- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094067170
作品紹介・あらすじ
気鋭の若手評論家の初小説!
南部照一は、孤独な自営業者だった。茨城県取手市在住。猫と車を愛する27歳の平坦な人生は、ネット上のとある出会いによって狂っていく。
ひょんなことから保守系言論人の勉強会に参加し、中堅警備会社「シュトケイ」の懸賞論文に応募するや、入選。一躍、保守論壇の新星に祭り上げられ、日本唯一の右派系テレビ局「よもぎチャンネル」レギュラー出演者への道が拓けていく。
順風満帆の照一だったが、彼が足を踏み入れたのは、野心と嫉妬が渦巻き、裏切りや出し抜きが横行する下劣な世界だった。論客同士のパイの奪い合いから、思いも寄らぬ襲撃事件が発生した――。
◎気鋭の若手論客、古谷経衡氏による初小説。単行本発売時、ネット右翼を騒然とさせた話題作が早くも文庫化! 解説に元外務省主任分析官・佐藤優氏。
<小説の体裁を取っているが、右派の論壇人としてデビューした古谷経衡氏にしか書けない優れた社会人類学的作品だ。21世紀の日本で、愛国心を道具にして、排外主義的ナショナリズムが生成していく過程が見事に描かれている。>――解説/作家・佐藤優氏
【編集担当からのおすすめ情報】
あらかじめ断っておきますが、ヘイト本ではありません。著者が身を置いた保守論壇の世界が冷笑的に描かれています。日本がうまくいかない理由のほぼ全てを既存のマスコミに求める陰謀論者・波多野謙、韓国には一度も行った経験がないのにネットの断片的な嫌韓情報をもとに「韓国経済崩壊」をしきりに説く土井賢治ほか、「ネット右翼」に崇められるカリスマ論客たちの残念すぎる生態が詳らかになります。
感想・レビュー・書評
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俯瞰すると何とバカバカしいと一笑に付してしまいそうだが、実はこのような「商売」は今やあちこちに溢れているのだなと背筋が寒くなる。シニカルな文体は大変面白かった。
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「出羽部隊」、「師団」、「内戦勃発」といった勇ましい軍事ワードや厳しい四字熟語がそこかしこに出てきて、愛国ビジネスの「内輪もめ」を滑稽に描く。実話に基づいているためか迫力があり、「あー、こんなトンデモ野郎いそういそう」といちいち頷きながら読んだ。
古谷さんの性癖(照)が伝わる箇所もあり大人の刺激に富んでいる。
文体に躍動感があり、飽きることなく読めた。面白かった。
ネトウヨに対してのかねてからの疑問も、古谷さんも感じていたのだとわかり(なぜ敵愾心が米国ではなく韓国や在日朝鮮人に?)ほんとそれな感!
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文庫化を機に初読。
タイトルは単行本時の『愛国奴』のほうがインパクトがあってよい気がするが、どこかからクレームでもついたのだろうか。
著者自らの経験を元に、右翼論壇の舞台裏を描くスラップスティック小説である。
昔の筒井康隆を彷彿とさせる黒い笑いが随所にあり、面白く読める。
文庫タイトルが示すとおり、「愛国ビジネス」のカラクリが微に入り細を穿って書かれており、その部分を読むだけで価格分の元が取れた気がする。
ヘイト本はそこそこ売れて儲かる――ということは知っていたが、右派ネットテレビ局や〝ネトウヨ向けサロンビジネス(私塾)〟のカネの流れがこんなふうになっていたとは……。
この著者にしか書けない、他に類を見ないネトウヨ・エンタメ小説。 -
自分の見たいものしか見ない。信じたいものしか信じない。アイデンティティも立派な商品になることが教えてくれた。
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19/11/19。