私たちには物語がある

著者 :
  • 小学館
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  • / ISBN・EAN: 9784093881036

感想・レビュー・書評

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  • 私は決して書き手にはなれず、永遠に読み手であるばかりだ。
    しかし私の敬愛する角田さんは、書き手であると同時に読み手でもある。
    しかも書き手としてのおごりなど微塵も見せることなく、純粋に本を愛する読み手として彼女いわく“感想文”をつづる。

    彼女が読書家であり続けているということは有名な話ではあるが、この本を読んで改めて彼女の幼いころから変わることのない読書に対しての貪欲な思いを知ることができた。
    私は常日頃からこの世界には膨大な数の読むべき本がある現実に途方に暮れるばかりの思いを抱いているが、彼女も同じ思いを持っているとは一ファンとしてなんとも嬉しいこと。

    ただ一つ厄介なのは、彼女が“面白い”と思ったこの感想文を読むことによって、私のウェイティング・リストがさらにさらに長く長くなってしまったことである。
    ああ、時間が全く足りない!

    また、この本を読んでもう一つの思いを抱いた。
    この本はほとんどが現代小説の書評が中心であるが、太宰や川端と言ったいわゆる文豪についての書評も含まれている。
    そういえば角田さんは初期のころは純文学を書いており、自分の文体にこだわっていた。それが30代頃からあえて個性のない文章を書くようになったと言っていたはず。
    確かに最近はエンタメ系に比重を置いてきているし、それによって彼女の作家としての地位が確固たるものになった。
    しかし、彼女の文豪たちの作品への深い理解と尊敬の念を知ってしまうと、ああ、もっともっと角田さんがこだわってこだわりぬいた個性の塊のような文体で彼女の作品を読んでみたいななどと思ってしまう。
    これはぜいたくな望みだろうか・・・。

    • まろんさん
      タイトルだけで心を揺すぶられる本ですね♪

      角田さんの本は数えるほどしか読んだことがないのですが
      純文学を書いていらした作家さんだったんです...
      タイトルだけで心を揺すぶられる本ですね♪

      角田さんの本は数えるほどしか読んだことがないのですが
      純文学を書いていらした作家さんだったんですか!
      全く知らなかった不勉強な私。。。
      敢えて文体を変える決意をした結果、今の地位を築いた角田さんが
      どんな本を読んで成長してきたのか、vilureefさんのこのレビューを読んで
      とても気になってきてしまいました。
      さっそく検索しなくては♪
      2013/03/18
    • nejidonさん
      こんにちは♪
      いやはや、まろんさんと同じです。
      私もこの作家さんはなんとなく苦手でして・・
      いえ、苦手なんて言えるほど読んでもいなかったので...
      こんにちは♪
      いやはや、まろんさんと同じです。
      私もこの作家さんはなんとなく苦手でして・・
      いえ、苦手なんて言えるほど読んでもいなかったのです。
      そうですか。純文学の書き手でいらしたのですね。
      見方が変わってしまいましたよ。単純ですねぇ、ワタクシ。
      地元の図書館にあれば良いのですが、なかったら
      入手できるのは少し先になるでしょう。
      でも「読みたいリスト」に入れておきます。
      素敵なレビュー、ありがとうございました!
      2013/03/19
    • vilureefさん
      まろんさん、nejidonさん、こんにちは!

      私は角田さんだったら文句なしに☆5つつけちゃうくらい好きなので小説のレビューの評価は眉唾...
      まろんさん、nejidonさん、こんにちは!

      私は角田さんだったら文句なしに☆5つつけちゃうくらい好きなので小説のレビューの評価は眉唾かもしれません(^_^;)

      確か「空中庭園」あたりから大衆小説に移行したはずです。
      彼女は女性の嫌な部分とダメな男性をずっと書いてきているので、この辺で相性が合わない人もいるんでしょうね・・・。

      でも、この書評集は彼女の小説とは切り離して純粋に楽しめると思います。
      例えば、「星の王子様」「ライ麦畑でつかまえて」などの有名作品から、三浦しをんさん、長島有さんなどの身近な作家さんの作品まで取りあげていて、角田さんが身近に感じられること請け合いです!!

