- Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093866248
作品紹介・あらすじ
「BUTTER」著者渾身の女子大河小説
大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。
彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだったーー。
感想・レビュー・書評
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著者渾身の女子大河小説、だ。
しかし、字が細かいしページも多くて、読むのになかなか頑張る必要があった。
明治から戦後までを生きた教育者・河井道が、一色ゆりとのシスターフッドのもと、理想の学園として恵泉女学園を創設し、女子教育に尽力する姿を描く。新渡戸稲造や津田梅子をはじめとして、戦前の著名人がたくさん出てきます。
なお、恵泉女学園は柚木麻子さんの母校だそうです。
「女同士が手を取り合えば、男は戦争できなくなるのにねえ」
作中の言葉で最も印象に残った言葉
まさしくそのとおりだと思った。
女同士が手を取り合う世界がいい。
男はくだらん理屈で戦争ばかりしていてしょうもない。
柚月さんは、どの作品でも女性同士にこだわる人だなぁ、と改めて思った。
男性は脇役にすら、扱ってもらえてない感がする。
読んでいて男性にとっては耳の痛い言葉も多いし。
登場するあまりに情けない姿の有島武郎が…とても笑えた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本のレビューは、何と書けばいいのだろう?明治、大正、昭和を描いた物語だ。
まず、冒頭に出てきた人物に驚いた。
徳川第十三代家定の御台所、天璋院篤姫
は、大奥時代の大女中の産子の名付け親になる。虎穴に入らずんば、虎児を得ずにちなみ、虎児とした。この時篤姫は、
徳川の子息が留学をする時には、手助けをしてくれ、と赤ん坊の虎児に言う。
この虎児、将来大変な女性に一目惚れをし、結婚することになる。
この本は、女性の地位向上、教育に奔走した人々の物語。様々な人々が出てくる。
恵泉女学園の創立者、河井道。恵泉女学園は、柚木麻子さんの母校だという。
津田塾大学の創立者、津田梅子。津田梅子は2024年から五千円札の新しい顔となる。
この本にはまだ他に偉人が出てきた。
岩倉具視、新渡戸稲造、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文、他にも時代を切り拓いていった人物は数知れず。このような人々がいてこそ、今があるのだろうか、と思ってみたりもする。
男尊女卑、と言われた世の中を負けじと生きた。その意思はどんなものだったのだろう。
明治、大正時代には女性は十六位で結婚
をしたという。政略結婚も珍しくなかったようだ。今でいう青春時代はなかった
のだろうか。それでも、河井道、津田梅子、らは女性の先頭に立ち、未来への道を切り拓いてくれた、と言えるだろうか。
この本を書くにあたって、柚木さんは
本当にいろいろな事柄を調べている。
参考文献の多さは、凄い!のひと言
だろうか。
頭が下がる思いだ。
2022、2、16 読了 -
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柚木麻子の新刊は「女子大河小説」 “インフルエンサー的な能力”もつ河井道の魅力を描き出す〈AERA〉 | AERA dot. (アエラドット...柚木麻子の新刊は「女子大河小説」 “インフルエンサー的な能力”もつ河井道の魅力を描き出す〈AERA〉 | AERA dot. (アエラドット)
https://dot.asahi.com/aera/2022012100016.html?page=1
2022/01/22 -
「保育園40か所落ちて…」話題の大河小説『らんたん』が生まれた意外な理由と作家・柚木麻子の想い | CHANTO WEB
