WIN (小学館文庫 コ 3-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094070699

作品紹介・あらすじ

極上のスピンオフにして最高のエンタメ小説 容姿端麗、頭脳明晰、抜群の戦闘力、加えて資産家の御曹司。大人気「マイロン・ボライター」シリーズの名キャラクター・冷血王子ウィンことウィンザー・ホーン・ロックウッド三世が40代となり、さらに魅力を増して帰ってきた!盗まれた名画と不可思議な殺人事件、迷宮入りした半世紀前の学生運動事件、幾重にも謎が重なった一族の過去。次から次へと立ち上がる謎に翻弄され、非情なのに憎めないウィンのキャラクターに惹き込まれ、気づくとページをめくる手が止まらない!アメリカが誇るエンターテイナーが贈る、極上のスピンオフにして最高のノンストップ・エンタメ小説!

感想・レビュー・書評

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  •  『カムバック・ヒーロー』を読んで間もなく『WIN』を読む幸せ。もちろん偶然。それも、なぜか神がかり的な偶然! 何と25年の時を経て刊行されたのは、スポーツ・エージェントのマイロン・ボライターを主人公にしたシリーズのスピンオフ作品。マイロン・シリーズに欠かせない相棒のウィンザーホーン・ロックウッド三世にしっかりと齢を重ねさせ現在形の主人公として起用あいなったのである。Wao!!

     ウィンはマイロンのシリーズでも相当魅力的な主人公であるばかりでなく、とても重要でインパクトのある仕事を果たす。知のマイロン。力のウィン。よくある私立探偵ハードボイルド・シリーズのコンビネーションを、そのままなぞったような、いわばアメリカン・スタンダード。

     どちらかと言えば無口な主人公であるウィンのなのに、なぜか本作は彼の一人称で語られる。減らず口の得意なマイロンですら与えられなかった叙述法。感情を示さない(感情が希薄と言った方が正解かな?)ウィンの一人称。これは、ある意味、謎めいた存在でもあるウィンの内面が改めて覗けるという点で、とても興味深いのだが、作者がこの手法を敢えて取ったこの作品。コーベン・ファン、さらにはウィン・ファンの関心を、強烈に惹きつけること請け合い。何せタイトルそのものまでが、”WIN”。

     あまり感情が動かない様子、プラス、ウィンの生きる方程式のようなものは、随所で本人によって語られるから、ウィン・ファンの読者には相当そそられる作品になるだろう。無論、ぼくもその一人。

     さて事件そのものは、けっこう時間枠でも空間枠でも大スケールなもの。1970年代に世界を騒がせながら、誰一人としてその後の行方がわかっていないテロ・グループ6人組のジェーン・ストリート・シックス。テロ行為の結果である某バス襲撃事件では、かつて多くの被害者が出ている。世界中が彼らを探し回ったのに、その後の行方は、一人として杳として知られぬまま。

     本作では、まず謎の「貯蔵家」の遺体が、発見される。事件現場では、ロックウッド家から失われた二枚の名画のうち一枚が発見される。フェルメール『ピアノを弾く少女』。もう一枚ピカの名画は『本を読む人』は何処?

     ウィルの父、亡き叔父など、ロックウッド財閥を巻き込むために、ウィルの家族、過去の謎めいた事件などが、この作品では改めて明らかになってゆく。中でも、森の中の小屋で監禁放置状態で汚物まみれになりながらも脱出を果たした従妹パトリシア・ロックウッドの存在は、最近のコーベン作品によく似た独特の奇妙さを有して不気味だ。この森の少女連続監禁事件では、パトリシアの脱出とともに他にも多くの少女が遺体で発見された。パトリシアは唯一の生き証人であった。しかし、それも22年前の未解決事件である。

     現在のフェルメール殺人事件が、過去の未解決事件とどうやって繋がってゆくのか。ウィンの捜査や冒険により、様々なもつれが徐々に解かれてゆく。その真実たるや、なかなかに重厚で複雑な人間絵模様とも言える。ウィンの視点で、彼自身の運命をも象ってゆく真実を、どちらかと言えば淡々とユーモアすら交えつつ(本人が意図しているかどうかはともかく)描かれ、読まされてしまうのはいつもながらのコーベン節。ウィンの性格をよく活用しているとも言える作品である。

     一ヶ月ほど前に読んだばかりの『カムバック・ヒーロー』ではラストシーンがウィンの行動で終わるのだが、これについては本作p494でウィン自身が振り返っているので、いわゆるネタバレ。なので未読の方は『カムバック・ヒーロー』を先に読んで頂いてから本書にかかるのはどうだろう。それ以外のマイロン・シリーズのどれか一冊でもよいのでそれを読んで頂いてからでもよいと思う。これを単体で読むよりもずっと深く、楽しく、ウィンの現在の物語を重層構造的に読むことができる。

