日本一の女

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863773

作品紹介・あらすじ

ブスでも鼻つまみでも超魅力的&パワフル!

三十二年前の七月九日に曾祖母・匹田サダは亡くなり、その翌日に私が生まれた。なんだか私は曾祖母の生まれ変わりみたいだ--。
サダは昭和二年、大分の片田舎に嫁いできて、村初めての精米所をつくり、大きな富を得た。さらに男の子を九人も産んだ。
家族を飢えさせることもなくよく働いたが、歯に衣着せぬ物言いのせいか、誰にも好かれなかった。息子たちにまでくそババアとののしられたが、それでも彼女は日本一の女太閤様だった。
「私にはな、金剛様がついちょるんじゃ。じゃあけん、精米所をやれば成功するし、子どもを産めば、みな男の子じゃ。金剛様にかぎらず神様も仏様も、自分の足でしっかり立っちょる者の味方じゃけんな」

【編集担当からのおすすめ情報】
●家族も隣人も卒倒! 歯に衣着せぬサダ語録
「そしたらお義母さん、体には気をつけんと。私は自分を悪く言う人の面倒は見られんけん、お義母さんは起きられんようになったら、それきりじゃと思ってください」
「私は二人産んでできやすくなっちょるけんな。一、二度ちゃっちゃとやりゃあ、すぐに腹が膨らむじゃろう」

感想・レビュー・書評

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  • 自分の思った事を貫いて生きた女性サダ。
    でも自分の子供達にあんなに嫌われちゃ~悲しくなっちゃうな。
    長男が母の事を、人として何かが欠けていると表現した場面が凄く印象に残った。
    サダはちょっと強すぎたね。

  • サダは自分に似ていて感情移入してしまった。
    そっけない言葉しか言えないので、疎まれ薄情だと勘違いされてしまう、自分だけを信じて戦時をストイックに生き抜いたる姿に涙がでてしまった。
    終始、認めてもらいたい!と強く思っていた気持ちは、誰よりも愛されたいのに愛情表現ができなかっただけ
    だったと思う。
    戦死した息子に似ている坊主さんのお寺の掃除に30年通い続けたエピソードには、泣かされた。
    読めてよかった。

  • 強い女だ

  • パワーのある一冊でした。読み進めるうちに、大分弁に親しみが湧いてきました。
    人を妬み口も悪くて周囲の人とも対立してばかりのサダ。
    決して褒められた人格ではないけれど、戦時中でも周囲に流されずに家族が得をする道だけをひたすら追求する強さと賢さには圧倒されます。人に一切媚びない生き方は確かに日本一だろうと思う。
    現代にはなかなか居ないタイプだけれど、少し前の世代を逞しく生き抜いてきた女性には似たような強さが備わっているのを感じたことがあります。
    サダのような人がいてもいいと思うけれど、心の中では常に悪態をついているし、周囲の人からも嫌われたり疑われたり妬まれたり、、、。サダの心が幸福や安堵感に包まれた瞬間はあったのだろうか?と心配になってしまう。
    子供を産んだ瞬間、美味しいものを食べた瞬間、ただ一度だけ正一が庇ってくれた瞬間には、やはり幸せを感じたんだろうか。

  • 図書館で。
    う~ん、なんかモヤっとする読後感。昭和の時代であの性格で、さらに女性じゃ生きにくかっただろうなぁというのはよくわかるんだけど… でもサダさんが日本一…かなぁ?まあ大負けに負けて九州一か熊本(だったか大分だったか?)一ぐらいならワカルけど… 

    狂言回し的に出てきた曾孫のエピソードは必要なかったような気もする。なんて言うのか家族に恵まれなかった情の強い女性…と言ったらなんか違う気がするし。色々掛け違えたボタンのような感じもするけれどもそこまで時間がたっても良くも悪くも執着が消えない辺りが親子とか家族って縁は強いのか、というのか…

    それなりに良い話…というか壮大な話にもなりそうなのになんだか駆け足で、登場人物が皆独りよがりな感じなのでちょっと読んでいて疲れました。誰が間違っていて誰が正しいって話ではないんだよな、きっと。でもそこに終始こだわっているサダさんが少し滑稽なような哀れなような。息子たちもそんなに母を否定することもない気もするけど… まあ否定したい気もわからなくはないけど。戦後、彼女が更なる事業を起こさなかったのはちょっと残念。