      おすすめです(^_-)-☆
      2013/03/19
  • 例えば、
    恐ろしく分厚い本に目が留まり、
    書棚から(よいしょ)っと抜き出した時などに、ふと。

    これからこの本を読破するとなると、
    何日そこに留まることになるだろう。
    誰かがこしらえた、
    架空の世界に、
    今を生きる私のほんとうの時間を
    どれだけ置いてくることになるだろう?

    なんて、
    アホな事をつい、毎回考えてしまう。

    生きる本当の時間をどう使えば正しいのか?
    についての答えはわからないが、
    この本のなかに費やすとするのなら、
    それが私にとっての、最高に幸せな(正解)であるような気がして、つい、ニヤニヤしてしまったりするのだ。

    え~と。

    角田さんのこの本は、書評集である。
    (本人は感想、と述べてはいるが。)

    読み終えて、
    普通の書評集とちょっと違うかな?と、思ったのは、
    読ませる力がとても強くて、
    どの本も面白そう!と、思ったのに、
    チェックをせずに終えた所。

    一冊の本がひとつの島だとすると、
    (この島に行ってみたい!)という希望より、
    こんな島がたくさん存在するなんて、
    本の世界って、やっぱ面白いなぁ~
    なんて、
    角田さんの
    びんびんと伝わる読書愛が
    時計の存在を失っても実は許される、(物語)が存在するこの世界の素晴しさに、改めて感動した所かな。

    とても多くの本を紹介してくれているので、
    これまでに読んだ事のある本との再会も嬉しいし、
    まったく、知らないジャンルの本の鍵も
    ジャラジャラ頂いたりして、
    本の世界のフィールドの広さを改めて思い知った。

    爽快な旅でもしてたかのような気分になれた感想集。

  • 「男の爪は硬く、女の二の腕は冷たくてやわらかい。男女同権のささやかな犠牲として、そうしたどこか艶めかしい『異』も、消えつつあるように思う。」(向田邦子)

    川端康成、太宰治、「ライ麦」、どれも作者と同じような気持ちで遠ざかっている本たち。また読んでみたいという気持ちになる。
    さて自分がどれだけ成長したのか変化したのか試されてるぞ。これは。

    それにしてもこの本のとりとめのなさに集中力が続かない。
    ブクログのレビューを読んでいるような気分にもなる。
    新聞や雑誌掲載のせいか堅苦しくて抽象的すぎて、読んだことのある本さえ「え?そう?」という気持ちになる。
    週末の新聞の書籍紹介頁が好きだし、そこに知っている作家さんが本を紹介していると読むのが楽しい。連載だと翌週も楽しみなんだけどな。
    でも、この本のようにそれがひたすら続くと辛くなる。
    NHKの連続ドラマを一気にみせられたときに似ているのかも。

    それでもジワリジワリと読みたい本が増えていく。
    開高健の新刊だって!きゃー。
    佐野洋子、伊藤比呂美、ジュンパ・ヒラリ。繰り返し出てくる作家さんがいて角田さんの本棚に触れた気がする。

    「本がおもしろいものだということは、小学校に入る前から知っている。つまらない、とか、難解だ、とか、相性がどうも合わない、とか、そういうことも含めて、おもしろいことを知っている。なのに不思議なのは、おもしろい本に出くわすたび、『こんなにおもしろいなんて!』と、ぶったまげてしまうことだ。」

  • 滅多に読まない書評エッセイにチャレンジ。
    たまに小説らしきものを読むと、どうしても気になってしまうことがある。
    文章が美しいかどうかという一点だが、ここでひっかかるとどうにも先へ進めないのだ。
    美しいとはつまり、無駄がないということ。