     何であればウィンの個性を、この作品の後にマイロンのシリーズで追尾してみては? 楽しみは単なる二倍はなく、十倍にも二十倍に、いや百倍にも膨らむはずである。

  • 初めてAmazonで見つけた時は本当にびっくりした。まさかあのウィンなの?そして手元に届いてからは勿体なさすぎてしばらく読めず。読み始めても少しずつ堪能する感じでページを行きつ戻りつしながら読んだ。
    実は私はマイロン派。でもウィンとマイロンの深い友情は分かっていたし、ウィンの脆さも分かっていたから、ところどころにマイロンのことを思うウィンの気持ちが出てきて切なく思ったり。ジェシカまで出てくるのにエスペランサはどうしたのかなって思ったり。
    やっぱりマイロンシリーズを全部読みたいなー。英語が読めたらいいのにな。

  • 容姿端麗、頭脳明晰、抜群の戦闘力、加えて資産家の御曹司。大人気「マイロン・ボライター」シリーズの名キャラクター・冷血王子ウィンことウィンザー・ホーン・ロックウッド三世が40代となり、さらに魅力を増して帰ってきた!盗まれた名画と不可思議な殺人事件、迷宮入りした半世紀前の学生運動事件、幾重にも謎が重なった一族の過去。次から次へと立ち上がる謎に翻弄され、非情なのに憎めないウィンのキャラクターに惹き込まれ、気づくとページをめくる手が止まらない!アメリカが誇るエンターテイナーが贈る、極上のスピンオフにして最高のノンストップ・エンタメ小説!

    本家のシリーズは確か最初だけしか読んでいない。ハーラン・コーベンは今作も上手い!とにかく読ませます。
    巻末の作品リストをながめると、未訳がたくさん。今後も小学館文庫さんには頑張っていただきたい。

  • 水準以上やけど、もっと求めてしまうんはワガママかなー。

  • 初のハーラン・コーベン。
    90年代に出版されたマイロン・ボライターシリーズのスピンオフで、ワトソン役のウィンザー・ホーン・ロックウッド3世が主役。
    本シリーズの方は流石に絶版状態で手に入らず。著者のことも寡聞にして今回初めて知りました。

    スピンオフ作品ということで付いていけるか不安だったが、そんな心配は全くなく、冒頭から主役のウィンに惚れ込んでしまう。
    いや、容姿端麗、超がつくほど大金持ち、冷血王子と言われていたほどのクールさ。それでいて狼のような獰猛さも垣間見える。こんなん惚れるやろ。
    作者と訳者の方の力か、ウィンの匂い立つような色気が読んでいても感じられた。

    富裕層用のビルで死体が発見されるところから始まり、フェルメールの絵の盗難事件、学生運動家が引き起こした事故、“恐怖の小屋”と呼ばれた暴行事件など、時代を跨いだ事件が複雑に絡み合うことになる。
    若干後出しジャンケンなところはあれど、意外な事実がこれでもかというテンポで提示され、登場人物のキャラ立ちもあってあっという間に読み終えた。

    個人的には、おすすめの一冊。続編も期待しつつ、そもそものマイロンシリーズの復刊もお願いしたい。

  • マイロン・ボライターシリーズの大ファンで、続編が翻訳されなくなって永らく寂しい思いをしていたところ、この本の存在を知りました。ウィン、ハイスペックで冷血で、暴力を愛する男。最高です。歳を重ねてほんの少し丸くなったか。ストーリーも申し分なく面白かったです。

  • 人生は悪くない ビールも悪くない
    いつも正しく行動する、それでも望み通りになるとは限らない
    人間関係は決してフィフティフィフティにならない、それを受け入れ構わないと思え

  • G2023.4.6-2023.4.11
    いつの間にか邦訳がなくなってしまったマイロン•ボライターシリーズのスピンオフ。主人公ウィン。
    今になってウィンに会えただけでもう感謝なんだけど、ミステリとしても面白かった。
    この事件は結局ウィンの事件だったということ。複雑に絡み合ったいくつかの事件。全てはロックウッド一族に行き着く。白でも黒でもない、ウィンのグレーな決断がまた好きだ。

  • 人間関係の設定とストーリー設定が非常に素晴らしい作品。貴族階級の主人公のパワーを生かしたやり取りは爽快。

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