MW (1) (小学館文庫 てA 4)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091920041

感想・レビュー・書評

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  • 手塚先生の大人向け。リーダビリティは高い。

  • 10年くらい前に見た映画の「MW」は結構酷評されてましたが笑…当時小学生だったにもかかわらず、すごいドキドキしてハマった記憶があります。その後も暇なときに映画予告見たりするくらいにはずっと好きで、ようやくこの前本を買いました( *´꒳`*)
    人を次々と殺していく結城とその罪を知りながら暴くことのできない賀来。わたしはブラックな話は嫌いじゃないので、結城に嫌悪感はなかったですが、それにしても殺しまくってんなぁ、とは思ったけども…賀来とか結城大好き女たちに少し苛立ちが笑。でもこういう人間らしい人たちがいるから、結城の狂気や異常性が際立つんだろうな。
    …すごいよなぁ、手塚治虫。

  • 火の鳥なみに、人間ってとなる箇所あり

  • ユーキミチオに魅せられました。
    もちろん、彼の美貌も彼の奇妙な引力の一つなのですけれども、人間、毒のあるものの方が美味しそうに見えてしまう。MW全体に蔓延している毒霧が読者を捕えて離さず、否応が無しに作中の問題に向き合わせられてしまう。陳腐でごく普通のことを言ってしまいますが、手塚治虫さんという漫画家さんの偉大さを目の当たりにしました。
    作中では、小学4年生だった当時のユーキミチオ君を純粋な少年としていましたが、女の子みたいな可憐さが毒となって、フーテン族が惹きつけられています。ただ、そもそも彼が親戚のお兄さんと二人きりで島へとやって来たこと自体が、結構異様だと思うのです。穿ち過ぎな考えになりますけれど、あの事件の前から、ユーキミチオ少年はすでに甘美な毒を備えていたのではないでしょうか。
    MWという架空の(架空であってほしいですけれど)ガス兵器も、重要なポイントですよね。MWもやはり不思議な引力を持っている。そして、ユーキミチオが賀来神父以外に執着している、稀有な対象の一つでもある。あの利口な巴の死にだって、涙一つ流さなかった、あのユーキミチオがです。MWはもちろん毒そのものであり、人間の非情な一面から生み出されたものでもある。戦争が終わっても廃棄されず(廃棄しようがないのかもしれないですけれど)、ひっそりと受け継がれていく。平和を誓っていながら、毒を所持しつづける。おおっぴらに存在しているわけではないが、原発のようなものでしょう。
    現実世界には、綺麗なものがあるっちゃああるのですが、それも一面的なものに過ぎず、どこかに探せば特有の毒がある。MWは物事の一面的把握の危険性に限らず、そこから派生して社会問題を多面的に、しかし、全ての面を晒さず、実に巧妙に描いた漫画だろう。

  • 実写映画化した時に読もうかなーと思いつつ結局読んでなかったのを今更ながら友人に借りた。

    美知夫が思ってた以上に外道というか、とんでもない奴でびっくりした。男性キャラにこう言うのが正しいのかわからないけどビッチだな!と。
    澄子の「口封じ」をするとこなんかも、糞野郎としか言いようがないけど、だがそこが良い。

    私の中で手塚キャラで女装、って言うとロックが思い浮かぶのだけれど、ロックは悪事のための手段として女装してるってイメージ。
    で、美知夫はその点内面までも女性的だなぁと感じた。
    艶っぽい。

  • 同性愛関係にある2人の主人公、それは美貌の殺人鬼と
    敬虔な神父という手塚治虫作品の中でもタブーとされる本作。

    物語のキーになるのはMW(ムウ)と呼ばれる化学兵器。
    某国によって秘密裏に持ち込まれたそれが漏出し、
    沖ノ真船島の島民は全滅した。

    その唯一の生き残りである主人公らの一人結城美知夫は
    天性の美貌と天才的な頭脳に加え、MWの後遺症か
    倫理観を全く欠如した悪魔ともいえる殺人鬼に成長する。

    もう一人の主人公である賀来は、神に仕える身として
    結城の悪行を許すことができない正義感と、
    一方で結城への愛情の間で苦悩し続ける。

    しかし、この作品の最も面白い点は、妖艶な悪魔と苦悩する
    破戒僧の姿の対比として描かれるものである。

    島民全員という人命を容易く奪う化学兵器
    それを作ってしまう国家
    外交的配慮との観点から漏えい事故を徹底的に
    隠蔽する政治家
    殺人を正当な手段と言い切る過激派

    一人一人の人間はおおよその倫理観を持っているが、
    それが集団になり、大局的な使命を帯びることで
    功利・公益主義的な戦略が倫理を超越してしまう。

    しかし、一方で結城に家族を殺されれば
    皆涙するのである。

    タブーを通して人と社会が抱える矛盾を
    描いた作品である。

  • どんな話かって訊かれたら「魔性のホモがばんばん人殺しする話」って答える。それが全てではないけど、この恐ろしく悲しい物語を説明する言葉をわたしは持っていない。

  • ああ…ラストがほんまに……。胸糞悪くなりました。報われない。

  •  美知夫という存在がエロい! エロすぎる! もう男も女もたぶらかす魔性の男! 久しぶりにすげぇどぎつい魅力的なキャラクターに会えたと思いました。美知夫には確固とした悪の美学があるところが素晴らしいです。なんというか軸がぶれないというか、中途半端な人間臭さなんかしゃらくせぇよ、死ね! みたいなノリがあるのが素敵(実際こんなコミカルじゃないです)それでも最後は鬼の目にも涙じゃないですけど、泣いてたところにはキュンときたのですが、たぶんあれが美知夫にとって最後の涙になるんでしょうな。それで、これからも男も女も謀殺していって、どんどんとのし上がっていって、最後は凄惨な死に方をするのを希望します。なんというかそれが美知夫には相応しいような気がする。
     この漫画、がっつり同性愛なのですが、この要素がなかったら、あの二人の微妙な関係も描けてなかったと思います。

  • 大人のための手塚治虫作品です。同性愛、両性愛に対する違和感が強い方は、あまりこの作品を楽しめないかもしれません。
     
    購入したものは2008年版(第22刷)でしたが、こちらには花村萬月氏の「エッセイ」がありました。紹介されていた解釈は、本作品について一般的にいわれているものしれませんが、それらを読まず本作品に触れた自分には目から鱗でした。

著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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