    長いセンテンスだったり、同じ内容を表現を変えて執拗に繰り返したりするのはもうダメなのだ。
    特に、負の感情を呼び覚ますものはいけない。
    わざわざこんなことほじくり出して書くなんて、意地悪なひとだなぁと。
    リアルなものをあまり知らない年頃だったら、それも新鮮で面白かったろうが、日々怒涛のごとくリアルのまっただなかにいる身には、申し訳ないが「NO!」。
    そんなわけで、この作家さんの作品もほとんど触れたことがなかった。

    それが、ブクログのお仲間さんのレビューにひかれて読んでみたのだ。
    ファンの皆様、謝ります。目からウロコでありました。
    この方、たいそうな読書家さんで、しかも心底本を愛していらっしゃる。
    形式上「書評」という形をとってはいるが、批判めいたものは感じられず、ただひとりの「本を愛する女性」としてのスタンスがとても心地よいのだ。
    内容も多岐に渡り、「川端康成」や「太宰治」などの純文学を語ったかと思うと、「ライ麦畑でつかまえて」や「若草物語」など、本好きの食指は自在に動いていて作家さんへの限りない敬愛の念があふれている。

    とりわけ、叔母にプレゼントされたある本が、子供の頃に読んだ時は全く面白くなかったのに、9年経って再び読んだ時に初めて本当の面白さがわかり、ものすごく感動したというエピソードでは、この著者に親近感を持ってしまった。
    自分自身にもそういう出会い方をした本が何冊もある。
    「相手が解決すべき問題ではなくて、こちら側が抱えるべき問題」なのだから、これからは少し守備範囲を広げてみようかとも思う。
    後半部分は残念ながら未読の作家さんが多くなったが、今度これを読んでみようという気になった作品もちらほら。
    良い本に出合えるきっかけを与えてくれる、そんな一冊です。
    ブクログのお仲間さん、どうもありがとう!

    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは!

      おお!さっそく読まれたのですね(*^_^*)
      角田さんの書く小説の好き好きは別としても、この書評集...
      nejidonさん、こんにちは!

      おお!さっそく読まれたのですね(*^_^*)
      角田さんの書く小説の好き好きは別としても、この書評集は本好きの皆さんなら共感する部分が多いですよね!
      nejidonさんにも気にいってもらえてうれしです♪

      ところで、角田さんてこの本に限らずどこでも開高健を絶賛しているのです。
      私にとっては未知の領域・・・。
      いつかはと思いつつ、勇気が出ません(^_^;)
      2013/04/03
    • nejidonさん
      vilureefさん、こんばんは♪
      いつもコメントをくださってありがとうございます!

      はい、これも他図書館からの借り入れで読みました。
      お...
      vilureefさん、こんばんは♪
      いつもコメントをくださってありがとうございます!

      はい、これも他図書館からの借り入れで読みました。
      おかげさまで、とっても楽しく読みましたよ~。
      ありがとうございます。
      ただもう純粋に本が好き、という姿勢に好感度大幅アップとなりました。
      ご本人の作品だけでは、決して分からない部分ですよね。

      開高健さんは、私は二冊しか読んだことがないのです。
      【裸の王様】と【オーパ!】ですが、ずいぶん前のこと。
      でもすごく夢中になって読んだ記憶がありますね。
      語彙の豊富な、表現力の豊かなひとで、ずっしりと読み応えがあったと思います。
      頭の中で考えたことを本にするタイプの作家さんではないので、たぶんそこに起因するんでしょうね。
      読まれるには、ある種の覚悟が必要かもしれません。
      あー、こんなことを言ってたら私も読みたくなってきましたよ。
      2013/04/03
  • 読みたい本がまた増えた...orz...

