- Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094065398
作品紹介・あらすじ
スウェーデン売上1位の傑作犯罪サスペンス
15歳の少女3人の連続失踪事件を追うベリエル。目撃の通報を受けて急行するも、3度とも現場はもぬけの殻で、彼は苛立ちを募らせていた。事を荒立てたくない上司の警告をよそに、殺人事件だと確信し捜査に執念を見せるベリエルはやがて、それぞれの現場写真に映る不審な女に目をつける。緊迫の攻防、息を呑む逆転劇、衝撃の真相……。ここまで目を見張る取り調べシーンがかつてあっただろうか。ページをめくる手が止まらない、スウェーデンNo.1ベストセラーの傑作犯罪サスペンス!
感想・レビュー・書評
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日本では8年前に『靄の旋律 国家刑事警察 特別捜査官』一冊しか邦訳されていないが、スウェーデン本国では大御所の作家であるようだ。複数捜査官による警察小説を得意としつつ、別名義で純文学を書き、文芸評論家であり詩人でもあるいわゆる表現のプロ。そのイメージはページを開いたところからがつんと来る筆力を見ると、なるほどごもっとも。
冒頭、二人の少年の印象的なシーンから、いきなり犯罪現場らしき場所での警察突入シーンに視点が移る。読者はこれですぐに持っていかれるだろう。
少女たちの連続失踪事件を追うベテラン刑事の目線で語られる一部から、マークされた怪しげな女性の事情聴取と尋問が始まるが、その辺りから本編は逆転に次ぐ逆転という驚くべき展開を見せる。すべては見た通りではなく、錯綜した裏がある。
そう。最初に見えたのがすべてではなく、次に見えてくるものも不確かと思えてしまう捩じれた世界。事件の全体像が見えるまでの緊張はラストまで途切れることなく続くが、作中の世界は変容を重ね、真実が幾様にも姿を変え、人間たちは見たままではなく、意外な展開を見せてゆく。
挿入される少年たち少女たちのシーンが驚きの展開を見せ、作品に重要な光を投じる。現在と過去は複雑に繋がる。フーダニットのミステリーから、プロットを楽しめる全体像となってゆく。何よりもこれは新シリーズの第一作なので、この事件のその後まで気になるという驚くべきシーンで終わりを迎える。いや、始まりを迎えるのか?
登場人物の多さも、この後の作品への布石になるのかもしれない。予想外の死体発見シーンが読者を混乱させ、何一つ確信させてくれないところが、日本語タイトルにも反映された何ものかであるのだろうか。
印象的な部分は、主人公と犯罪者の双方の、時計へのこだわり。各章が月日と時刻でしっかり刻まれる。仕掛けへのこだわり。組織同士の化かし合い。時に過去が入り込むこと、などなど。
二人のヒーロー&ヒロイン像の個性とパフォーマンスが良いので、今後のシリーズに期待ができる。次作の邦訳も進められているという巻末の解説に少しほっとするし、これは二作以降も読まざるを得ない。決着のついていないことが多いように思う。次作まで持ち越しの宿題なのか?
全体的にエンターテインメントとして申し分のない読書時間を供給してくれた作品である。次作が待ち遠しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一年七ヵ月の間にスウェーデン国内で起きた、三件の十五歳の少女失踪事件。ストックホルム警察犯罪捜査課のサム・ベリエルは同一人物による連続殺人だと主張するが、上司はそれを否定しまともに取り合おうとしない。しかしベリエルの主張の裏には、彼だけが知っている根拠があった。そしてついに彼は、容疑者へと辿り着く。だが尋問に臨んだベリエルを待ちかまえていたのは、予想を遥かに超える驚愕の事実だった―。『靄の旋律 国家刑事警察特別捜査班』が印象に残る作品だったので、翻訳が途絶えのを残念に思っていた。新シリーズはツイストがやや効き過ぎ。しかも次作に続くとは。楽しみである。
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三人の15歳の少女の失踪から始まる物語。三人はどこへ消えたのか。主人公のベリエルの捜査と途中で挿入される一つの挿話。緊張感や不安感が伝わってくる展開と徐々に犯人の姿が見えてくると同時に増していく狂気。シリーズの一作目としてすごく面白く、ラストの展開で次作が非常に楽しみになった。
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「怒涛の展開」
こんなにこの言葉が似合うミステリーは、滅多にない。
どんな感想を書こうとしても、全てネタバレになるような気がして、書けない。
北欧ミステリーは好物だけど、またひと味違う。
印象的なのは「雨」……。
でも、最後だけは気に入らない。
次を「読まなければいけない」のと、「読みたくて仕方ない」は、違う。
だからちょっと残念。
なぜそう思うかは、やっぱりネタバレ。 -
海外のミステリードラマを見てるような感じ(良くも悪くも)。
展開が早くてどんどん話が進んでいくのは、まさに海外ドラマのようで、このぶん回される感じは嫌いではない。
ただ、今展開している場面は刺激的だけど、説明不足だったり、展開が唐突だったり強引だったり、腑に落ちないことがあったとしても、それをすっ飛ばして話が進んでいくところもあちこちに転がっている。
まさに、海外ミステリードラマの良いところと悪いところの詰め合わせ。
読みやすくてサクサク進むけど、果たしてこういう展開はどうなのかと思うことも多く、しっくりくないというか、置いてけぼり感がいっつも付き纏っていた。
続編もありそうな終わり方だったけど、次は手に取らないかな。
驚愕の展開とかの形にばかりこだわって、中身がついてきていない感じ。 -
調子良過ぎる感があるけど、迷路に誘われ置いてきぼりにされた様な感覚の内容。章ごとに入れ替わる不思議感。他の方も書いていらしたが、先入観なしで読んで頂きたい。
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私はなにを読んでいるのだろう?
そういう読書体験だった。
整理しよう。
時は現代。スマホがある時代だ。
場所はスウェーデン、ストックホルム。
なにがしかの事件が起きて、警察はそれを捜査中らしい。
捜査の責任者は、サム・ベリエル警部。
上司に反発しながら、優秀な部下を率いて、精一杯捜査を進めている。
ひとつひとつの手掛かりを追って、じれったい思いをしながらも、彼は事件を解決していくのだろうと、私は予測する。
こういう話は、たいていそう進んでいく。
それが、そうならない。
知らない世界に連れていかれる。
私はなにを読んでいるのだろう?
いったいどこにいるのだろう?
これがいっそ心地よいので、この本は、なにも知らずに読んだほうが面白い。
裏の紹介も巻末解説も帯も目に入れず、当然、こんなレビューなぞ読んでもならないのだ。
作者は、アルネ・ダール名義でミステリーを、別名義で他ジャンルを書くという、著書多数の作家である。
であるけれども、翻訳されたのは、これがようやく2冊目だ。
1冊目は『靄の旋律』。
スウェーデンでは1999年、日本では2012年に出版されている。
「面白かった」という記憶は残っているが、あとはさっぱり覚えていない。
いやもうひとつ記憶があった。
「モヤと読むのか。カスミじゃなくて・・・・・・」
解説によれば、2021年にさらに翻訳が出るというので、
これを機会に次々と翻訳が進んでいくと、実に嬉しい。