わたしのペンは鳥の翼

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093567428

作品紹介・あらすじ

アフガンの女性作家たちによる23の短篇集 抑圧・蹂躙され口を塞がれた女性たちがペンを執り、鳥の翼のように自由に紡ぎ出した言葉の数々。女性嫌悪、家父長制、暴力、貧困、テロ、戦争、死。一日一日を生き抜くことに精一杯の彼女たちが、身の危険に晒されても表現したかった自分たちの居る残酷な世界と胸のなかで羽ばたく美しい世界――海外に亡命した子どもたちとスカイプする女性の孤独を描く『話し相手』、男子を産めない女性の絶望を描く『八番目の娘』、結婚式での爆破テロを描く『世界一美しい唇』、父親に折檻される性的マイノリティを描く『わたしには翼がない』、夫に代わり水路を掘る女性を描いた『アヤ』、教育の権利を訴えるデモに参加する女学生の友情を描く『花』……。 アフガニスタンの女性作家18人が紡ぎ出す、心揺さぶる23の短篇集。 【編集担当からのおすすめ情報】 本書は、2022年2月に英国で刊行されたアフガニスタンの女性作家18名による23の短篇集の邦訳版です。紛争地域の作家育成プロジェクト〈UNTOLD〉による企画編集で、3年前からイギリスとアフガニスタンでやりとりをしながら、「小説を描きたい」という女性たちを広く募り、一冊へとまとめ上げました。アフガニスタンでは2021年夏にタリバンが政権を奪還し、女性への抑圧も急激に強くなりました。女生徒たちは教育の機会を奪われたまま、女性は全身を覆うブルカの着用を義務づけられ、単独での遠出を禁じられるという、21世紀とは思えない状況が続いています。そのような中で、本書の著者のうち数名は、身の安全のため国外への避難を余儀なくされています。 ここに集められた短篇は、死や暴力、激しい女性憎悪や差別と隣り合わせの重い日常を描いたものも少なくありません。また日本に暮らす私たちとは価値観も異なり、簡単には理解出来ないこともあります。 それでも、想像を絶する過酷な毎日を強いられる彼女たちが紡ぎ出す言葉には、誰もが激しく胸を揺さぶられるのではないでしょうか。時には本を閉じたくなることもあるかもしれません。それでも、自分たちの日常とかけ離れた世界が描かれているからこそ、一人でも多くに読んでほしい、知ってほしい一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • アフガニスタン(以下、アフガン)の女性作家18名による23篇の作品が収められている。
    紛争などによって疎外された現地の作家を発掘するプロジェクト〈アントールド〉により集められ、更に英語圏の読者に読んでもらうべく現地の翻訳者が英訳。アフガンの人々によって彼女達のペンは翼へと姿を変え、世界中に羽ばたいたのである。
    装丁・タイトルに惹かれて手に取ったが、想像以上に意義のあるもので本を持つ手に力が入った。

    「みなさんの心を引き裂くような文章も本書にはあります」
    「思わず息を殺してしまうような文章も記されています」
    こんな文言がまえがきにあったら、その先は覚悟を決めて読んでいくしかないだろう。(どうしても投げ出す気にはなれなかった)
    予想を裏切らず、というか上回って、どのストーリーも重くのしかかってきた。1話終えるごとにページを閉じ、時間を置いてから再開する調子。彼の地ではどれも現実あるいは起こりうる話で、中には実際の事件を題材にしたのも含まれているから辛いのなんのって。

    ストーリーのシチュエーションは様々だが、おおよそはテロや家庭内暴力、男尊女卑問題が背景に横たわっている。
    「死は平等に訪れる」と言うけれど、いつどこでテロに巻き込まれるか予測できない日常でもそんなことが言えるのだろうか。秒/分/時間刻み、その場所にいるか・いないかで運命が決まってしまう。『エアコンをつけてください』のハミード校長みたいに妙な胸騒ぎがしたりと、生きた心地のしない日々を過ごさなければいけない中で。

    「あの人たちが気にしてるのは、人からなんて言われるかということばかり。片方の耳を壁に、もう片方をドアにくっつけて暮らしてる」

    身近に戦争がない時も、女性は家庭や社会において厳しい視線に晒されている。
    親から充分な教育を拒まれ勝手に婚約者を決められる。男子の出産を強制される。かと思いきや、『虫』のゾフラーのように芸術家志望を否定される。(否定した校長曰く、「アフガンでは女性の指導者や技術者が必要とされている」んだとか…)
    そのうえ本書の刊行はタリバンが政権に返り咲く直前であって、現在女性の立場はますます悪化の一途を辿っているという。

