- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093892421
作品紹介・あらすじ
ジャーナリスト・田原総一朗が近代史の泰斗・坂野潤治東大名誉教授と近代史の内幕を徹底的に分かりやすく語り尽くした異色の対談。「明治時代はデモクラシーの時代だ」「戦前は暗黒の軍国主義の時代というのは真っ赤な嘘」「西郷隆盛の征韓論はそもそも清攻略が目的だった」「日本は古代から象徴天皇制だった」など、思わず「そうだったのか!」とうなずく面白エピソードが満載。これまで偏向記述の多かった歴史で、「戦前は国民が軍隊に支配された暗黒の時代」とだけしか教えてもらえなかった人々は、未体験の知的冒険世界に誘われるはずだ。イデオロギーにとらわれずに見た日本の近代は、なんと魅力的な時代だったことか。この本によって「大日本帝国時代」は暗黒から解き放たれるだろう。
感想・レビュー・書評
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なかなか驚きの昭和史を発見できる。まぁ明治憲法が極めて民主的な憲法であるなどというのは解かっていたが、北一輝が左翼であるとか、日露戦争開戦前は反戦世論が圧倒的多数であったとか、東条英機は和平を目指していたため、民衆から山のような抗議葉書が連日届いていたなど新しい発見がある。教科書的な昭和史(2.26事件以降ファシズムが台頭してきたなど)につじつまが合わないと感じていた私としては、腑に落ちる本であった。(5.15と2.26は反対の意味がある)また、マスコミが世論を作るなどは、はなはだしい思い込みであり、マスコミは常に大衆に寄っていくものだという視点もいい。SAPIOに連載されていたものだが、周囲からかなり異を唱えられたらしい。しかし坂野氏は岩波の読者に読ませても意味は無い。保守の人にこそ読んでもらいたいからSAPIOに載せたのだというのはうなずける。保守も左翼も常に自分たちの中だけで騒いでおり、外に向けて発信することをしない。全く壷の中で騒いでいるだけだ。
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著者は他の著作を読む中で、歴史家の中でも考察がとりわけ深いと感じていたが、著名なジャーナリストと対談する本書は「歴史研究家の本音」を正直に語っているようで実に面白かった。
「大日本帝国憲法」や「天皇機関説」をめぐる周辺の実態を普段の話し言葉で聞くと実にわかりやすい。
著者の他の著作を読んだ後でこの本を読むと、歴史家としての本音が伺えて、実に興味深かった。
「大隈重信は裏切り者」などの露骨な指摘は、歴史書には決して出てこない表現であるが、「なるほど明治14年の政変をそう捉えるのか」と思わずうなずいてしまった。
「満州事変拡大は米国のミス」では、昭和11年・昭和12年の選挙情勢や「言論の自由が日中戦争の前まではあった」などが語られているが、その当時の風景は現在一般に思われているものとはだいぶ違う。
当時の国民は「さっさと戦争をやれ」とあおりながら「最悪のことは起こらないと」思っていたという。
「アメリカたるものが、まさか日本と本気で戦争なんてしないだろうと、日本人は思った」とは、そうだったのだろうか。
そうだとすれば、これは歴史の問題というよりも、日本人の「国民文化」の問題でもあるだろう。そして、その「国民文化」はおそらく現在でもあまり変わっていないだろうと思うと、現在の政治状況もあわせていろいろ考えてしまった。
本書は、歴史を現実感をもって捉えることができる良書であると高く評価したい。 -
この本は,明治憲法時代の日本に民主主義はあったのかという問題について,田原総一朗氏と坂野潤治氏が対談形式で掘り下げていくものです。
「帝国」,「新憲法」,「アメリカによって」などのキーワードにより,「民主主義はアメリカからもたらされた」とか「日本国憲法はアメリカによって押し付けられた」という現代の定説を否定する内容となっています。明治維新を経て,海外雄飛や殖産興業と並行する形で公議輿論があり,大日本帝国憲法が成立していく過程の中で,政党内閣派と議員内閣派のせめぎ合いがあった経緯など非常に分かりやすかったです。
その後,天皇機関説を巡る各事件を経て,満州事変へと話題は移っていきます。坂野氏は,大日本帝国憲法成立時点からある程度は民主主義は運用されており,南京事件を境に終戦まで民主主義が途絶えると言います。
政権交代する前の少し古い本で,田原氏の質問に少し疑問を感じる点もありましたが,全体的に坂野氏の近代史理解は私にとって受け入れやすいものであることがわかりました。もう少し同氏の本を読んでみたいと思います。 -
対談形式なので濃い内容でも読みやすい(←個人差あるでしょうが…)。坂野さんの考え方もよく分かる。もっと調べたいテーマが次々浮かんできて刺激されました。戦前から象徴天皇制だったというのが印象的。