが、作者が描こうとしたものを想像しながら読むとそれ以上のものが見えてくる。この作者の作品はこの作品しか読んだことないが、独特な世界の見方と描き方を知っているのだと思う。

  • 面白い事をやってそうで実はつまらない(笑)話しが斬新なだけって感じ

山本英夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×