    女性の生き方を決めつけている点は日本も変わらない。
    しかし我々と違うのは、彼女ら18名の作家は各々の現実を一切オブラートに包んでいない。ペンの力を通して、男性社会(男性によって歪められた社会)に屈しない確固たる姿勢を示している。村を水没の危機から救った女性の物語『アジャ』では、正しいことを遂行する役割に男も女も関係ないという強いメッセージ性が発信されており、何より勇気づけられた。

    これほど「ペンは剣よりも強し」を肌で感じるこってなかなか無い。各シーンの断片が、まだ記憶に刺さっている。

  • アフガニスタンで女性が図書室を開設:深まる孤立に立ち向かう(記事紹介) | カレントアウェアネス・ポータル
    https://current.ndl.go.jp/node/46894

    わたしのペンは鳥の翼 | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09356742

  • アントールド(紛争地域の作家育成プロジェクト)の企画編集によるアフガニスタンの女性作家18人の23の短篇。ダリー語(アフガン・ペルシア語)とパシュトー語で書かれたものを英訳し発行(2022年2月)それを日本語に訳したもの。

    文学的表現を求めて読むとなると粗い部分もあるものの、愚直であっても伝えたいという気持ちが読み手に伝わってくる。

    風習や宗教は私たち日本人とは違うもののまったく理解できないということもなかったのは昔の日本の「家」といくらか似ている部分もあるからでしょうか。どの作品にも重苦しい空気が充満していて、いつ何時でも飛来する爆弾、家庭での抑圧、貧困、死…希望を見つけるのは暗闇で砂粒を探すようにとても難しい。

    それでも本書ではフィクションだとしても
    「アフガニスタンは女性の指導者、女性の政治家、女性の技術者、女性の経済学者を必要としている。」(P148)と言う先生が存在していたのに今はタリバンに女性の教育が非常に制限されてしまっている。胸が痛い。

    小学館の紹介ページ↓
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09356742

  • アフガニスタンの女性たちが受けている理不尽はまさに筆舌に尽くし難いものだ。
    21世紀の今も、これほどの人権蹂躙が国是とされるような社会で希望を温めながら生きなければならないとは、何と言ってあげても足りないことだろう。
    死なずに生き抜いてほしいと思う。

  • アフガニスタンでの女性の暮らし。
    その暮らしは常に死と暴力が隣り合わせにある。

    女性として生まれたが故にあらゆる選択肢を奪われ、尊厳を失い、日々は悲しみに溢れている。

    しかし彼女たちは強い。
    彼女たちの言葉がたくさんの問いを与えてくれる。
    想像する力を与えてくれる。

    見えない世界に思いを馳せる。

  • 人を幸せにしないなら宗教も慣習もなくなってしまえばいいのに。生きていくために生まれたものだったろうになぁ…。

  • 同じ地球上にこういう世界があるのか、と頭を殴られたような衝撃を感じる。
    ただ、これでアフガニスタンの人々を「理解した」と安易に言うことはとてもできない。きっと、どこまで行っても私は完全に理解できていない。

    厳格なイスラム社会での家父長制、女性の抑圧などを知識として理解はしていても、そこで生きる人々がいることを、心の動きを知ってリアルに感じるのは初めてだった。

  • 戦争やテロ、デモが当たり前に存在すること、そして家父長制もまた当然として存在することそれが大前提として物語が進むために、展開や心の動きの何もかもが予想できず衝撃的だった。
    アフガニスタンの女性がそれらを受け入れてて諦めているのではなく、当然苦しんでいて足掻いているということが痛いくらい伝わって、苦しい物語も多くあった。
    一方で、子の安全を願う気持ち、働くことに生きがいを感じることといった同じ気持ちも感じることもできた。
    また、アフガニスタンではどのような食器でどのようなものを食べ、飲み、どんな家に住んで、買い物は、学校は、などの暮らしが目に浮かぶような描写が素晴らしかった。

  • 救いのない物語が多くて、気持ちが沈むこともあったけど、彼女たちが紡ぐ物語をもっと読みたいと思った。

  • アフガニスタンの女性達が書く短編集。1つ1つの話が苦しかった。現実に起こっていることなんだろうけど、とてもじゃないけど想像もしたことがないことばかり。人権とは、と考えさせられました。。

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アフガニスタンの女性作家たちの作品

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