https://c...「保育園40か所落ちて…」話題の大河小説『らんたん』が生まれた意外な理由と作家・柚木麻子の想い | CHANTO WEB
https://chanto.jp.net/going-out/book/283745/2022/05/26 -
〔週刊 本の発見〕『らんたん』(柚木麻子著) レイバーネット
http://www.labornetjp.org/news/2022/ho...〔週刊 本の発見〕『らんたん』(柚木麻子著) レイバーネット
http://www.labornetjp.org/news/2022/hon2572022/06/09
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恵泉女学園を作った女性達の話。時代は第一次世界大戦後から、昭和初期まで。
最初の登場シーンで、この人達嫌い、苦手なタイプの女性と読むのをやめようか迷った。
でも諦めたくないと頑張って読み進めていると、今度は視点がコロコロ変わり出し、更に読み辛くなった。
それも主人公っぽい二人の視点だけじゃなく、新たな登場人物が増える毎にその人の視点に変わるのがきつい。出て来る人達が有名人で、知ってる名前じゃなかったら、ここで読むのを諦めていた。
第二部に入ってようやく、主人公って河井道なのかなと思えるように。道視点からが増え、道もただ明るく前向きに娘娘して生きているだけでなくなり、感情移入出来るようになったら、面白く読めた。そして話が進むにつれて、最初の登場シーンやあの視点の変わり様にも作者の意図があったのかもと思うように。
それにしても、当時の男性作家の書かれ方が辛辣w徳冨蘆花、有島武郎、太宰治。流行作家だけど、完全なるダメ人間。徳冨蘆花と有島武郎の本は読んだことないので、もうイメージがこの本のイメージになってしまった。
それに対して、新渡戸稲造の神の如きヒーロー感。素敵過ぎてファンになりそう。 -
史実に基づくフィクションではあるけど、河合道さんの伝記を読んでいるかのような気分で読了した。
津田塾大学の津田梅子さん初め、新渡戸稲造氏や、歴史に出てくる人物が次々登場し、よく練り込まれているなぁと感心した。
三部作になっており、496ページではあるが、女性の今の立場を切り開いてくれた人たちの苦しみや努力や勇気に圧倒された。 -
教育者河井道の一代記。彼女の広範な人脈が張り巡らされた本書は、近現代の歴史書ともいえよう。彼女と二人三脚で学園創設、慈善活動に取り組んだ元生徒、一色ゆりとの関係性も興味深い。「シスターフッド」とは「血縁関係をもたない女性同士の絆(引用)」とのこと。ゆりが結婚後も同居することに対し、最初は違和感があったが、読み進むにつれごく自然な成り行きだったのだとわかった。目的達成のために力を合わせる意義は大きい。
長編で登場人物も多彩。そんな中、彼らのせりふ回しが舞台劇のようで、テレビを見ている感覚になった。広岡浅子、村岡花子といった朝ドラのヒロインが登場したからだろう。さらに有島武郎が全編を通して主人公の周りを「うろついて」いるのも面白い。「或る女」のエピソードについては、自分も読んでいたので人物設定に対する道の怒りはよくわかった。有島武郎は死後も亡霊のごとく現れるが、どんな意味があるのだろう。(その辺がモヤモヤだ…。)太宰治もちょこっと出演。恩師が新渡戸稲造、津田梅子。道自身、戦後処理の根幹となる部分で大きな役割を果たす。著者の何もかも書きたくなる気持ちが伝わってくる。
自分も含め周囲に同窓生はいないが、一時期ご近所だったこともあって興味深く読めた。全編を通して前向きなヒロインを、いつかスクリーンで観たい。 -
著者の出身校、恵泉女学園の創立者、河井道と渡辺ゆりを中心とし、彼女たちを取り巻く周辺の人物たちの物語。
興奮するのは、NHK の朝ドラ、「朝が来る」や「花子とアン」を思い起こさせる脇を固める女性たちの姿。
平塚明(らいてう)、柳原白蓮、村岡花子、津田梅子、大山捨松、ベアテ・シロタ…。
男性なら新渡戸稲造、有島武郎が周囲を彩る。