    後これ、表紙サギ(笑)だと思う。この表紙を見たら中心でカカと笑ってる剛毅な女性が主役だと思うじゃん。いや、豪胆で剛毅はそうなんだけど…こんなあけっぴろげに笑う女性では無いよね、サダさんは…

  • 勢いのある小説でした。戦前から戦後にかけて強烈な個性で生き抜いた曽祖母の回顧録から、その生き様を描いている。垣間見える子への思いはあるが、周りとの関係で後味の悪さは少し残った。

  • 大分弁がなかなか心地よく、読後感もなかなか良かったです。

    野津に嫁入りしてきたサダは、顔は猿に似ているし、美人の妹と恵まれた兄に囲まれて育ったため屈折した性格をしている。でも人一倍向上心があるので、嫁ぎ先に行って「あんたみたいな嫁は欲しくなかった」と言われれば「じゃぁ老後の面倒は見ません」と言い返すし、立派な精米所も作って、男の子をバンバン産む。

    でも、いくら「自分は正しい」と思っていても、柔軟性がないので他の人とうまくやることが出来ないし、口は悪いので、村人や果ては家族にまで嫌われてしまう。

    「こういう人いるよなぁ」と思いながらちょっとやるせない気持ちになったのも事実です。人生って難しい。

  •  サル顔のせいで片田舎に嫁がされ、軽んじられて生きてきたと感じるサダは、家族や社会の間違いを許さず、常に「正しさ」を求め、相手に勝つことにこだわる。

     美人だけれど男の子の跡継ぎに恵まれない妹に対しては、男子ばかりを産むことで。
     苦労なく家を継いだ兄に対しては、自らの発案で立ち上げた精米所を成功させることで。
     自らが正しいのだということを証明する。
     
     しかし、それは人に憎まれ、疎まれる道でもある。息子たちでさえ、次第に距離を置くようになる。加えて、日本が暗い戦争ムードに染められていくのと平行して、サダの人生も翳ってゆく。

     サダにももちろん心はあって、葛藤を感じることもあった。しかし、それを認めることはサダにとっては「間違っていること」を容認するのに等しい。それゆえ一層「正しさ」を証明しようとして周りと衝突するという悪循環。

     「家」が何より重んじられる時代でなければ。戦争が起こらなければ。時代や生まれが違っていれば、サダの人生ももう少し明るいものだったかもしれない。
     
     最後、息子たちにも嫌われたサダは、夫の通夜の席で笑いながら言う。
     
     「私は誰にも負けちょらせんけんな」

     そしてその後、息子たちには何も遺さず、自分の全財産を使い果たして死ぬ。

     確かに彼女は「最強」だけど、やりきれない気持ちになる。
     戦争で死んだ息子のことを思ったり、男子ばかりを産むことにこだわったがゆえに捨てた娘が生きていると知って、お手玉を渡してほしいと頼んだり。強さの裏で、サダが垣間見せた弱さ=愛情が印象に残っている。

  • サダの生き方はすべて正しい訳ではない。正義の人ではないが、自分の思い通り、曲げずに貫き通す生き方に、爽快感も、いらだちも感じながら、いっきに読んだ。
    爽やかな読後感があった。

  • 菩提寺の住職が、私に語ってくれた曾祖母の生涯とは。
    強烈な生き様で、強く引き込まれた。
    家族に愛されなくとも、悪口に負けることなく、たくましく生きる若きサダは、清々しい。
    後半のサダは、共感しかねる部分が多かった。
    それでも最後まで目が離せない、力強さのある物語。

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著者プロフィール

一九六四年大分県生まれ。横浜市立大学文理学部卒業。二〇〇八年、「千の花になって」(文庫化にあたり『踏んでもいい女』に改題)で第九回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。姉妹の確執を描いた第二作『凍花』がベストセラーに。他の著作に『幻霙』『日本一の女』『40歳の言いわけ』がある。

「2017年 『五十坂家の百年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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