  • 「まるごと物語にのみこまれることの至福。すべての本とすべての本を必要とする人へのラブレター」

    角田/光代
    1967年生まれ。90年『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞、96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、99年『キッドナップ・ツアー』で路傍の石文学賞。2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞を受賞

  • 「こういうことを書くのは本当は恥ずかしいのだけれど、でも、書く」とワザワザ書かなくてもいいような事を、あとがき冒頭に書いてしまう角田光代って正直な人なんだろうなって思う。TVのインタビューなんか見ていても、ふんわりした語り口で、素直で誠実そうな可愛らしい中年女性という感じで、あまりにも「いい人」感出まくりで、こういうのって作家としてはどうなんだろ?と余計な心配をしたくなる。
    商業書評って基本的に褒めなきゃいけないから、「文才のあるいい人」な彼女にとっては天職なのかもしれない。でも、随所に唸らされる表現を見つけると、ああやっぱり作家の言葉遣いは違うし、単なるいい人じゃないのかもなってちょっと安心?というか納得する。

  • 角田さんの小説は2冊しか読んだことないけどなんとなく手にとってしまった書評。(ご本人は感想文とおっしゃてるけど)

    角田さんの小説を読んでうわーうまいなーと感じる部分が短いスパンにたくさん詰まっててすごく贅沢なものを読んでいる気分を味わえた。

    現代文学中心です。

    最近読んだ狐の書評では自分が読んだことある本が1冊も入ってなかったけどこの書評は3分の1ちょっとは読んだことある本たちでした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      読もう読もうと思っていながら、一冊も読んでいない角田光代。一冊目はコレにしようかな?
      読もう読もうと思っていながら、一冊も読んでいない角田光代。一冊目はコレにしようかな?
      2012/07/24
    • 美希さん
      >nyancomaruさん☆

      私も角田さんの作品はこれふくめて3冊しか読んでないんですよー。「八日目の蝉」と「愛がなんだ」。両方良かっ...
      >nyancomaruさん☆

      私も角田さんの作品はこれふくめて3冊しか読んでないんですよー。「八日目の蝉」と「愛がなんだ」。両方良かったですよ。
      2012/07/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「八日目の蝉」と「愛がなんだ」」
      「八日目の蝉」は先日TV放映された映画を、、残念なコトに見逃しました。DVDレンタルして鑑賞してから読も...
      「「八日目の蝉」と「愛がなんだ」」
      「八日目の蝉」は先日TV放映された映画を、、残念なコトに見逃しました。DVDレンタルして鑑賞してから読もうと思っています。。。
      2012/07/26
  • とてもいい書評集。
    角田さんのことがますます好きになった。


    書評を読んでその本を読みたくなったらすぐに手に取って物語の世界に入り込む、読み終わったらこの本に戻ってまた次の物語に‥と交互に読んでいくのが一番いい読み方かもしれない。
    この本を読んでいると物語が読みたくて仕方なくなって、だんだん書評を読む心持ちじゃなくなってしまう。

    こんなに強烈に読書欲(と言っても間違いではない強い欲求)をかきたてる本は初めてかもしれない。
    面白いのに(面白いからこそ)、最後まで集中力が続かなくなると感じた本も初めて。


    読みたい本が無くなったらまた読もう。
    …まぁ、当分無理だけど。

  • 最近、作家のエッセイを自分が求めている。
    それで借りた本。角田さんの読書感想文だった。
    書評として頼まれた仕事はできるだけ断らず引き受けている。そうして書いてきたものを1冊にまとめたもの。でも自分では、評するではなく、感想文を書き溜めている感覚だとか。
    この中に出てくる本で私が読んだことのあるものはほんの数冊だった。角田さんですら読んでいる本は一部にすぎないと言っている。そうなると私の読んだ本は、砂浜の砂の一粒ぐらいなものだろうと思った。
    それにしても、作家が感想文を書くとこうも情景的になるのかと感心した。そらそうだ、プロだもの。ド素人の私だけど、少しは近づけるように日々鍛錬だと思った。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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