女子教育の志は、私自身が(恵泉ではないが)女子校で学んだからよくわかる。
男性のみが許されていた高等教育を女性にも、というのは今も残る多くの女子校の建学理念である。
戦後確立された男女共学の素晴らしさももちろんわかるし、子供の減による共学化という変化も否定するものではない。
しかし、信念を持って建学した人々の苦労と努力は、「人口の半分が男子なのに」などと薄っぺらい言葉で貶められるべきではない。
女子にも男子と等しく教育を与えたい、女性自身が自分の足で立って考えるということがいかに進歩的で、大変なことだったかを知らずに語られたくはない。
86頁、新渡戸稲造の言葉、「提灯のように個人が光を独占するのではなく、大きな街灯をともして社会全体を照らすこと。(中略)お互いが助け合い、持っているものを分け合わないといけない。(中略)シェアの精神が行き渡らない限り、夜はずっと暗いままです」
448頁、道が言う、「良妻賢母教育に終始するのではいけない、楽しむことをもっと」という内容や、戦争に加担せざるを得なかった苦悩など、本書は何度も私の胸を打った。
まだまだ日本の女性の立場は高くない。
経済で行き詰まるのなら、ジェンダー格差のない、そのNo. 1を目指してはどうだろう。
今もたくさんの人が、日々を、歩むことで、切り拓いている。
私なりのやり方で、社会をよくしたい。
それが道らの描いた未来につながると信じて。 -
2部の途中からがとても面白かった。
まず、明治・大正・昭和(戦前)時代に、有名な津田梅子達以外にも、民間人の女性達が海外(アメリカ)留学を果たしていること、その人数が思いのほか多かったことにビックリした。津田梅子、大山捨松、新渡戸稲造などなど色々な著名人が登場するけれど、ドラスティックに社会が変容する明治維新以降の日本で、予想以上に様々な人や物が、国を超えて活発に動いていたのだなと思った。交通網も通信網も今ほど発達していなかった時代なのに、すごい。
敗戦を経て日本社会は大きく変わったという印象があるけれど、日本人の本質は変わっていないと思う。この小説の主人公である恵泉の創立者 河合道さんの考え方には尊敬したり共感したりできるところが多く、こういう教育者の下で十代を過ごせたら素敵だろうと思った。提灯のように自分の足元だけを照らすのではなく、ランタンのように周辺全体を明るくするという考え、光(希望)をシェアするという考えが素晴らしいなと思う。
あの時代に女性に自由や権利を獲得するために戦っていた女性がこれほどいたのに、今の時代にこういった活動をする女性があまり目に触れないということは残念だなとも感じた。もちろん、今は女性にも参政権はあるけれど、男女平等のレベルなど日本は低いままなのに。
この本を読む前に偶然、「なぜ日本では女性同士が助け合えないのか」というような論評を目にした。未婚・既婚や正規・非正規雇用、子供がいるかいないかなどの差により分断されているため、層を超えて手を取り合えないというようなことが書かれていたと記憶している。シングルマザー世帯の貧困率の高さ、非正規雇用率の高さ、待機児童、仕事復帰などの女性に関する社会問題が数多くあるのに、残念なことだ。この点、この小説の舞台となっている時代の方が進んでいたようにも思える。
広川浅子や村岡花子と柳原白蓮など好きで見ていた朝ドラの主人公たちもたくさん登場するのが楽しかった。 -
柚木さんは真摯な姿勢を尊敬している作家さんで、これまで作品を読む度、この作品が支えになる人が必ずいるだろうなと思っていた。
それが今作では私だった。
ありがとう、柚木さん。
恵泉女学園を創設した河井道と一色ゆりを中心に、社会を変えようと必死に生きた女性たちを描いた大河小説。
序盤はゆりの話をしていたのがいつのまにか道の話になっていたりして混乱もしたけれど、さすがの上手さにどんどんと引き込まれ、一気読みだった。
描かれた女性たちは皆生き生きとしていて魅力的で、それぞれについての関連書を読みたくなった。
この本がまさに柚木さんからのらんたん。
受け取ったのだから、自分だけじゃなく周囲まで照らせる灯りを広げていかなきゃね。