ハッチとマーロウ

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 261
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864688

作品紹介・あらすじ

青山七恵が描くおちゃめな双子の物語

デビューから12年。青山七恵が温めてきた懐かしくて新しい物語。

「ママは大人を卒業します!」と突然の宣言。
11歳の誕生日に突然大人になることを余儀なくされたハッチとマーロウ。お料理ってどうやって作るの?お洋服、何を着ればいいの?双子に個性って必要?私たちのパパって、誰なの・・・・?少しずつ目覚めるふたりの自我と葛藤。
おちゃめでかわいい双子の日常が愛おしく過ぎていく。

結末に知るママの思いと双子の小さな約束に心揺さぶられる。

かつて子供だった大人へ、これから大人になる子供達へ贈りたい、感動の物語誕生。全編を飾るイラストは、大人気イラストレーター・田村セツコさん。

【編集担当からのおすすめ情報】
かわいい双子達の、子供らしい素直な気持ちに大切なものを思い出し、時々覗かせる大人の顔にドキッとする。冒頭からハッチとマーロウに心掴まれ、一気読み必至、そして予想外の結末に涙します。大切な人と読んで欲しい1冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 青山七恵さんの小説を読むのは、この本で3冊目。

    そのどれもが、全く違う雰囲気の作品で、様々なテーマを違う手法で書く方なんだなぁ…と感嘆。

    千晴と鞠絵、ハッチとマーロウと呼ばれる双子のママはミステリー作家。
    二人が11歳を迎える大晦日に、「ママは、大人を卒業してダメ人間になる!あなた達は、今日から大人よ!」と宣言して、その通りの日々が始まる。
    身の回りのことはもちろん、家事も二人でこなしてママの面倒を見る双子の一年間を、ひと月ずつ双子が交互に語るお話。


    挿画が田村セツコさんなので、子どもの頃、夢中になって読んだ「おちゃめなふたご」シリーズを思い出した(娘も気にいるだろうと与えてみたが、全く響かなかった苦い思い出もある)。

    双子というのは、兄弟であっても特殊な関係性がある。私が知る双子たちも、この二人のように、小学校卒業くらいまでは、共通の親友を挟んでいつもくっついている運命共同体のような印象だった。
    それが、徐々にそれぞれの人間関係を築いて少しずつ重なり合う輪が離れていく。
    その過程を、見事に描いているなぁ、と思う(ここまで仲良しの双子はそうそういない気もするけど)。

    ママがダメ人間になっても優しい双子ちゃん達。
    普通に考えたらネグレクトで通報ものだが、そこが小説の妙で、最後まで楽しく読めた。2021.6.27


    以下印象的なところをメモ。

    自由ってうれしいことのはずなのに、なんでもいいからとにかく文字で埋めなきゃいけないテスト用紙の空欄みたいな、苦しいものになってきちゃうんだなあ。
    p.83「四月ふうがわりな転入生のこと」マーロウより

    「聞いたり話したりしてわかることは、どっちにしろ、そのひとたちがわかろうとしていることのほんの一部にしかすぎないから。そうやってふたりがわかろうとしていることは、そのふたりだけが、わかっていればいいことだから」p.133「五月家出人と山菜採りをした日のこと」ハッチより

  • 11歳の誕生日にママから「大人を卒業します!」と宣言され、大人になる事を余儀なくされた双子”ハッチ”と”マーロウ”の日常、成長が描かれた連作短編集。

    田村セツコさんの、可愛い表紙•挿絵が物語のイメージにぴったり。おしゃまで、ファッションに敏感で、しっかり者の双子が、とても可愛らしく魅力的に描かれています。個性的なママや友達に囲まれた毎日は、賑やかで、色鮮やかで楽しそう。

    2人が奮闘する姿を微笑ましく読みながら、ふと自分に置き換えると、答えが出せなかったり、、、
    大人とは?個性とは?性別とは?2人に語りかけるママの言葉が心に響きました。ラストも良かった。自由に自分らしく、伸び伸びと生きる事の大切さを感じた一冊。

