- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784092897564
作品紹介・あらすじ
失われた声を拾い上げ祈りを込めた短編連作
広島原爆投下を生き延びた人々の物語として2012年に児童単行本として発表された『八月の光』は、多くの人の心を打ち、評価の高い作品でした。そして、2編を加えて小学館文庫化されました。このたび、著者の意向で、さらに新たに2編書き下ろしを加えて、7編の短編連作として児童向けに出版いたします。
名前だけでしかない人があり、名前すら残らなかった人があります。ヒロシマの物語を書くということは、あるいは読むということも、そのような人びとの「失われた声」に耳をすませることなのだと私は考えています(作者あとがきから)。
【編集担当からのおすすめ情報】
不穏な空気に満ちた世界情勢の中、忘れてはいけない、目をそらしてはいけない。作者の祈りのこもった、それぞれの物語です。
感想・レビュー・書評
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日常が原爆によって失われてしまったことの恐ろしさを感じるお話ばかりだった。作られた物語だけど、読むほどに苦しくなっていった。
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読んだ本に八月の光のことがわずかに書かれていて(でも発行年を考えたら同名の別の本のことだったかも?)記憶の片隅にあるタイミングで図書館に行ったら、目につくところに美しい表紙のこの本があったから、おやっと思い借りた。本ってこういう袖触れ合うも、みたいな、さりげないけどしっかと目に入る出会いがある。
普通の人々、少し憎まれ口も言われるような、完璧な人などおらず、ただその時の日本で自分の人生を生きていた人々。私や隣近所、勤め先の誰か、そんな周りの人々と何も変わらない。
哀しく、恐ろしく、やはり怒りも湧く。
現代の平和な時代にリンクしたり、記憶と向き合ったり、希望の光さす話もあった。
今の私が向き合う悩みがささいな、とは思わないのだが、今抱えているこれらはこれらで切実なのだ。だが、前を向こう、背筋を伸ばそうと思う。 -
読んだことある話だなと思ったら『八月の光』にいくつか新しい話を追加した本だった。再読になった話は胸を突かれるぐらい悲しいし、新しい話もただただ悲しい。悲しいなんて語彙力が無いのが恥ずかしいぐらいだけど。名前しか残らなかった人、名前さえも残らなかった人がいた現実。この本は忘れられない。広島に行きたいと強く思う。
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被曝2世である朽木の広島の原爆をモチーフにした短編集。7話所収。戰時下の日常が原爆投下でガラリと暗転していく話だが、1945年8月6日、その数日前からの話もあれば、その3年後、70年後の話もある。ヒロシマの惨禍を描いた絵、見るのか辛い絵思い出す描写がある。しかし、諦めながらも力強く生きる人々が描かれていて、読んで辛いのだけれど、登場人物の幸せを祈ってたり、信じたりしていて希望がもてる。
5年生の国語の教科書掲載、同著者書き下ろし「たずねびと」がある。その単元のブックトークの1冊に使用した。 -
辛いけれど、苦しいけれど、知らなきゃいけない事がある。一人一人の物語。
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5年教科書掲載本
今まで、原爆の資料を注視することができなかった。
でも、これを読んで、やはり目を背けていてはいけないという気持ちになった。
はだしのゲンしか読まない児童たち。
一話でもいいので、卒業までに読んでほしいと思う。
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7つの広島の話。必ず原爆の日に繋がる。話の中で前の話の登場人物が出てきたりする。
普通の日常からあの日に移るので、「この世界の片隅に」で感じた喪失感や虚しさがあった。
「彼岸花はきつねのかんざし」より、読みやすく情景描写もあり、原爆の悲惨さを感じることができる。 -
この本で読んだ一人一人にはちゃんと顔があって、日常の細やかな暮らしがあって、生きてきた日々があった。
至極当然な生きるという行いを、いったい誰がなんの権利で奪うに至ったのか。
ただただ泣けてくる。許せない。