トーマの心臓 (1) (小学館文庫 はA 3)

著者 :
  • 小学館 (1995年8月10日発売)
4.07
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091910134

感想・レビュー・書評

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  • 優等生の委員長ユーリを慕う、女の子のようにかわいらしく素直な少年トーマが死んだ。トーマの遺したユーリへの遺書「これが僕の愛、僕の心臓の音、君には分かっているはず」。しかしユーリはトーマの真意が分からず、苦しむ…そんな中ユーリの目の前に現れたトーマそっくりの転校生…
    ユーリの罪悪感と心の闇、ユーリを想う大人びた少年オスカー…思春期で出会う想いの形全てを深く深く洞察した作品。
    少年の等身大な愛情が、自己犠牲の愛、人間愛にまで昇華されていく。自分が愛されることでなく、相手の救済を望む。自分の命の犠牲をもって、相手の魂の救済を望む。真に純粋で無私な愛情。

    キリスト教を知らない方でも勿論読み込める作品なのですが、キリスト教について詳しい方は「なぜトーマが死んだのか」について、より多くの視点からアプローチできる作品なのではないでしょうか。

    「トーマがなぜ死んだのか」ユーリは最期に理解しますが、読み手の数だけ答えはあるようです。読むたび別の答えが見つかる、そんな稀有な作品です。

  • 美しい話。
    成長段階の少年たちの信条などが
    美しく描かれていると思う。
    青少年に対して、無邪気さが悪である。
    というのならば、
    無邪気さが愛なのかもしれない、そうおもわせる作品。

  • 萩尾作品の有名な「トーマの心臓」。
    なんかよくわかんないけど、「すごい」ということだけは理解できる。
    哲学的というか、なんというか。
    言葉に上手くできないけど、心にとても印象を残す作品だった。
    モヤモヤした感じと晴れ上がったような気持ちとか交錯して変な感じ。
    どなたかの感想で「サイフリートは創世記でいう蛇のような存在」のコメントになんとなく腑に落ちた感じだった。

  • 「BLマンガだろ」と思うなかれ、
    友情・家族・恋心から、命・信仰心・無償の愛まで
    、非常に深く掘り下げて描かれています。
    このマンガを「文学作品」と呼んで差し支えないとさえ思う。

  • ひとりの少年が愛を理解するまでの物語。
    ユーリには必ず理解できると信じたから、トーマは死を選んだのだな。
    と、大筋はこれなのだけど、彼らを取り巻くそのほかの少年たちの様々な心の葛藤も丁寧に描かれていて見所満載。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ユーリには必ず理解できると」
      ・・・大昔に読んだ時に、何故こんなムツカシイ話を、、、と思った。切な過ぎる世界です。
      「ユーリには必ず理解できると」
      ・・・大昔に読んだ時に、何故こんなムツカシイ話を、、、と思った。切な過ぎる世界です。
      2014/04/25
  • 一度読んだだけじゃ完璧には理解できないほど深い。
    純愛、という一言で片付けてしまうには勿体ないくらいの少年たちの儚く繊細な愛と死。哀しくも美しい。
    トーマが数えるほどしか登場しないにも関わらず、存在感がすごい。

  • 「これがぼくの愛 これがぼくの心臓の音 」
    遺書をのこしドイツのある冬の日にトーマ・ヴェルナーは自殺した。

    圧倒された。トーマの愛に。
    これをもしボーイズラブだと言い捨てる人がいるのであれば、
    あまりに浅はかすぎると思う
    この作品はそれ以上、もっと深く。
    傷ついた友人への愛、弱い母への愛、神への愛。
    純粋に愛するというのはこういうことであると、恐れすら抱くほど。

    そして宗教というものはこれほどまでに人を縛るのか。
    なぜ無邪気に愛することができないのか
    信仰は時に人間を少年を盲目的にすると感じた。

    「ユーリ、少しでも僕のことがすき?」というシーン
    1コマではあるがこの回想の破壊力はすごかった
    なぜか私は切なく胸が締め付けられた

    罪を背負う(と本人は思っている)ユーリは葛藤し己を偽るが、
    トーマの自殺、エーリクとの出会いをへて彼は再生に踏み出す。
    そして忘れてはならないのは、
    自らも心に闇を抱えつつ彼を見守るオスカー。

    毎ページとても綺麗で、丁寧で、
    少年たちの美しさ、清い心が、にじみ出ている。
    今の漫画と比べるまでもないハイレベル、間違いなく名作。
    わたしの中で1番になった作品。
    ただ読む人によっては感じ方がまた違うかもしれませんが…。

  • 純粋でひたむきで真っ直ぐだからこそ頑なにもなる、透明なガラス細工のような少年の心の時間。
    誰かの悲しみを憂い、誰かの幸福を祈る――簡単そうで、時にすべてを投げ出す覚悟を求められさえする。

    読み返すほどに、静かに心に降り積もる――さらさらと輝く結晶のような名作。

  • 長野まゆみ先生が好きな私が、この作品を好きにならないわけはありませんでした。
    少年のリボンタイとか、全寮制とか、つまりギムナジウム好きには元祖と呼べる作品なのでしょうか。
    年代を感じさせる独特な画風ですが、繊細で美しく世界観に惹きこまれました。
    物語も続きが次々知りたくなる展開で飽きさせません。
    少年たちの日常に垣間見る心の移り変わりや愛に、特に最後に感動しました。

  • これがぼくの愛 これがぼくの心臓の音 君にはわかっているはず

    もう、こんなに力のある言葉は今の少女漫画では見れないと思う。
    ドイツ、ギムナジウム、当然出てくるのは男の子ばっかり。
    自分とは一切接点がない。でも、目の前で彼らの息遣いが聞こえてきそうなぐらい、彼らの生はリアル。傷つけあって、支えあって、それぞれの『愛』にむきあっていく彼らをBLとか、そういう言葉で片付けたくない。
    最後まで読むと、この「トーマの心臓」というタイトルが別の意味をもつことになる。

    岡崎京子がリバーズエッジでいっていた「僕たちの短い永遠」を、もっと、ずっと前に、しかもこんなに美しく描いてたなんてモー様さすが。

    BLに抵抗がある人も、ぜひ読んでほしい。

    あと、オスカー萌え。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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