  • 11歳の双子の女の子たちが愛らしくていじらしくて、もうどうしていいやらっ!
    ちょっと「普通のママ」とは違うママの元で育つとこんなにもたくましくそして素直に育つのかと、うらやましくもあり。
    11歳から12歳、いろんなことが分かったり、中途半端に分からなかったり、そんな毎日も
    2人だから乗り越えていけたのだろうね。どんなときも2人一緒、という心強さ。
    この愛すべき2人の成長の物語には、人が大人になるために必要な、とても大切なことが全部まるっと詰め込まれている。
    「自由」に生きることの大変さ、「自分らしさ」の本当の意味、「大人の事情」という便利で面倒くさいこと、そんなひとつひとつに真正面から向き合う2人のこれからに寄り添っていきたい、ずっと。そう思った。
    いやぁ、本当にステキな物語。これは、小学生、かつて小学生だったオトナ、そして小学生の子どもを持つ親、必読の一冊!

  • 知っている地名が出てきて親近感がわきました。東京から来たおしゃれな子達だけど、穂高の伸び伸びした雰囲気があの二人にもママにも合っているような気がしました。子どもなりにいろいろ考えているんですね。双子だといつも一緒で話せる機会があってうらやましいです。すぐそばにいなくても、遠くにいても、いっしょに生きることはできる。こんな世の中でなかなか会えない日々が続きますが、私たちはいっしょに生きているし、生きていくことができます。
    エニド・ブライトンの『おちゃめなふたご』も読んでみようと思います。

  • 長野の山に暮らす双子のハッチとマーロウ。装丁の可愛らしさに惹かれて読んだけれど、とても可愛いお話でした。成長した二人も読みたいなぁ

  • 大晦日、双子のハッチとマーロウは11歳になった。ところが、ミステリー作家のママは、大人を卒業してだめ人間になると宣言される。そして、二人は子どもを卒業して大人になると言われる。えっ、と思う双子に関係なくママは何もしなくなる。それからの一年間をハッチとマーロウが交互に語る。

  • 日本の物語だけれど海外の児童文学みたいだと思いながら読みすすめた。
    双子のママは 母親だからしっかりしようなんて価値観を持ち合わせていない。でも自由でフラットな感覚がある。自分は自分。固定観念には縛られない。そこが魅力。ハッチとマーロウはこれからもふたりでいろんなことを乗り越えながら大人になっていくんだろうな。
    穂高の森の家でいろんな経験をして豊かな心をもった素敵な大人になってほしい。そう願わずにいられない。

  • 似ているけれど違う、同じだけれど別人、そんな運命共同体を奇跡と呼ぶ。片割れじゃ強く居られなかった。2人だから無敵なのだ。
    大人は泣いてはいけないのなら、永遠に大人にはなれない。それなら私も大人をやめる。人前で泣いてしまう事を恥だと感じていた。だけどそれは違うんだとわかった。問題は周りの受け止め方次第なのだ。弱いなら強く抱き締めてあげればいい。何度でも寄り添えばいい。
    どんなに遠く離れていても、想いがあれば一緒に生きている。二度と会えなくても繋がっている。綺麗事だと思っていた、けれど今なら少し理解出来る。そして時の許す限り、一緒に居ればいい。

  • ある日、双子の姉妹ハッチとマーロウはママから告げられる。『今日から二人は子どもを卒業して大人になります』そして当のママは『大人を卒業してダメ人間になります』と。
    ママの言葉や態度にいちいち翻弄されながら少しずつ階段を登りはじめる二人。
    粛々とダメ人間を実践するママだが、日常的に子ども達や取り巻く知人達との会話には様々な含蓄が読み取れる。
    小学校高学年から中学校くらいの世代はもちろん大人世代にも訴えかけるものがある。ちょっと切なくほっこりする物語。

  • とっても可愛かった!
    芥川獲った人がこういう童話みたいなお話書くととんでもなく優しく賢いお話になるなあ。
    ハッチとマーロウとママはもちろん、登場人物の大人も子供も全員素敵だった。大人だって昔は子供だったし、大人になりきれてない大人のほうが世の中多いと思うからママみたいな人間のほうが信じられる。
    外国の絵本のような世界観の中にもはっとする言葉がたくさんあった。またこういうお話書いてほしいなあ。これからも読み続けます。

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著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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