シークレット・レース (小学館文庫 ハ 11-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (551ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088014

感想・レビュー・書評

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  • ツールドフランス7冠の大英雄ランス・アームストロングをアシストしていた元チームメートのハミルトン・タイラーによる告白本である。自転車業界トップ選手の間に蔓延していたドーピング。これをチームぐるみで奨励・命令していた監督・チームドクター。かかる闇を知ってて知らぬふりをしていた業界団体・スポンサー。闇医師らのスパイ小説もかくやと思わせる暗躍。そして何よりも、英雄ランスの自分には向かう者は消していく桁はずれの欲望の大きさと権力の恐ろしさ。
    近藤文恵の「サクリファイス」等でドーピングで自殺した選手等が出てくるが、「事実は小説より奇なり」×10倍であることがわかるし、実情は想像の遙か上をいっており、頁をめくる手がとまらない。
    ランスの勇姿ををリアルタイムで見ていた者にとって、「ただマイヨジョーヌのためでなく」を読んでいた者にとっては、衝撃の一冊であろう。もちろん、自分のような全くの自転車競技素人にとっても、大きな渦に否が応でもなく巻き込まれた一選手の率直な真情を記した青春期・告白録として、十二分に面白くそして重い一冊である。

  • タイラー・ハミルトンというロードレーサーの半生を通してスポーツとドーピングについて考えさせられると同時に、ランス・アームストロングという存在までが浮き上がってくるノンフィクション。
    ランスの悪役ぶりは見事なほど。
    そんなランスをタイラーは理解しようと努めているようにも見え、タイラーのランスへの視点によってこの長い告白が切なくかすかな希望を残して終われているように感じた。
    全編を通じていくつかの「真実」がすれ違う。「真実」は振りかざすものではなく、人が心を安らかにして幸せに生きるためのものだと思わされた。

    <ニースの丘でふたりきりで走ったあの頃。ランスが死力を尽くし、僕がそれに応える。これはどうだ?ついていけるとも。これならどうだ?平気さ。346P>

    このシーンは何度か繰り返される。
    タイラーが実際に繰り返したのか、D・コイルが効果的だと踏んで使ったのか。
    いずれにせよタイラーのランスへの思いを綴った美しい一シーンだと思う。

  • 人気漫画弱虫ペダルを読み、自転車競技自体に興味が出てきたので読んでみた。オリンピック開催年だったこともありドーピング問題が大きく取り上げられていた。選手視点の文章なので興味深く読むことができた。

  • 20160303(2回目)
    タイラーハミルトンの言葉をもとに作られた本。サイクルロードレース、特にツールドフランスのように長いレースにおいて薬物の使用が効果的だったこと、使わないと勝つことも、ついていくこともできない環境だったこと。あらゆる手段で薬物を入手、または自己輸血をし、レースのために危険を冒していた。
    その世界で生きるには欠かせないことであり、当たり前のことでも、外から見れば異常。
    ランスアームストロングは最後ツールのタイトルを全て剥奪されている。
    言葉が単調だけど、嘘を重ねることは自分の心身に良くない。正直に生きよう。

  • 本書は、プロロードレーサーの宿命を実感せざるを得ない。

    自転車はダイエットにいいし、お尻も引き締まるし、健康に良い乗り物。そう、我々のようなアマチュア素人にとっては。

    でも彼(タイラー・ハミルトン)は言う。プロロードレーサーがどんなものかを。

    本書では、こんな話を紹介している。

    「自転車レーサーがどんなものであるかを知りたければ、下着になって時速65キロで車を走らせ、車のドアから身を投げ出して、金属の固まりの中に飛び込んでみたらいい」

    ちょっと分かりにくい表現だ(訳の問題か)。でもこういうことだ。

    彼等は、平坦な道であっても、ゴールに近くなれば、時速60キロ以上で走る。単独で走るのではない。集団で走るのだ。ちょっとハンドリングをミスれば、いや、集団で走っているうちの誰かが1人でもミスをすれば、それはたちまち「落車」に巻き込まれることになる。

    時速65キロで、レーサージャージなんて、殆ど来ていないと同然の代物。裸同然で、アスファルトの固まりに身体を打ち付けることになる。

    当然選手は、骨折とは無縁ではなくなる。擦過傷なんて当たり前だ。

    著者のハミルトンは、肘・方・鎖骨(2回)・背中腰(複数回)・助骨・手首・尾骨、に骨折経験がある。

    実に危険なスポーツだ。

    下り坂を飛ばせば、100キロ以上になる。実際ツールでもピレネー山脈の下りで死者も出ている。

    こんな過酷なスポーツをしている彼等が、EPOを注射することによって赤血球を増やすことで絶大なる持久力を獲得できる。EPO注入による身体への僅かなリスクなんて、(大きなリスクを背負って)下りを飛ばして数秒時間を稼ぐことに比べれば、全く大したことない。

    これは正直なプロロードレーサーの気持ちだと思う。そもそも死を覚悟するほどの危険を犯して勝負の世界に住んでいる彼等にとって、ドーピングのリスクは、大したことじゃない。

    だから、それが当たり前のようになる。だから、ドーピングを根絶するのは、本当に困難なことだ。。

    そしてレース中は、騙し騙され、時には紳士にもならなければならない。

    そんなプロロードレーサーの生き様は、善悪入り交じった人間の究極の姿をさらけ出す。

    だから、こんなに人気があるのだと思う。実に人間臭いスポーツなのだ。

    そして私も観戦し続けるだろう。これからも。

  • 人生最高の一冊

  • 面白い。

  • ・自転車ロードレースのドーピングについて。ハードなトレーニングは当然で、勝敗を分けるのはいかに上手にドーピングしたかという時代。
    ・必死に練習して、才能もあって、そんな若い男の子がようやく憧れのツール・ド・フランス出場に手が届くところまでたどり着いたが、その先に進むにはドーピングするしかなかった。
    ・クリーンなままではプロの競技者としての名声を得られない、食べていけない、そんなスポーツが多過ぎ。

    [memo]
    ・EPO、コルチゾン、テストステロン(錠剤、パッチ)、アナボリック・ステロイド、HGH(ヒト成長ホルモン)、血液ドーピング、人工ヘモグロビン、アクトベジン、ミニリン(点鼻薬、夜尿症向けの抗利尿剤)、インシュリン、CERA(新種のEPO)、アラネスプAranesp
    ・ヘマトクリット値、マイクロドーシング(p252)、グロータイム、TUE(治療目的使用に係わる除外措置)
    ・ワット数、ケイデンス、パワーウエイトレシオ(動力体重比 p191)、乳酸閾値

  • ドーピングに手を出してしまうロードレーサーの気持ちがこの本で分かる。
    もちろんドーピングは悪だけどドーパーが絶対悪とは言い切れない。

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タイラー・ハミルトンの作品

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